梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

水月博多座稽古場便り・1

2010年05月29日 | 芝居
大変充実した休暇とオサラバして、今日から博多座<六月大歌舞伎>のお稽古です。

新橋演舞場や大阪松竹座、名古屋御園座の5月公演が、そろって昨28日千穐楽。そして6月の初日は2日ということで、どうしても稽古日数が少なくなります。ぎっしり詰まった、濃い稽古となりました。
今日関係しましたのは、『紅葉狩』『小野道風青柳硯』『毛剃』『鬼平犯科帳 大川の隠居』の<附立>です。

『紅葉狩』には初めて出させて頂きますが、セリフもあり、振り事もあり、私にとりましては畏れ多いお役です。勉強の機会を与えて下さった方々には、本当に感謝申し上げます。一度段取り合わせをしてからのお稽古でしたが、かなり緊張しました。シンの方とやりとりする部分もございますから、じゅうじゅう気をつけて、行儀よく、品よく、そしていつも申すことながら、“作らず”にそのお役になれるよう、精進いたします。

『大川の隠居』は、前回の<長谷川家の女中>から<嶋やの女中>と変わりまして、こちらは長谷川平蔵をお出迎えしたりお膳を運んだりお酌したりといろいろ用事がございまして、まずは手際を気をつけます。そしてもちろん、雰囲気も。…前回とは脚本もやや変わる部分があり、この作品が歌舞伎として練り上げられてゆく過程に立ち会っているというのが嬉しゅうございます。

『毛剃』は、前回もそうでしたが、仲居の段取りにこれといった定型はないようで、いろんな先輩方のお話を伺いましても、皆様ちょっとずつ違う箇所がございます。今回は仲居の数が少し減りましたし、当然舞台の間口も変わります。もとよりシンが変われば演出,段取りが変わるのは歌舞伎の常ですので、、臨機応変、柔軟に対応してまいります。

最後になりましたが『青柳硯』。前回と変わる部分がございますが、これはご覧頂いてからのお楽しみ。蛙の仕掛けも、明日の<道具調べ>できちんと決めたいと思っております。

明日はいよいよ博多に乗り込みます。恒例<船乗り込み>も賑々しく開催されますので、博多の皆様、どうぞお出まし下さいまして、<六月大歌舞伎>を盛り上げて下さいませ!


           ◎

勝手ながら、昨日よりコメントの投稿受付を一時停止させて頂いております。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承下さいませ。


フォト蔵の画像について

2010年05月28日 | 芝居
私が撮影した写真をご覧頂いております、ネットアルバムサイト『フォト蔵』で、本番上演中ではない歌舞伎座の舞台裏や、楽屋まわりなどの写真を中心としたコーナーを設けておりましたが、<歌舞伎座さよなら公演>を機に、これまで以上に、建物としての<歌舞伎座>に大勢のご注目が集まるなか、私が撮影した画像が、ともすれば<見て楽しむ>以外の目的に転用されたり、一点一点解説文を付けていたわけでもありませんでしたので、被写体に対しての誤解が生まれるおそれもあるので、掲載には十分注意した方がよいとのアドバイス、ご指摘を頂きました。私といたしましても、関係各位にご迷惑がかかるような事態が起きては取り返しがつきませんので、当方の判断で、そのコーナーの公開を控えさせて頂くことにいたしました。
同様の理由で、当ブログに掲載していた画像も、一部差し控えさせて頂きました。

本来ならば皆様に上記理由をご説明してから公開をとめるべきところ、順番が逆になってしまったので、驚かれた方もいらっしゃるかと存じます。これは全く私の手際の悪さでございまして、深くお詫びする次第でございます。
楽しみにされていた皆様には、心より陳謝申し上げます。このような結果になりましたが、歌舞伎座を愛する気持ちは変わりません。なにとぞご了承下さいませ。




これからの本拠地

2010年05月25日 | 芝居
新橋演舞場<五月花形歌舞伎>の昼の部を拝見させて頂きました。
『寺子屋』『吉野山』『魚屋宗五郎』『お祭り』。『寺子屋』では、成田屋(海老蔵)さんの松王丸が市川家の“刀抜き”の首実検の型をなさっていらっしゃり、はじめて正面から拝見することができました。(この前は成田屋(團十郎)さんで「古典芸能鑑賞会」での上演、私は源蔵の後見でしたので…)『魚屋宗五郎』では、尾上辰巳さんが鳶の吉五郎、尾上みどりさんが菊茶屋の娘おしげでご出演で、本興行での活躍が嬉しいですね~

夜の部の『熊谷陣屋』『浮かれ坊主』『助六由縁江戸桜』もそうですが、「お芝居観たなァ」という気分にどっぷり浸れる狂言立て。興行も残りわずかとなりましたが、まだの方は是非是非!

…今さらながら、演舞場正面に上がった<櫓>を撮影。
ご承知の通り、かつて<櫓>は官許の劇場の証し。<大芝居>のステイタスシンボルです。
江戸時代では、いわゆる“三座”で常に設置されていたそうですが、現代の歌舞伎座では、11月の顔見世興行や、その他特別な興行のおりに、古式にのっとり掲げることになっておりました。
演舞場に櫓があがるのは初めてと伺っておりますが、歌舞伎興行の拠点が、『歌舞伎座から演舞場へ』移ったことを高らかに宣言するかのような、堂々たる雰囲気です。演舞場の座紋の「雪月花」も鮮やかに染め抜かれていますね。

七月興行の発表も先日ございましたし、8月以降も歌舞伎公演がたびたび行われるそうです。我々にとっても、これまで以上にお世話になると思いますが、皆様におかれましても、どうぞ「演舞場の歌舞伎」をよろしくお願い申し上げます!!


博多座に参ります

2010年05月23日 | 芝居
6月博多座公演の準備をはじめる時期となりました。
2年ぶりの博多です。美味しい食べ物とお酒の誘惑とたたかうひと月となることでしょう。

私は、『紅葉狩』の<侍女>・『鬼平犯科帳 大川の隠居』「大詰 船宿嶋やの場」の<嶋や女中>・『毛剃』の<奥田屋仲居>の3役を勤めさせて頂きます。
『紅葉狩』に出させて頂けますことが、大変有難くもあり緊張でもあり…。先輩方によく教わって勤めさせて頂きます。
『大川の隠居』は、御園座の上演では<長谷川家の女中>でしたが、きっと転職したのでしょう。『毛剃』の奥田屋女中は、昨年5月以来で、こちらは首がつながっているみたいです。

師匠は『小野道風青柳硯』の<小野道風>・『増補双級巴』の<此下東吉久吉>・『大川の隠居』の<佐嶋忠介>の3役をお勤めになります。
『青柳硯』は、蛙の仕掛けに苦心した思い出深い狂言です。再演されて本当に嬉しいです。舞台機構、寸法も歌舞伎座とは変わりますから、前回の方法、段取りを活かしながらも、臨機応変に取り組んでまいります。

ちょっと忙しいひと月となるかもしれませんが、『合同公演』情報も含め、できる限りお芝居ばなしをお伝えしてまいりますので、来月もどうぞよろしくお付き合い下さいますようお願い申し上げます。

第7回『一心會』のお知らせ

2010年05月22日 | 芝居
宗家藤間流 藤間勘十郎師、田中流囃子 田中傅次郎師のお二人による主催公演、『第7回 一心會』が開催されます。本年は浅草公会堂での公演です!

第7回 一心會


      御 挨 拶   藤間 勘十郎
              田中 傅次郎

清 元   四季三葉草   藤間 勘十郎
              市川 男 寅
              大谷 廣 松
          
長 唄   藤   娘   坂東 新 悟

清 元   玉   兎   坂東 やゑ亮

長 唄   白 酒 売   中村 京三郎

常磐津   屋 敷 娘   中村 京 由

長 唄   相 生 獅 子    藤間 勘舞紗次
              藤間 勘好次
 
常磐津   三 人 形   中村 蝶三郎
              中村 京 純
              中村 京 珠

清 元   子   守   中村 梅 丸

長 唄   鷺   娘   中村 壱太郎

清 元   山   姥   藤間 勘十郎
              中村 玉太郎
              坂東 亀三郎

長 唄   七 福 神   大谷 廣太郎

地 唄   茶 音 頭   藤間 恵 理

清 元   文 売 り   藤間 勘奈凰

常磐津   粟   餅   中村 蝶之介
              中村 吉二郎

長 唄   娘 七 種   中村 種之助
              中村 米 吉
              中村 隼 人

清 元   北   州   藤間 咲 良

長 唄   近江のお兼   藤間 勘洋舞

常磐津   末 廣 狩   澤村 國 矢
              市川 左字郎

長 唄   越 後 獅 子    坂東 亀 寿

清 元   浮かれ坊主   坂東 亀三郎

常磐津   奴 道 成 寺    中村 種太郎
長唄  

(敬称略)

於 浅草公会堂

平成22年7月30日(金)
午前10時55分 開演 (10時30分 開場)

入場料 4,000円(全席自由)

お問い合わせ
(株)藤間オフィス 渋谷区神山町5-15-101  TEL 03(5790)1870



私は前回『操り三番叟』を勉強させて頂きました。
今回は巡業中のため参加できませんが、部屋子の梅丸が『子守』を勉強させて頂きますし、同期、後輩も多数出演いたしますので、何卒ご声援をよろしくお願い申し上げます!

今月は地元紹介月間でもありまして

2010年05月21日 | 芝居
旅行もすんで、たいていは自宅で過ごしておりますから、せっかくなので地元を探索してみようと、あちこち歩き回っております。
同じマンションに住む長唄三味線方さんも、ときおりお付き合い下さいます。あちらはけっこう前から地元グルメや穴場居酒屋、すてきなお店を足で見つけていらっしゃるので、豊富な情報には大変助けられております。

今日も二人して町内会の用が夕方にあり、思ったより早くすんだのでそのまま町内散歩に。
新しく日本酒バーが出来たということで視察(?)。『酒庵 酔香』というこのお店、ちょうど今日がオープンということで大変な盛況、お邪魔することはできませんでしたが、もともと酒屋さんだった建物を活かした、カウンターメインの落ち着いた雰囲気。軒端の杉玉がいい味です。
ワインバーなら、やはり町内の『遠藤利三郎商店』が大繁盛(先日、お店の方が当ブログへメッセージを下さいました。今度御礼に行かなくちゃ!)。続く日本酒バーもどうか大勢の方に愛されますように…というか自分が常連になればよいわけだ。

腰を落ち着けたのは「いろりの店 さかな道楽」と角書きがついた『相馬』さんです。
カウンターと、囲炉裏を切った4人掛けのテーブルが2つございます。
明るく気さくな女将さんが切り盛りしてらっしゃいまして、頼めばテーブルの囲炉裏で炭を熾し、炉端焼きが楽しめます。
さすがに魚が新鮮で、エイヒレのフライもプリプリ、つくったばかりというあん肝も冷酒がクイクイ進みます。
炙りは鰻(生からで、塩で頂きました)が結構でした。

変わらざるをえないこの町のこと、それぞれの仕事のこと、いろいろお話ししているうちにほろ酔い。
おもての風も気持ちよい金曜の夜。
幸せなひとときでした。

『相馬』さんへは、タワー工事関係者もいらしゃるそうです。面白い話が、これからいろいろ聞けそうです。

休暇もあと1週間

2010年05月20日 | 芝居
勉強会の準備も着々と進んでおります。
もうすぐ本チラシもできるとのことで、今回はこれまでとは趣きがだいぶ変わるそうなので楽しみです。
出演者一同、チラシやポスターを置いて下さるお店や場所を探しています。前売り開始まで2週間余、少しでも多くの皆様にこの会を知って頂きたく存じますので、ご喧伝をなにとぞよろしくお願い申し上げます。

『八段目』はすでに振り渡しはすんだそうです。これから時間をかけて仕上げとなりますが、いつもながら、5~7月に東京を離れる出演者が多いことを考えて、早いうちからお稽古して下さる藤間の御宗家のお心遣いにはただただ感謝しかございません。
『五・六段目』は、6月に入ってからの始動となると思います。私、今月中にセリフを覚え切ることが目下の課題。
動き、段取りについては、ご指導下さる方々のおっしゃる通りにするのが勉強会でございますので、過去の映像資料は拝見しても、それに縛られないように!
頭でなく、体で、気持ちでそのお役になることができますように…。

今日はあいにくの空模様でしたね。
東京スカイツリーも、こういう日は頭が雲の中。それも凄いことだ。
先日も申しましたが、今わが町の飲食店では、ご当地メニュー<タワー◯◯>が大流行り。四ツ目通り沿いのパン屋さん<業平 キムラヤ>では、<タワーデニッシュ>が250円で販売中です。



先端のアンテナ部分はプリッツ、中身はカスタードとチョコの2種類がございます。
<おしなり君パン>もございますが、昔からたくさんの種類が揃う、町のパン屋さん。
タワー見物のお供に是非!

『合同公演』配役の訂正

2010年05月17日 | 芝居
当ブログ14日付の記事で発表しました『第16回 稚魚の会・歌舞伎会 合同公演』配役におきまして、私のミスで誤った掲載をしてしまいましたので、以下に訂正させていただきます。(14日付の記事本文も訂正済みです)

『八段目』B班
奴可内
× 松本錦二郎
○ 中村東志二郎
ご覧頂いた皆様、関係各位へ心よりお詫び申上げます。

フリマのあとで

2010年05月16日 | 芝居
日頃親しくさせて頂いております、鹿島良太さんが所属されている劇団『偉人舞台』の第22回目の公演『BUS JACK SHOW』を、フリーマーケット(昨日の記事)を終えてから観てきました。

2003年初演の作品の再演ということで、思えばこちらの劇団とのご縁も10年近くなるのだと思いますと、本当に月日の経つのは…です。

…雪に閉ざされた山あいの温泉町で突如発生したバスジャック事件。外部の応援も届かないなか、地元警察は人質救出のための“模擬訓練所”を作って、突入のシュミレーションを始めます。
若手刑事の“十姉妹”は、説得工作による穏便な解決を望みますが、たまたまこの温泉町に休暇で来ていたため作戦に協力することになったという7人の機動隊員は、なぜか強行突入ありきの言動ばかり。しだいに関係は悪化してゆきますが、どうもウラにはなにかあるようで…?

個性豊かなキャラクターがまきおこすスリリングで愉快な2時間でした。

前回の台本を全編書き直しての上演でしたので、話の大筋を知っている身でも、新鮮な気持ちで拝見できました。前回よりも個々のお役のキャラクターが際立っていたようにも思え、変わり者だらけで繰り広げられるドタバタがなんともおかしく、楽しませて頂きました。

皆様も是非…と申し上げたいのですが、本日16日が千穐楽でございまして、次回作品にご期待下さいませ!

               ◯

本日は、師匠の後援会の集まりがございます。
気がつけば5月も半ば。まだまだやりたいことが山積みですが…。

二十束三文くらいでしたね、当店は

2010年05月15日 | 芝居
「今月やりたいこと」のひとつ、フリーマーケットに参加してきました。
午前10時から午後3時まで、世田谷公園内の会場でした。

フリマに参加するのは2度目ですが、自分で申し込むのは初めて。値札付けやブース設営も、当然ながら初体験…。
後輩も誘って、2組で並んでの出店としましたが、開店前から大勢のお客様が“物色”にいらっしゃるその勢いたるや!
皆様、フリマの達人なんでしょうなァ…。

ノーと言えない梅之ですので、値切られたらその通り、いやむしろ、早く売り切りたいので自分から値下げ断行してしまうという有様。とても商売には向きません。
いやいや、最初から利益を得ようだなんて思っちゃァいません。品物をはさんで、いろんな人と交流するのが楽しいだけなんですよ、ホント。
呼び込みを頑張ったので、お陰様で早々に売り捌くことができました! かなり面白かったです!!

第16回 『稚魚の会・歌舞伎会 合同公演』のお知らせ

2010年05月14日 | 芝居
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
仮名手本忠臣蔵


尾上 菊五郎=監修・指導

中村 東 蔵=監修・指導
市川 団 蔵=監修・指導

五段目 山崎街道 鉄砲渡しの場
    同     二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場


           A班      B班
早野  勘平    尾上 辰 巳  市川 左字郎
女房  お軽    中村 京 珠  坂東 玉 朗
母  おかや    中村 梅 之  中村 蝶 紫
一文字屋お才    尾上 みどり  澤村 伊 助
判人  源六    中村 吉 六  坂東 翔 次
斧  定九郎    松本 錦二郎  中村 東志二郎
千崎 弥五郎    中村 吉二郎  澤村 國 矢
不破数右衛門    中村 蝶八郎  中村 蝶一郎


藤間 勘 祖=振付

八段目 道 行 旅 路 の 嫁 入

           A班      B班
本蔵妻戸無瀬    市川 喜 昇  中村 春之助
娘   小浪    中村 京 由  中村 春 希
奴   可内    中村 吉二郎  中村 東志二郎


※内容に一部変更の場合もございます。予めご了承下さい。


8月20日(金)~23日(月)

20日(金) 11時半  5時 
21日(土) 11時半  5時 
22日(日) 11時半  5時 
23日(月) 11時半  5時  



観劇料 一般3,500円/学生2,450円

電話予約 6月11日(金)
窓口販売 6月12日(土)
国立劇場 小劇場(←クリックしてジャンプできます)
チケットセンター 0570(07)9900 <10時~5時>


協賛 松  竹  株  式  会 社
   社団法人伝統歌舞伎保存会


本年も、『合同公演』のご案内をさせて頂く季節となりました。
『五・六段目』は音羽屋(菊五郎)さん、加賀屋(東蔵)さん、三河屋(団蔵)さん、そして『八段目』は藤間の御宗家にご指導賜ることとなりました。誠に有難く思っております。

今回も、より若手を中心とした出演者となりましたが、総勢20名というのはこれまでとくらべてかなり少数ですが、皆で手を携えて、実りある勉強会となるよう、精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。


ながらくご無沙汰しておりました

2010年05月13日 | 芝居
9日から12日まで、沖縄旅行に行っておりました。
家内も運良く連休を頂けましたので、結婚5年目にしてやっと“新婚旅行”ができました。

いや~、いろんなモノ、コト、ヒトに出会うことができました!
梅雨入りしている沖縄ですが、なんとか天気ももちまして、悔いなく予定を消化できました。

おって旅日誌をまとめたいと思っております。
お暇でしたら御覧下さいませ。

沖縄旅日誌3

2010年05月11日 | 芝居
9日から13日までの、石垣・沖縄本島旅行の記録です。 (5月28日 記)

11日 曇りのち晴れ 『そう遠くない過去を訪ねて』


盛りだくさんの石垣島とは今日でお別れ。最後に訪れたのが、川平湾です。
実は、石垣に着いてすぐ乗ったタクシーの運転手さんから、『石垣に来たら絶対川平に行かなきゃ!』と、かなり強く勧められまして、そこまでおっしゃるならばと、当初予定に入れてなかった入江見物を、ホテルを早めにチェックアウトして出かけることにいたしました。
午前9時頃、川平湾着。まだ観光客は誰もいず、静かに波の音が聞こえる入江は、曇り空の下でもとても綺麗な碧色で、おもわず溜息が出ました。
白砂の浜辺に腰を下ろし、しばしボーッと。



景色の独り占めも長くは続かないもので、しばらくすると団体客がやってきまして、急に賑やかになりました。
皆さんはグラスボートでの海底見学がお目当て、私たちも一緒に乗ってみました。
スキューバとはまた違った海中の見え方。船員さんがそこにいる魚の説明をしてくれるのが便利ですね。最後の方で、ウミヘビを発見! なかなか敏捷な動きをするのですな。
…綺麗なことはもちろんなんですが、一方で死んだ珊瑚の死骸も散見され、ちょっと心配にはなりました。



お土産屋で作ってくれるパインとマンゴーのフレッシュジュースがまたおいしいこと! 前夜の泡盛で疲れた体に効きましたね~

           ◎

これにて、石垣島とはお別れ。
お昼の飛行機で那覇空港へ。こちらは見事なまでの青空! そして強い日差し、照りつける暑さ!

私が沖縄本島に到着して、まず訪ねたかったところ。それが「平和祈念公園」(沖縄県平和祈念資料館)と「ひめゆりの塔」(ひめゆり平和祈念資料館)でした。
ただいまも、基地問題で揺れる沖縄ですが、我が国唯一の地上戦の舞台となってしまったことは知識としては理解していても、その実態がどんなものだったのか、60余年前この土地に生きていた人々はどんな苦しみを受けたのかを、どうしても知りたかったのです。
平和祈念公園内、資料館の前庭は、南に大海原を臨む断崖になっております。おりからの好天。空の青、波の蒼、その美しさ、雄大さ、息をのむ壮観でございましたが、この眺めすら、かつてここが、逃げ場を失った住民たちの投身自決のまさにその現場であったことを知ってからでは、手放しで誉め讃えることはできませんでした。
あまりにも美し過ぎる景色は、ここで起こった出来事の悲惨さを思うにつけ、美しい故にかえって悲しかった。時は流れ、この地を訪れる人々は変わるけれど、この海、この空はずっと続いている。この景色そのものが、過去の悲劇を無言で伝えているように思いました。



両資料館を巡り、写真で、文字で、遺品で語られる、戦争がこの地に与えたたとえようのない苦しみと哀しみと悔しさとを体で受け止めながら、この地で命を落とした数多の方々に、今生きている者として、かつてここで起きたことを<忘れない>ことを誓いました。そして、忘れないために上の写真を撮りました。

空港から両資料館、そして宿泊地である県北部今泊(いまどまり)まで、全ての行程につきあってくださったタクシーの方は、昭和17年久米島生まれの方で、23歳から那覇で運転手をなさってらっしゃるそうです。当然ながら、終戦、占領、本土復帰、そして現在までの沖縄を全てご存知というわけですから、道中様々なお話を伺わせていただきました。これもご縁ということでしょうか。占領下でのエピソードなど、聞き書きが1冊できそうでした。

…本当に、私は知らないことが多すぎました。
反省とともに、「これからどう過去を理解するか」を真剣に模索してゆく必要を感じました。
やっぱり、まずこの地を訪れて良かったです。


沖縄旅日誌2

2010年05月10日 | 芝居
9日から13日までの、石垣・沖縄本島旅行の記録です。(5月20日 記)

10日 曇り一時小雨 『アトラクションアイランド西表』

昨日は微笑んでくれた神様も、さすがに表情筋が疲れたのか、朝からどんよりとした空模様。
どうか降らないでくれと願いながら、午前8時半過ぎに石垣港から高速船に乗って目指すは西表島。「西表観光センター」のツアーに参加し、半日かけて島を満喫することにいたしました。
この高速船、約40キロ離れた西表北部の上原港まで、50分で着くのですが、マァその揺れ方たるや! おりからの強風もあって波もかなり高く、船窓に激しく波しぶきが叩き付けられ、エンジンの轟音とともに右へ左へ上下へ、うねるように波間を進む船内の感覚は、ビックサンダーマウンテンとスプラッシュマウンテンを合わせて煮詰めたようなもの。それが50分続くのですからね…。最初は笑っていた私も、終盤はかなりやられました。
聞けば、我々が上原港に到着したあと、この航路は状況不良のため終日欠航となったとか!

上原港からは貸し切りバスで、島の北西にある浦内川へ。入江から川上の船着き場までの8キロを遊覧船で上ります。
沖縄県内最長というこの川は、川幅も広く水量も豊富。広大な入江の両岸にはマングローブ林がひろがり、まさに“亜熱帯”の景色。
「この前、この川をイリオモテヤマネコが泳いで渡る姿が目撃されました。今日ももしかしたら会えるかもしれませんよ」なんて地元の船員さんがおっしゃってましたが、そういうことがあっても不思議ではない雰囲気。複雑なラインを描くマングローブの気根、大シダは茂り、アダンは実る。



スゴいところへ来てしまった! そんな思いを抱くうち、はや船着き場へ。今度は<マリユドゥの滝>を目指すトレッキングです。
森の中へ入りますと、空気の違いに驚きます。曇天だからということもあるのでしょうが、たっぷりの湿り気と土の匂い緑の匂いを含んだ“濃い味”。
深呼吸をするほどに、体が綺麗になってゆくような“気がする”のでした。
数日前の雨のせいで、道は最悪(粘土質の地盤なので、かなりドロドロ)でしたが、30分ほどで目的地へ。



この滝は<日本の滝100選>にも選ばれております。「マリユドゥ」というのは、「丸い淀み」という意味だそうで。


ここから30分ほど先には、<カンビレーの滝>もあるのですが、「天候、足場が悪いので、今日はおすすめできない」と先の船員さんはおっしゃる。しかし、せっかくはるばる来たのだから頑張ってみようじゃないかと、ツアーの3分の1くらいが、さらに奥へと進みました。なるほど、道はもっと悪くなり、木の根岩角水たまり、ときに滑り、あるいは躓き、気温が低かったからよかったようなもので、これが晴天でしたら暑さも加わって散々な道中だったでしょうね。
ようよう辿り着いたカンビレーの滝は、高低差はないですが、幅の広さ、水量(これも前日までの雨で増えていたわけで)、迫力は満点です。マリユドゥの滝より、かなり近づいて見ることができるのがいいです。



膝がゲラゲラ笑う帰り道。いつしか靴もドロドロ。しかし大満足。
再び船で入江に戻り、近くのレストランで沖縄尽くしのお弁当。青パパイヤの煮物なんて、いいお味でした!

星砂の浜を経由してから、ツアーは2班に分かれます。由布島へ渡る班と、<西表島温泉>に行く班で、私はもちろん温泉です!
巡業を利用して、全国の温泉を満喫していますが、こちらはなにせ「日本最南端」と「日本再西端」の温泉があるわけで、立ち寄らないわけにはいかないのです。
小一時間バスに揺られて到着した温泉は、リゾートホテルに併設されたもの。「田舎の温泉旅館」的なものを想像していたのでちょっと驚き。でも建物自体は綺麗で清潔感がありました。ナトリウム・カルシウム硫酸塩泉。男女に分かれた内風呂と、水着着用で入る混浴の露天風呂がございまして、この露天風呂が、大自然に囲まれながら温泉を楽しめて,開放感は抜群。先ほど申した最南端・最西端の温泉も、この露天の中にございます。
家族連れのお客が多く、記念写真を撮ったりと楽しそう。私も最南端の湯船に浸かってパシャリ…しかし私の水着姿なぞ誰も見たくないでしょうから掲載はいたしません。

トレッキングの疲れもとれ、再びバスで南東部の大原港。行きはたまらなかった高速船も、帰りはぐっすり眠ってクリア。
海、川、山、滝、天然のアトラクションを満喫し、温泉まであって。
またまたカルチャーショック、ワクワクドキドキ心が動くこの感覚。
旅の醍醐味ですね。

             ◎

夜は石垣在住の、家内の友人と食事。この方、もと某劇場の大道具さんだったんですが、旅行で訪れた石垣の魅力にとりつかれ、家族ともども移住なさったという経歴の持ち主。今は泡盛メーカー『請福酒造』(←クリックして下さいね)で働いてらっしゃいます。おすすめの居酒屋『南風(ぱいかじ)』でオオワニワタリのサラダ、イカスミチャーハン、フーチャンプルー、アオサの天ぷらなど(どれも本当に美味しい!)を頂きながら、お酒は当然ご自分の会社の<請福>を。飲みやすいけれど味わいもある、普段使いにオススメの泡盛です。
島へ移られて4年くらいだそうですが、住んでみてわかったこと、驚いたことよかったこと、いろんなエピソードをうかがえまして大変面白かったです(引っ越しの時の“沖縄時間”の話なんて!)。

請福酒造の商品は、もちろん東京でも手に入りますが、石垣の泡盛専門店『泡盛屋』がネット通販もしていますのでオススメです。石垣にいらっしゃった時も、是非お訪ね下さいませ。本当に安くてよい泡盛に出会えますよ!



続く


沖縄旅日誌1

2010年05月09日 | 芝居
9日から13日までの、石垣・沖縄本島旅行の記録です。(5月16日 記)

9日 くもり一時晴れ 『詰め込み過ぎ? の1日目』

午前6時25分 羽田発の飛行機に乗って、初めての沖縄へ。
自宅から向うとすると午前4時には起きねばならず、さすがにツライということで、前日から羽田に泊まったのが正解でした。
石垣空港へ直行する便で、3時間20分のフライト。さすがに後半は腰が痛くなりました…。

午前9時40分 石垣空港着。降り立ってまず感じた空気の違い。湿度、温度、匂い…。遠くへ来た、旅行へ来たという感覚が俄然強まりまして、テンションもあがり出したところで早速行動開始です。まずはタクシーで10分の<石垣島鍾乳洞>へ。沖縄に来てまで鍾乳洞なぞ見なくても…と思ったんですが、意外や意外、なかなかな規模と奇観の連続で面白かったです。
見学コースの中ほどで、記念写真を撮ってくれる女性の係員がいらっしゃるんですが、お客が多い時はいざしらず、ポツリポツリのときは待っているのも大変なんじゃないかしらんと思って、「中でお客を待ち続けるのも大変ですね」と申しましたら、
「ずっと鍾乳洞の空気に包まれているおかげで、肌がプルプルになるからイイんです」って…。ホント?



鍾乳洞を辞して、本日から2泊する<フサキ リゾートヴィレッジ>へ。石垣島の南西部にあたる海岸沿いのコテージです。
チェックインには早い時間でしたので、荷物だけを預け、休む暇なく市街へ戻ります。
今度は生まれて初めてのシュノーケリング体験! マリンレジャーの<トムソーヤ>のインストラクターの案内のもと、石垣港からボートに乗り込み、竹富島近くのシュノーケリングポイントへ向います。
おりしも前日に入梅した沖縄。ボートに乗り込むまでは、たまに雨がぱらつくあいにくの天気だったんですが、なんという幸運でしょう! スポットに着く頃にはサーッと雲が晴れ、夏のようなまぶしい日差しが差し込んできたではありませんか。聞こゆるは波音ばかり、見晴るかす大海原は碧く輝き、まことに感動的なものでございました!(すでにスキューバの装備完璧の状態だったので、写真が撮れなかったのが惜しい!)
そして海中に身を投じますと、まるで浦島太郎になったかのような、色とりどりのお魚さんのお出迎え! 怖がらないのですね~。青、黄、紫 桃、浅葱。その鮮やかさ、紋様の妙。自然には勝てません…。
珊瑚を傷つけないよう気をつけながら、1時間半くらい海中の絶景を楽しみましたが、インストラクターのお兄さんが大きなシャコガイを海底から持ってきてくれたりニモちゃんを見つけてくれたり、休憩中には温かいレモンティーを出してくれたり。あれやこれやとお世話して下さいました。


気がつくとかなり体力を使っておりましたが、帰港後シャワーを浴びて気分を一新、次なる目的地は当地の伝統工芸“みんさー織”を伝える<みんさー工芸館>です。
いわゆる絣織りである“みんさー”の製糸、糸染め、織りまでの過程を見学でき、製品も買える当館。その歴史や紋様の意味、染色法などは大変興味深く、また出来上がりの、飾らない、品の良い風合い、あれもこれも買いたくなってしまいました。
一角には<みんさー織体験コーナー>もあって、当然参加。20分くらいでコースターの出来上がり! …といったって、準備は全部プロが整えてくれているわけで、私はただ杼(ひ)を往復させるのと、足踏みで縦糸を上下させることだけを考えていればよいのですが、不器用な私、ペダルを踏むきっかけは間違える、「シャッと投げるように通せ」と言われた杼はホントに投げて床に糸がデロデロ、狼狽しまくりの体たらく…。


気がつけば夕暮れ時、といってもこちらは7時近くまでかなり明るい!
港近くに戻って、夕食ということで、この島出身の友人に聞いておいた居酒屋<海人居酒屋 源>さんへ。
漁師さんの直営ということで、やっぱりお魚が美味しい! 泡盛も安い! 
海ぶどう、近海魚刺身盛り、グルクン唐揚げ、石垣牛網焼き、チャンプルー、島らっきょう塩漬けなど平らげて、ホテルへ帰りました。

(右の写真の葉っぱ、オオタニワタリというのだそうで、ちょっとぬめりのある食感です)


続く