梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

明日は新小岩

2010年06月29日 | 芝居
やっぱりサッカー日本戦を観てしまった…。
最後までよく粘りました! 闘い抜きました! 本当にお疲れさまでした!!

『公文協東コース』は今日が<総ざらい>でした。
『重の井子別れ』は、加賀屋(魁春)さんが初役で乳人重の井をお勤めになります。その舞台に腰元で出させて頂くことがとても嬉しいです。三吉の、道中双六のくだりは、いかにもお姫様が輿入れしたくなるように、つとめてウキウキと賑やかに芝居をするようにと、博多座でご一緒だった先輩から教わりました。ご一緒の先輩、仲間とイキを合わせて楽しく勤めます。
…「イヤジャ姫」の別名もある調姫役は、2年前の9月の巡業の『葛の葉』で安倍童子だったお子さん、そして三吉は3年前の7月の巡業の『毛谷村』で弥三松だったお子さん。『勧進帳』の太刀持音若も、本興行で度々ご一緒しているお子さんたちです。可愛らしい皆さんの活躍が嬉しいですネ。

『七段目』は師匠初役の平右衛門。私は仲居に出ておりますのであまり仕事はできませんが、お軽は加賀屋(魁春)さんですから、平右衛門とお軽という兄妹を、実の兄弟で演じるというのは、なかなかないことですよね。「釣灯籠」からの上演ですが、『重の井』とともに、義太夫狂言の魅力を味わえることと存じます。

『勧進帳』につきましては……もうずいぶんお話ししたような気が。
この度の巡業で、高麗屋(幸四郎)さんが、全ての都道府県で弁慶を演じることになるのだそうです。考えてみたらこれはすごいことですよね。
私は何カ所で裃後見したかしら…。いろんな思い出がございますので、そんなこともおいおいお話しできたらと思います。


博多と別れを告げて

2010年06月27日 | 芝居
<博多座六月大歌舞伎>を無事勤め終え、本日帰京いたしました。

福岡は千穐楽近辺まではほとんど雨が降りませんでしたが、鹿児島では大変な豪雨が続きました。道路や交通網に被害も出たようで、地元の皆様のご心労はいかばかりかと拝察し、心よりお見舞い申し上げます。

さて、私にとって、今までで一番忙しい博多座公演でしたが、体調も崩さず勤めおおせることができて本当に良かったです。3役勤めさせて頂きますと、塗っては落としの繰り返しで、たいてい後半は肌荒れに悩まされるのですが、水が合ったのでしょうか、今回はそれもなくホッといたしました。

『紅葉狩』の侍女は、今の私にはまだまだ早いお役ですが、貴重な勉強をさせて頂きました。先日も申しましたが、諸先輩方がいろいろとご指導下さいましたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。お陰様で、初日は本当に足がガクガク震えておりましたのが、日を追って落ち着いて、ゆったりとした気持ちで舞台に出てゆけるようになりました。沢山のアドバイスが、この舞台に良い意味で“なれる”ことを早めてくれたのかな…。いずれ、もっと経験を積んだ上で再挑戦させて頂きたいなと思いました。
縫いの振袖に織物の矢の字帯という立派な拵えはあこがれでもあり、またこの雰囲気にそぐう役者にならねばならぬという課題でもあります。ゆっくり時間をかけて身につけてまいりたいと思います。

一方の『鬼平犯科帳 大川の隠居』の女中は、世話物であり新作でもありますから、雰囲気はガラリと変わります。用事をテキパキこなしながら捨て台詞で間をつなぎ、長谷川平蔵や船頭友五郎の芝居に反応したりと、やはり最初は大変でしたが、大変そうなのが見えたら台無しなお役(こんな仕事は日常茶飯事、というのが<女中>ですからね~)なので、とにかく「気にしない」ことを肝に銘じ(ヘンな表現ですが)、出たとこ勝負といっては語弊があるかもしれませんが、周りの流れにのる、というか、こっちで決めない、考えないで勤めました。
だいたいがそういうことに不向きな性分ですので、最初は辛かった! これでよいのかしら、あまりにファジーすぎないかしらんと思いましたが、それを乗り越えないと次のステップに立てない気がしました。
結果はどうだったのかは、自分ではわかりませんが、日を追って楽しく舞台に出られるようになりましたのが、新鮮な感覚でございました。この感覚は、忘れてはいけないものですね!

最後に『石川五右衛門』のこと。
大詰の「南禅寺山門」の場で、五右衛門を乗せた山門がセリ上がりますと、それに合わせて手水鉢が舞台前面に押し出されます。
今回、この手水鉢を押し出す黒衣後見をさせて頂きましたが、今から11年前の平成11年1月歌舞伎座、私が中村梅之になって最初にやった黒衣も、このお役だったんです。橘屋(羽左衛門)さんの五右衛門、師匠の久吉で、公家の衣裳を五右衛門の子分がひっぺがすくだり(今回の脚本にも取り入れられておりましたが)からという丁寧な上演でした。

セリが上がり切る前に、所定の位置に持って行かねばならないので、意外と高スピードで移動させますのが大変といえば大変なんですが、30歳を目前にして、「人生初黒衣」のおりと同じ仕事を勤めたというのが、たんなる偶然とはいえ、なにか感慨深いものがございました。


           ◎

今日はお休みでしたが、明日からは早速<公文協東コース>巡業のお稽古です。
体力勝負はいよいよこれから、というところでしょうか…。




第1回『市川猿紫舞踊会』のご案内

2010年06月21日 | 芝居
続きましては猿紫さんの初の自主公演『市川猿紫舞踊会』のお知らせです。

主催 市川猿紫の会
協力 松竹株式会社
   株式会社 おもだか


第1回 市川猿紫舞踊会

1、上 長 唄 手習子    娘おふじ
  下 清 元 玉 兎    玉兎

2、  常磐津 独 楽    独楽売萬作

3、  義太夫 吉野山道行  佐藤忠信実は源九郎狐 市川猿紫
                静御前        市川笑野

平成22年8月1日(日)
会場 新宿 明治安田生命ホール(新宿駅西口明治安田生命ビルB1)

昼の部 13時開演 / 夜の部 17時開演 (開場30分前)

入場券 6,000円


『独楽』や『吉野山』は澤瀉屋さんのお家の芸でございます。由縁の作品に挑戦する熱い舞台が今から期待できますね。笑野さんも静御前でまたまたご活躍。お二人とも気力体力勝負の夏!
猿紫さんは私より少し後輩ではございますが、本当に熱心な人。初の自主公演が実り多きものになりますことを願っております。
おってご案内させて頂きますが、『上方歌舞伎会』や『音の会』など、7、8月はまさに「日本の夏 勉強会の夏」。お互い盛り上げながら、切磋琢磨し役者道の糧にしてゆきたいです!


チケットお問い合わせ

市川猿紫公式ホームページ
www.en-4.com

おもだか会
03(3359)5205

チケットぴあ
0570(02)9999
電子チケットぴあ
http://pia.jp/t/ Pコード 403-350



    

第2回『市川笑野舞踊会』のご案内

2010年06月20日 | 芝居
澤瀉屋(猿之助)さんご一門の、市川笑野さん、市川猿紫さんが、それぞれご自分の会を開催されますので、ご案内いたします。

まずは笑野さんからです。


主催 市川笑野後援会
協力 松竹株式会社
   株式会社 おもだか
   おもだか会


第2回 市川笑野舞踊会

  市川猿之助 考案
1、長唄 安達原の月 (素踊り)

  笑野四変化
2、岡谷四季笑野彩(おかやのしき えみののいろどり)
  春 箏 曲 都忘れ      光源氏
  夏 長 唄 あやめ浴衣    芸者お美乃
  秋 新 内 玉菊燈籠     傾城玉菊
  冬 義太夫 廿四孝狐火の段 八重垣姫


3、常磐津 将門 忍夜恋曲者

   傾城如月実ハ滝夜叉姫 市川 笑野
   大宅太郎光圀     市川 右近(特別出演)

  (敬称略)

平成22年7月19日(月・祝)
会場 カノラホール(岡谷市文化会館 大ホール)
   〒394-0029 長野県岡谷市幸町8-1
   0266(24)1300

昼の部 正午開演 / 夜の部 16時開演 (開場30分前)

入場券 (全席指定)大人 5,000円(1、2階) / 学生 1,500円(3階)


笑野さんの出身地長野県岡谷市での、まさに「故郷に錦」の会ですね。盛りだくさんの内容ですが、この前お話ししたときには、四変化の演出をいろいろ工夫なさっているご様子でした。
「安達原の月」は、師の当たり役『黒塚』の<中の巻>をもとにされるとのこと。楽しみですね!

親しくさせて頂いております先輩の自主公演。巡業中なので拝見できないのが残念ですが、近隣にお住まいの皆様、いやそうでなくとも、是非是非ご来場下さいませ!

チケットお問い合わせ

市川笑野後援会(ライフプラザ マリオ内)
0266-28-8740

おもだか会
03-3359-5205


東日本へ旅立ちます

2010年06月18日 | 芝居
博多座公演もあと一週間ちょっとです。
ホテル暮らしももうすぐ終わり…というわけには実はまいりませんで、7月1日から8月1日まで、<公文協東コース巡業>に出演。またまた旅の空の住人となります…。

今回の興行は、2回公演の会場では、
昼の部『重の井子別れ』『勧進帳』
夜の部『雨の五郎』『忠臣蔵 七段目』『近江のお兼』

という、昼夜別狂言にてご覧頂きます。(1回公演の会場は、『重の井子別れ』『勧進帳』のプログラムです)
私は、『重の井』の<腰元(三)>、『七段目』の<仲居(三)>、そして『勧進帳』では富樫の<裃後見>を勤めさせていただきます。『重の井』の腰元ははじめてですので、先輩方によく教わって勉強させていただきます。

これまでの旅公演より、だいぶ忙しくなりそうな予感です。巡業だよりもどんな感じでお届けできるかわかりませんが、『合同公演』のご案内も含めて、今月更新がままならなかったぶん、少しでも皆様にお伝えできればと存じております。

中日でした

2010年06月14日 | 芝居
今月は日々が過ぎ行くのが速いです!
気がつけば本日“中日”。折り返し地点に来てしまいました。

『紅葉狩』の侍女と『大川の隠居』の女中は、仕事が多いので最初の頃は緊張したり焦ってしまったりいたしましたが、今はだいぶ落ち着いて勤められるようになりました。
先輩方のダメ出し、アドバイスのおかげです。つくづく、自分だけでは何もできない、何も知らないということを思い知らされます。未熟なのは当たり前。今はただただ経験値を上げ、未来を見据えて(信じて)勉強してゆくのみ! 分不相応なお役を頂戴いたしましたときは、常にそういう気構えでいないと、プレッシャーや自己嫌悪に押しつぶされそうになってしまいますね。

九州はやっと梅雨入りしたようですが、実は雨らしい雨はまだ一度も降っておりません。
朝、夏のような日差しの下劇場に向い、12時間後涼しい夜風に包まれながらホテルに帰る毎日ですが、さてこれからはどうなりますやら。
相変わらず身辺バタバタしておりまして、なかなかお芝居の話ができませんが、まずは無事に公演の半分を終えることができましたこと、ご報告させて頂きます。

ご無沙汰いたしております

2010年06月11日 | 芝居
昼夜5演目、思いのほか忙しい楽屋生活を送っております。夜も勉強会の準備やおかやの台詞覚えなどあり、なかなかパソコンに向かう時間が取れませず、お芝居話も滞りまして失礼をいたしております。

『第16回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演』の前売りが始まりました!
皆様どんどんお申し込み下さいね。

いよいよ始まりまして

2010年06月04日 | 芝居
博多座<六月大歌舞伎>、開幕から3日経ちました。

“三日御定法”という言葉がございます。お芝居の段取り、細かい演技をさらに練り上げるために、どうしても初日から数日間はバタバタしてしまいますが、その間におこったアクシデントは不問にしましょうね、という幕内のルールでございます。
とはいえその言葉に甘え過ぎてはいけないわけで、千穐楽まで無事に勤めてゆくためにも、とても大事なはじめの一歩でございますから、心して演じてまいりました。それでも、私にしても周りにしても、ドキドキしてしまうことや笑っちゃうようなことまで、いろんなことが起こるわけでございまして…。

明日からは御定法も通りません! 気持ちはだいぶ落ち着いてまいりましたが、そのぶん油断、緩みがでないよう気をつけながら、頂戴したお役とお仕事を、楽しく元気に勤めてまいります。
昼夜5演目に関係しておりますので、楽屋に12時間こもりっぱなしというのは初体験ですが、無駄遣いしなくてすむかな?
できる限り博多を満喫したい気持ちはあるのですが…。

水月博多座稽古場便り・2~4(合併になってしまってごめんなさい)

2010年06月01日 | 芝居
博多に乗り込んでからは本当に“怒濤”の稽古でした。パソコンに向かうことも思うように任せず、ついに明日初日を迎えることとなってしまいました。
博多座での稽古のまとめをして、ひとつの区切りといたしたいと思います。

5月30日 博多座入り!

午前9時の飛行機で博多へ。お昼前に劇場に到着し、すぐに楽屋作りにとりかかりました。
博多は初夏のまばゆい日差しに包まれ、恒例<船乗り込み>も無事に開催されましたが、なにせこちらは作業中。大勢のお客様にお出迎え頂いたことは、夜のニュースで知りマシタ。
船乗り込みもすみ、顔寄せののち『毛剃』『紅葉狩』『青柳硯』の<総ざらい>『石川五右衛門』<附立>。
『紅葉狩』の侍女は、毛氈や提重、褥や脇息などの小道具を本番通り使って段取り整理。私は提重を運びます。いわばピクニックの準備を、皆で手際よく行わなくてはなりませんが、先輩方がいろいろとご指導下さるのが有り難いです。もったフリではなく、実際にあつかったことで、注意点やコツもわかって助かりました。あとはこれが本番でもきちんとできればなんですが…。
『毛剃』の稽古と平行して『青柳硯』の<道具調べ>があり、出番の合間を縫って立ち会わせて頂きました。蛙の仕掛けを今回どう設置するか、演出も多少変わったのでしっかり確認いたしました。仕掛けテストは全ての稽古が終わってから。これが2時間ちかくかかりました。前回やったこととはいえ、今回の装置にあったやりかたを見つけるためには、慎重に正確に! です。
午後11時過ぎにホテル着。ビールを飲んだら、まさにバタンキュ~。

5月31日 さっそく蛙が動き出す

午前11時より『青柳硯』<初日通り舞台稽古>。あっという間にこの日が来てしまいました。蛙ちゃんは前日の準備のおかげでひとまず無事に。しかしながら、差し金の蛙をどういうコースで歩かせるか、その導線は師匠のご意向もあり変更することに。少しでも自然に、そして面白く見えるように皆で考えております。
『石川五右衛門』<総ざらい>は、宙乗りのある2幕のみ“舞台にて”。
『大川の隠居』の<舞台にて総ざらい>、女中の段取りを、舞台で確認できてよかったです。座敷の外で行われている、播磨屋(吉右衛門)さんと萬屋(歌六)さんのお芝居の間に、部屋の中では私がこまごまと仕事をしております。ちょうど仕事が終わったところでお迎えのため障子を開けるのが、あちらのお芝居の終わりという段取り。この配分が難しかった! 早く仕事を済ませてしまうとあとで何にもすることがなくなって困るし、といって時間つぶしのようにチョロチョロ動きまわることもできませんし…。
ドキドキしちゃって稽古着が汗みずく。ああ恥ずかしい。

6月1日 4連続舞台稽古

『紅葉狩』『石川五右衛門』『毛剃』『大川の隠居』の<初日通り舞台稽古>。
『紅葉狩』緊張の極みでしたが、出たらやるしかない! とにかく落ち着いて慌てずに、といい聞かせながら。振袖の扱い、裾のさばきといった個人の課題はもとより、6人の侍女全体としてのイキ、まとまり。気をつけることは山のようにありました。今日の反省を、千龝楽までに少しでも乗り越えられるように精進します。
いそいで化粧を落として『石川五右衛門』の黒衣。師匠演じる此下久吉、衣装替えなど意外と用事が多くちょっとバタバタしました。ポンポンとテンポよく物語が展開しますので、油断は禁物!
『毛剃』は、歌舞伎座のときとは装置が違うところもあり、仲居の人数は減ったけれど、太鼓持ちは増え、前回経験した段取りとは、だいぶ変わっています。今日で感じがつかめたので(遅い?)、あとは整理してゆくのみ。いわば“ご当地演目”ですので、皆様にはおおいに楽しんで頂きたく存じます!
『大川の隠居』は昨日の稽古のおかげでかなり気持ちを楽にして臨めました。長谷川平蔵に初鰹のお膳を運びますが、その鰹についての捨て台詞を入れてほしいと、演出の齋藤雅文先生からご注文がございましたので、さあどういたしましょうか? 考えて用意した台詞でなく、その場で生まれたコトバのように聞こえたらよいのですが。
今夏の勉強会の鬘合わせまであって、まさに朝から晩まで楽屋におりました。博多座でこんなに続けて稽古に携わったのは初めてでした。

…『紅葉狩』でも『毛剃』でも『大川の隠居』でも、お酒の支度をしているのです。不思議な偶然です。
『石川五右衛門』の「山門」では、セリ上がりとともに手水鉢を移動する黒衣をしています。とにかく一日中なにかを運んでいる<梅之の6月>なのでした。