梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

松風月稽古場便り・2

2009年05月31日 | 芝居
『蝶の道行』『女殺油地獄』の<総ざらい>と、『双蝶々曲輪日記 角力場』『門出祝寿連獅子』の<附立>でした。

『角力場』は初めて出演するお芝居です。私は<町人の女>でございますが、当時女は相撲は見物できなかったので、木戸内には入ることができません。せっかく<濡髪 VS 放駒>という好取組みを目の前にしていながら、お茶を飲んで帰るだけ…というのはなんとも寂しい限りです(このあと「長吉勝った~」と小屋から飛び出してくる群衆をよく御覧下さい。全員男でございましょう?)が、まずは幕開きの賑やかな雰囲気をしっかり作れるよう、短い出番ながら気をつけて演じたいと思っております。

『寿連獅子』は、初舞台となる4代目松本金太郎さんのための晴れ舞台。従来の『連獅子』を基盤にした新脚本での上演です。
師匠は、高麗屋3代の獅子をお祝いする大名役でご出演。私、ここで<裃後見>を勤めることになりました。
先年の『侠客春雨傘』で初御目見えをなすった齋さんが、晴れて一人の歌舞伎俳優として出発する、まさに“門出”のお舞台に携わることができました。昼の部の『油地獄』は《一世一代》、夜の部『寿連獅子』は《初舞台》。時の流れを感じる公演ですね。

…師匠が昼夜4役ということで、楽屋に運ばれてくる小道具の数の多さといったら! 明日は朝イチで『蝶の道行』舞台稽古。気合いを入れて取り組まねば、気持ちが現実に追いつきません!

松風月稽古場便り・1

2009年05月30日 | 芝居
2日間のお休みを満喫しました。これから、気持ちもあらたに更新してまいります…。

歌舞伎座連続出演8ヶ月目となる<六月大歌舞伎>のお稽古初日です。
本日は『女殺油地獄』『蝶の道行』の<附立>でございました。

『油地獄』では、師匠が久々に豊島屋七左衛門をお勤めになります。そのときも主演の与兵衛をお勤めになっていた松嶋屋(仁左衛門)さんが、このたび“一世一代”と銘打たれてのお舞台。
松嶋屋さんがこの前東京で上演なすったのが、私が研修所を卒業してから間もない平成10年9月歌舞伎座。そのとき私はこの演目には出演しておらず、舞台稽古を客席で拝見しただけでしたが、あれから11年! 再びこの目で拝見することができるのが嬉しゅうございます。

『蝶の道行』も、師匠にとっては10年ぶりの上演となります。
6世歌右衛門の大旦那や音羽屋(梅幸)さんが昭和37年に復活なすった時代狂言『けいせい倭荘子』の景事がこの道行で、その時以来の、武智鉄二氏による構成・演出、川口秀子師の振付けでこの度も上演されます。
義太夫が地ですのでボリュームもあり、曲そのものも変化に富んでおりますし、武智氏の演出が曲趣に基づいたロマンチックでモダンなものとなっておりますから、お稽古を拝見していて大変面白い…なんていっている余裕はなく、引き抜きや早ごしらえがあるので後見としては戦々恐々です。不器用ですので粗相しないよう気をつけて、落ち着いて…。

              ◯

英気を養うため、というわけでもないのですが、三時過ぎに稽古が終わりましたので、夕方から新丸ビルに家内と買い物にいきまして、そのまま上のレストラン街で夕食となったのですが、厳選野菜と手作りパスタが売りのお店、繁盛している注文してから食事が出てくるまで1時間かかったのには驚き入りましたね、ホント。粉から練ってたのかしら?

ご無礼をいたしました

2009年05月28日 | 芝居
諸々の仕事が結局片付きませんで、ブログ更新もろくろくできないまま、5月歌舞伎座公演の千穐楽を迎えてしまいました。
本当に失礼いたしました。申し訳ございません。
昨日は『矢車会』。1回ぽっきりの舞台に大変緊張いたしましたが、なんとか無事に勤めることができました。終演は午後八時、それから国立劇場に直行して勉強会の会議…。
これでようやく、一段落つきました。あ~ヤレヤレ。

今日と明日はお休みです。舞台以外で溜め込んでしまった疲れを、しっかり癒したいと思います。
お稽古がはじまる30日まで、これで本当に最後の休載とさせて下さいませ。

8ヶ月目の歌舞伎座では

2009年05月17日 | 芝居
27日開催の<矢車会>におきまして、『連獅子』の二畳台と牡丹を運ぶ<後見>をさせて頂くことになりました。
この踊りに関わるのは初めてです。本年1月の『鏡獅子』に続き、石橋物の大曲を間近に拝見し、勉強させて頂けること、有難く思っております。…師匠と加賀屋(魁春)さんの『寿競べ』は、後見がでない素踊りだそうですので、3つきぶりの後見は、まず天王寺屋(富十郎)さん親子のお舞台のお手伝いから、ということになりますね。

6月の歌舞伎座におきましては、昼の部『双蝶々曲輪日記 角力場』の<町の女>のお役を勉強させて頂きます。これまた、はじめて出演するお芝居です。
続く、師匠と成駒屋(福助)さんの『蝶の道行』では後見を勤めさせて頂きます。師匠約10年ぶりの助国。私は入門3ヶ月目でした。あのときの記憶を呼び戻している最中です…。
師匠はこの道行の他に『油地獄』の七左衛門、『門出祝寿連獅子』の大名、そして『幡随院長兵衛』の唐犬と、昼夜4役ということで、忙しくなりそうです。弟子として、1日の仕事をしっかり勤められるよう、体調に気をつけ、元気に前向きに取り組んでまいる所存です。歌舞伎座連続出演8ヶ月目! 頑張るぞ~!!

抽き出しが増えました

2009年05月15日 | 芝居
先輩のご縁をもちまして、吉原最古参の芸者、“みな子”姐さんの芸をお座敷で拝見できるという、願ってもない機会に恵まれました。
浅草寺裏の割烹店の2階を貸し切っての一夜の宴は最初から大盛り上がり! 御年90というみな子姐さんの弾き唄いの「鶴亀」は、ツレの姐さんが鼓と大皷とを一人で同時に演奏するという初めて拝見する技。その鼓と大皷を、続く「吉原さわぎ」の唄の間に、あれよあれよという暇に、胴と革とにばらして片付けてしまうのですから…!

それから、洒落た小唄を2、3番続けて披露のあとは、私たちも参加しての<拳遊び>。和藤内と婆と虎の“虎拳”は存じておりましたが、太鼓を挟んで相対し、ジャンケンで負けた方がその場でクルリと回り、勝った方は太鼓を打ち鳴らす、というのを、どちらかが3連勝するまで続けるのや、ちょいとここでは説明できない艶っぽいものまで、初体験の客ばかりでしたから、マァ爆笑やら嬌声やら…。(私もすっかり楽しんでしまいました)

最後は、前のお座敷を終えたばかりの幇間さんが駆けつけて下さり、これまた洒落の効いた踊りや屏風芸を続けてご披露下さいました。生で観る<吉原の芸>の素晴らしさ! この目に焼き付けることができたのが、本当に有難いです。
みな子姐さんの何気ないしぐさ、三味線の調子を合わせるかたちとか、お酌をする姿。廓の雰囲気が自ずと滲んでいらっしゃる。勉強になりました!

初めてこういう場に足を踏み入れた私ですが、とっても居心地が良かった、と申せばなんとも僭越ですけれども、この空気、この賑わい、心底嬉しく思える至福のひと時となりましたのは、なにもお酒の所為だけではないハズと確信しております…。

元気にはやっておりました

2009年05月14日 | 芝居
6日以降、更新ができない日々が続いてしまいました。申し訳ございません。
踊りの稽古や勉強会(今年も出ます)の用事で、ゆっくりパソコンに向う時間がとれませんでした。今月の歌舞伎座の舞台からは、お伝えしたいことが沢山あったのですが、中途半端な文章にはしたくなかったのであえて休載、ちょっと遅めのゴールデンウィークのつもりで、お休みさせて頂きました。事後報告になってしまい、恐縮です。

本日、歌舞伎座5月興行は<中日>でございました。
気がつけばもう折り返し! 早いですね~。
師匠が昼夜4役に出演する6月興行も間近に迫ってまいりました。体力勝負は必死! 今からコンディションを整えておかなければ…。

明日からまた、芝居話を再会させて頂きますが、日によってはお休みさせて頂くかもしれません。あしからずご了承下さい。

イタタタタ

2009年05月05日 | 芝居
『加賀鳶』の「お茶の水」の場で、百姓太次右衛門が“疝気”を起こして倒れるくだりがございますが、この“疝気”というのは、ものの本によれば、下腹部を中心としておこる痛みのこと。とありまして、原因としては、胃や腸の潰瘍、痙攣などがあげられるのですが、医学の発達していない昔のこと、なかなか根本治療はできず、冷えると症状が悪化するので、体を温める漢方薬や鍼灸で対処するくらいだったようです。
男性によくおこる病と考えられていたのが面白いですね。落語の『疝気の虫』も、その点をふまえた筋運びになっています。

これとは逆に、女性の持病の代表は“癪”でしょう。歌舞伎でも、いろんな演目で「持病の癪が起こって…」というくだりがございますね。
“癪”は胸から腹部にかけておこる痛み、さしこみのこと。とあります。ふ~む、疝気とは痛む場所が違うのか。原因としては胆石だとも腎臓結石だとも考えられているようですが、疝気同様、痛いという症状そのものについた名称ですから、特定の病気に限定できないのでございます。

しかしまあ、太次右衛門さんも疝気さえおこさなかったら道玄に殺されることもなかったでしょうし、『十六夜清心』の求女だって、癪にならなきゃ清心に命を奪われずに済んだのでしょう(求女は男で癪を起こす珍しいお役)。
ああ、病にはかかりたくないものです。

会うたびに…

2009年05月04日 | 芝居
<劇団 偉人舞台>の鹿島良太さんと銀座で食事。
焼き鳥の<福みみ>にお邪魔しました。

会うたびに、話が弾みすぎて、時間が経つのを忘れてしまいますが、今日もよく喋りました~。
お酒もついつい進んでしまうのですが、お店を出てから酔ってくるカンジ…。
いろんな刺激をもらって、新しい視線、考え方を導いてくれる。本当に嬉しいひととき(ふたとき、みとき、かしら)です。

(5月5日 記)



あと1年で…

2009年05月03日 | 芝居
<歌舞伎座さよなら公演>も、はや5ヶ月目となりまして、4分の1が終了してしまったわけですね。
7月の狂言立ても発表になりました。次から次へと名作、話題作が続きますが、私はどれだけ携われることでしょう…。

今月から、歌舞伎座正面玄関の右脇に、カウントダウンの掲示パネルが設置されました。
写真は昨日のものなので、今日は『あと363日』です。
…ゼロになったらなにかが起こるのでしょうか。

満員御礼皐月興行

2009年05月02日 | 芝居
本日、無事に歌舞伎座<五月大歌舞伎>の初日を迎えることができました。
『暫』の侍女(私には“玉笹”という役名がついていたのですね!)も、足が痺れることもなく花道を引っ込むことができました。また、『毛剃』の仲居も、仲間と考えた段取りがとても上手く行きまして、スムーズに仕事ができました。自分が携わる舞台を、粗相なく勤めることができ、心の底から安堵いたしております。

昼の部『暫』では、ご来場頂きましたお客様が、いかに“鎌倉権五郎”の登場を待ち望んでいらっしゃるかが、万雷の拍手、声にならないざわめきからひしひしと感ぜられました。この度、成田屋(海老蔵)さんは花道でのツラネで「今、このとき」ならではの台詞を折り込んでらっしゃいますが、それに対する客席の反応も並々ならぬものがございまして、このような瞬間に立ち会える喜びと申しましょうか、やっぱり、生の舞台っていいものだなと、改めて思いました。

昼夜ともに大勢のお客様でいっぱいの客席! 有難く、嬉しい限りです!
鉄砲洲稲荷の例大祭や、ご存知三社祭も開催される当月、世間も劇場も、何卒賑々しく勤められますよう、お願い申し上げます。

田草月稽古場便り・4

2009年05月01日 | 芝居
『暫』と『加賀鳶』の<初日通り舞台稽古>。

『暫』の侍女、やはり正座が大変! お稽古着では平気だったのに、衣裳を着ますと、よりしっかりと帯を締めますし、衣裳自体の厚み、重みも加わって、負担は倍増、しかも所作舞台の固さもあり…。油断するとエラいことになりそうな予感です。
実際、痺れが切れて歩けなくなった方もいらっしゃったそうですので、十分気をつけて、うまく座るコツを見つけたいものです!

『加賀鳶』、携わるのは2度目なんですが、その折りは自分が「木戸前」の鳶の者と「赤門前」の捕手に出ていたこともあり、師匠の松蔵に関する仕事は飛び飛びでしかしておらず、お恥ずかしいことですが記憶が朧げでございました。今回私自身は出演しておりませんので、最初から最後まで師匠につくことができます。もう一度、覚え直すつもりで諸々の用事を勤めたいと思っております。

…『寿猩々』『手習子』の<初日通り舞台稽古>を拝見してから帰宅いたしました。

さあ、歌舞伎座連続出演7ヶ月目、歌舞伎座<五月大歌舞伎>がはじまります!
皆様の御来駕を、心よりお待ち申し上げております。