梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

長らくご無沙汰いたしました

2012年08月29日 | 芝居
7月、8月の更新ができませず、申し訳ございませんでした。

今年は、いつも以上に“濃い”夏を過ごさせて頂きました。

7月大阪松竹座公演では、松嶋屋(仁左衛門)さんの『荒川の佐吉』で、序幕に登場いたします、田舎娘の<お袖>役を勉強させて頂きました。ならず者の権六にいたぶられるところを、主人公佐吉に助けられるお役ですが、前々から、いつかは演じられたらと願っていたお役が実現し、嬉しさもひとしおでしたが、プレッシャーも大きゅうございました。
ただただ全力で演じるのみでしたが、今の自分のいたらぬところ、課題を突きつけられた舞台でもございました。もっともっと頑張らねば! と決意を新たにした次第です。

7月27日、無事に7月公演の千穐楽を終えて、翌々日29日には浅草公会堂にて、松嶋屋(孝太郎)さんのご子息、千之助さんの初めての自主公演『千之会』のお手伝いをさせて頂き、日頃お稽古に通っております宗家藤間流、藤間勘十郎師と、松嶋屋(孝太郎)さんとによる『喜撰』で、勘十郎師演じる喜撰法師の後見をさせて頂きました。
一回ぽっきりの公演は、25日間の大劇場公演とは違う緊張を強いられますが、千之助さんは素踊りで『草摺引』の五郎、衣裳付きで『供奴』を見事に踊られました。その重圧にくらべれば、私のドキドキなど…。つつがなく終わってホッといたしましたが、お客様のあたたかいお気持ちに包まれた素晴らしい公演に携わることができ、嬉しゅうございました。

8月は、例年参加させて頂いた『合同公演』を久方ぶりにお休みさせて頂き、4・5日の国立劇場小劇場『音の会』、9・10・11日の日本橋劇場『第4回 趣向の華』に出演させて頂き、その合間には『小学生のための歌舞伎体験教室』のお手伝いもさせて頂きました。
『音の会』では、成駒屋(福助)さんの監修・指導によります『野崎村』で、<下女のおよし>を勉強させて頂きました。これも前々から勉強したいお役でございました。年季を積んだ方が、“腕”と“味”でみせるお役であることは承知の上で挑んだわけですが、やはりこれは積み重ねたものがものをいう、今の私には手も足も出ないお役でございました。成駒屋(福助)さんが稽古場で細かくダメを出して下さいまして、ようやく形がついたようなものですが、このような三枚目がかったお役には、いつかまた、修行を重ねた上でリベンジしたいと思っております。

『趣向の華』では、紋付袴姿による〈袴歌舞伎〉が恒例となっておりますが、本年は岡本綺堂の作に基づく『白虎隊』で〈女中お松〉、藤間勘十郎師作、高麗屋(染五郎)さん演出によるヤマトタケルが主人公の『大和神話武勇功』で〈尼 松月尼〉を勤めさせて頂き、素演奏の演し物、長唄『雨の五郎』では三味線を勤めさせて頂きました。
『白虎隊』では、若くして命を散らした白虎隊士に強く思いを寄せる娘、『大和神話』では貫禄を求められる尼僧。お手本がないだけに、自分でお役を作る喜び、面白さもあるのですが、手前勝手にならないよう、あくまで歌舞伎として演じられるよう、自分を戒めながら臨みましたが、いかがでしたでしょうか。“素”で女形を演じることにつきましては、周りの方々からは「やりにくくないですか」というお言葉も頂戴しますが、私といたしましては、今まで諸先輩方に教わってきたことを信じ、変な工夫などは一切せず、いつもと同じようにやるだけと、何も不安に思うことはございませんでした。

          ◯

8月は前半で、全ての仕事が終わりましたので、後半は思い切って自由な時間を過ごすことができました。
亡き祖父母の墓参り、両親との小旅行、文楽劇場で開催された<第1回 薪車の会>の舞台の拝見、友人たちとの懐旧…。
もちろん、『第18回 合同公演』の舞台も稽古から拝見させて頂き、仲間たちの奮闘に大いに刺激をうけ…。

          ◯

沢山の栄養を補給しまして、さて9月は新橋演舞場『秀山祭 九月大歌舞伎』です。
趣向の華で大変お世話になった高麗屋(染五郎)さんの、不慮の事故による休演は何と申しましても残念でございまして、1日も早いご回復を願わずにはおられません。
休演にともなる配役変更もあり、師匠は昼の部『寺子屋』で武部源蔵、『河内山』で松江出雲守、夜の部で『桔梗旗揚』の四王天但馬守をお勤めになります。
私は『桔梗旗揚』で、腰元(四)を勤めさせて頂きます。

まだまだ残暑厳しゅうございますが、皆様にはどうぞお体にはお気をつけられ、初秋の歌舞伎公演を何卒ご堪能下さいますよう!