梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

国立劇場11月公演は近松門左衛門特集です

2011年11月02日 | 芝居
名古屋御園座顔見世興行も無事終わりまして、11月は国立劇場に出演いたします。
10月から始まりました、開場45周年記念公演の第2弾となる当月は、近松門左衛門の作品2作を上演いたします。
大旦那、6世歌右衛門が復活いたしました『日本振袖始』と、山城屋(坂田藤十郎)さん屈指の当たり役『曾根崎心中』でございます。

神代の昔を描く壮大な物語から、スサノオノミコトの八岐大蛇退治を中心にまとめたのが、大旦那の『振袖始』でございますが、この度は発端として、八岐大蛇を退治するに至るきっかけや、タイトルにもある「振袖始」のいわれがわかる場面があらたに脚色されました。
師匠梅玉のスサノオノミコト、加賀屋(魁春)さんの岩長姫実は八岐大蛇、そして部屋子の梅丸が稲田姫という大役を勤めさせて頂きます。

『曾根崎心中』は、中学生の頃「お初上演1000回」の日に観劇できた思い出深い演目です。国立劇場大劇場での本公演では初の上演となるそうですが、神話の世界と心中もの、同じ作者による、全く異なるテーマの2作品の同時上演は、常とはまた違った趣きとなることと存じます。

この度私は、『日本振袖始』で<侍女あかざ>、『曾根崎心中』では<参詣の女>を勤めさせて頂きます。『振袖始』では、先ほども申し上げました、新たな場面へ出ますので、稽古ではいろいろ試行錯誤がございました。
『曾根崎心中』に出演させて頂きますのは、実に10年ぶりでございます。近松の古典ではございますが、お気づきの方もいらっしゃるかと存じますが、鬘は<アミ(網)>という、新派や新劇で使われるリアルなものなのです。いつもの歌舞伎世話物とはおのずと雰囲気が変わります。新鮮な気持ちでございます。

秋もいよいよ深まり、そろそろ風邪の心配をしなくてはならなくなってまいりました。皆様お体にはくれぐれもお気をつけられまして、劇場へ足をお運び下さいませ!