梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

巡業に潜入! その2

2009年06月30日 | 芝居
昨日の<中央コース>に引き続き、本日初日を迎えた<公文協東コース>の舞台を拝見に、新小岩の《江戸川区総合文化センター》の昼の部にお邪魔させて頂きました。

松嶋屋(仁左衛門)さんを座頭に、松嶋屋ご一門(秀太郎さん、愛之助さん、孝太郎さん)の皆様、橘屋(家橘)さん、音羽屋(竹三郎)さん、高麗屋(高麗蔵)さんというお顔ぶれでの狂言は、『草摺引』と『義経千本桜 木の実~鮓屋』の2本だてです。

『草摺引』といえば、6月歌舞伎座でも上演されましたが、そのおりは藤間のお家元の振付け。今回の巡業では藤間の御宗家の振付けということで、その違いをお確かめになったお客様もおいでかと存じます。花柳流での上演もままございますし、使う小道具や演出が色々変わるのが、面白いですね。

『鮓屋』も、松嶋屋(仁左衛門)さん独自のなさり方が、大変勉強になりました。いがみの権太を、あくまでも上方のゴロツキ、やんちゃ者として人物造形する演じ方、お芝居の運び方。私の周りのお客様が、どんどんお芝居の世界に引き込まれてゆくのが、客席にいてよっくわかりました。
「木の実」「小金吾討死」「鮓屋」の3幕ですが、とてもテンポが良くてあっという間です! 東コースの『沼津』とともに、義太夫狂言の名作を存分に楽しめる、素敵な興行。東京近郊は、7月2日<練馬文化センター>、3日<八王子市芸術文化会館>に、19日の神奈川県<鎌倉芸術館>、29日の埼玉県<サンシティ越谷市民ホール>がございます。

なにとぞ、大勢様のご来場を賜りますよう、お願い申し上げます!

巡業に潜入!

2009年06月29日 | 芝居
王子の<北とぴあ>で明日初日を迎える、<公文協中央コース巡業>の、舞台稽古を拝見させて頂きました。

播磨屋(吉右衛門)さんを座頭に、京屋(芝雀)さん、萬屋(歌六さん歌昇さん)ご兄弟、高麗屋(染五郎)さんという顔ぶれで、『伊賀越道中双六 沼津』と『奴道成寺』の2本だてでございます。
北とぴあの客席に座ってお芝居を観るというはじめての体験。とっても観やすいですネ。音もホワンホワン反響しすぎることもないので、義太夫も長唄もきちんと聞こえます。

偶然の再会を果たすも、それぞれの境遇の違いから名乗るに名乗れない親子。仇の在り処を知りたい一心の平作と、恩ある家への義理に苦しむ重兵衛の心情が切々と描かれる『沼津』。

藤間の御宗家の振り付けでの上演は珍しい『奴道成寺』は、三つ面を使い分けてのクドキや、花四天を相手の所作ダテとなる山尽くしが華やか!

<公文協中央コース>、東京近郊は、この「北とぴあ」の他、12日「三鷹市公会堂」、13日「大田区民ホール アプリコ」、29日「板橋区立文化会館」、30日「立川市市民会館」がございます。
皆様、どうぞ足をお運び下さいますよう! 『合同公演』参加者も、大勢出演しておりますよ~。




大勢様のご来場有り難うございました

2009年06月28日 | 芝居
今日は、師匠の後援会<梅玉会>の懇親会でした。
溜池山王のANAインターコンチネンタルホテル東京にて、会員の皆々様と師匠との和やかなひと時。
この度のオープニングは、リスト作曲・藤間蘭黄師振付・そして師匠梅玉の踊りによる『メフィストワルツ』! クラシックと日本舞踊との融合…。師匠が、悪魔・男・女の3役を、若手ピアニストの大田佳弘氏の生演奏に合わせて演じ分ける光景は、普段の舞台ではまず見られないものだけに、大変面白く(なんて言葉は弟子が使ってはホントはいけないのでしょうが…)拝見させて頂きました。

私どもの勉強会のご紹介もして頂きました。本当に有難く思っております。
皆様からのお励ましに応えられるよう、弟弟子の梅秋ともども、精一杯精進いたします!

満員御礼、有り難うございました!!

2009年06月27日 | 芝居
本日、歌舞伎座<六月大歌舞伎>千穐楽でした!
お陰様で、昼夜5演目にわたる仕事、無事に勤め上げることができました!

『蝶の道行』での、初体験の“引抜き”。
アクシデントもなく勤めることができ、心からホッとしておりますが、「見るとやるとは大違い」というのは本当ですね。先輩方が“この一瞬”のために、お客様からは見えない手練をいかに駆使していらっしゃるか。初心者である私にはその技術がないので、アタフタしっぱなしでした。本当に、至らぬものをお見せしてしまいまして、反省しきりでございます。次回がいつになるかはわかりませんけれども、是非ともリベンジさせて頂きたい! それまでに、もっともっと先輩方の技を見て、お話を聞いて、盗んでゆかねば…!

松嶋屋(仁左衛門)さんの<一世一代>『女殺油地獄』も、金太郎さん<初舞台>の『寿連獅子』も、大変な盛況が連日うち続くなか、無事に終えられましたこと、心よりお喜び申し上げます。
師匠4役連続出演という、久々忙しい歌舞伎座でしたが、仲間とともに楽しく過ごせました。有難いことでございます。

さて、7月の私は…
お休み!!
でございます。
じつに3年ぶりに、なんの仕事も入らない完オフです!
ゆっくりのんびり骨休めさせて頂きます。

これからますます暑くなってまいります。
皆様、くれぐれもご自愛のほどを…。

稽古もだんだんと本格的に

2009年06月25日 | 芝居
23・25日と、松濤の藤間御宗家にて<合同公演>『双面』のお稽古。A・B班ほぼ全員揃いました。
この度の『双面』も、私が法界坊を勤めさせて頂いた平成16年と同じく、地方(じかた)は常磐津のみとなりますが、今回は、本興行で竹本が入るときと同じように、赤姫姿の<野分姫>から、お組そっくりの町娘姿への“引抜き”もやります! 5年前と印象がつかないように、御宗家がお計らい下さいました。
さらに! 原曲にあって、久しく上演されていない、法界坊、松若、お組、おしずの4人による<手踊り>が、この度加わります! より華やかな舞台になることと存じます。各役ともに、しどころも増えたわけで、本当に有難いことだと思っております。

…踊りだけでなく、お芝居の部分も多いこの一幕。皆のイキを合わせて、まとめてゆくのはこれからが正念場です。協力しあって、少しでもよい舞台にしたい! その一心で稽古に励みます。

《第15回 稚魚の会 歌舞伎会 合同公演》、前売り状況もお陰様で順調です。平日公演が比較的お席に余裕があるようです。
良い席はお早めに! 皆様、なにとぞ御喧伝下さいますようお願い申し上げます。 

歌舞伎座風景・2

2009年06月24日 | 芝居
私たちが過ごす三階の名題下部屋には、着付け用の姿見が二面ございます。
その中の一面、写真左側のものは、大変な歴史があるもので、かつて尾上多賀之丞さんがお使いになっていたものなんです。
『加賀鳶』のおさすりお兼や、『暗闇の丑松』のお今など、この方ならではのお役をたくさんお持ちでいらした大先輩。残念ながら実際の舞台は拝見できませんでしたが、残された映像から、なんともいえない風情とお芝居心に、あこがれております。

そんな方から伝えられたこの姿見も、とても立派な風格を漂わせておりまして、いかにも<歌舞伎の楽屋>という雰囲気が漂います。

建て替えになるとき、この姿見はどうなるのでしょうか…? 絶対に残したい!

今月のお役から

2009年06月23日 | 芝居
『角力場』の<町の女>で、私がかぶっている鬘の結い方は<お盥(おたらい)>と申します。
笄(こうがい)に、束ねた髪をうち違いに巻き付けたもので、年齢的には上の人のヘアスタイル。しかも、ちょいと洒落た感じなものなのだそうです。
というわけで、私の化粧も若作りはせず、眉なし。白足袋を履いておりますのも、あまり下世話にしないためでもあり、また、他の町の女役の3人が素足なので、印象がつきすぎないようにする気持ちもあります。

世話物の町人の女役の髪型ですと、他に<おばこ>とか<銀杏返し>、小ぶりな<島田>など。それぞれに、ふさわしい年齢がありますので、化粧の仕方はもちろんのこと、衣裳の色、柄、履物の鼻緒の色みなど、総合的におかしくないようにまとめなくてはなりませんが、まだまだ勉強不足ですので、自分だけではわかりかねております。先輩方や床山さん、衣裳さんに教えてもらいながら、<経験値>を上げている最中…。

しのぶ綟摺り…

2009年06月22日 | 芝居
朝、用事で国立劇場に寄ったのですが、劇場正面の植え込みの下に、たくさんのネジバナが咲いているのを発見!
花穂の形がとっても可愛いこの花。大好きなものですから、パシャパシャカメラで撮っておりましたら、植木管理のおじさまが、「あっちに珍しいのがあるよ」って教えてくれたんです。

行ってみたら、なるほど、赤花ばかりのなかで、一株だけ白花が! こりゃァ確かに珍しい!!
ちょっとピンぼけ気味ですが、後ろの赤花とくらべてみて下さい!


こんな小さい花ですけど、ランの仲間なんですね~。

第11回 『音の会』のお知らせ

2009年06月21日 | 芝居
一、鳴物・長唄 『雨の四季』
              囃子 望月 太左一郎
                 望月 太  州
                 望月 太喜十朗
                 望月    徹
                 望月 太喜之助
   長唄 尾上菊五郎劇団音楽部


一、義太夫 『妹背山婦女庭訓』
           道行恋苧環 竹本 愛太夫
                 竹本 豊太夫
                 竹本 蔵太夫
                 
                 豊澤 勝二郎
                 鶴澤 祐 二
                 鶴澤 翔 也

    岡村柿 紅=作
    中村勘三郎=監修
一、舞 踊 『棒しばり』
               笛 増田 桂 一(三日)
               笛 田中 傅十郎(四日)
              小鼓 望月 太左一郎
              小鼓 古寺 正 憲(三日)
              小鼓 香坂 卓 治(四日)
              立鼓 田中 傅九郎
              大鼓 田中 源太郎
              太鼓 田中 佐吉郎

            次郎冠者 澤村 國 矢
            太郎冠者 市川 左字郎
           曽根松兵衛 中村 蝶八郎 


8月3日(月)・4日(火) 12時開演

一般=2,000円/学生=1,400円

前売り発売中!

国立劇場チケットセンター
0570-07-9900
03-3230-3000(PHS・IP電話)



私は、『棒しばりの』後見でお手伝いさせて頂きます。
大勢のお出ましを、お待ち申し上げております!

何人座れるかな?

2009年06月19日 | 芝居
『角力場』の幕開き、私と京三郎さんの<町の女>が腰掛けている“床几”。
歌舞伎の色々な演目で見ることができる、ベンチシート…。

歌舞伎座では、床几は大道具ではなく、<楽屋番>さんの管轄。設置も撤収もメンテナンスも行います(赤い毛氈がかかっているのも同様ですよ)。作るのは別の業者さんだそうで。
横幅はどれもだいたい同じですが、縦幅(奥行き)は、演目や使い方によって変わることも。上に人が立ったり、ボリュームのある衣裳を着た役者が座る場合は、広めのものになることが多いですね。

まだ立役の頃、『俄獅子』の所作ダテで、床几の上でトンボを返るのを勉強させて頂きました。幅も広いものでしたし、より頑丈にできているものですので、絶対大丈夫なハズなのですが、ちょっと足場が高くなるだけでなんだか感覚が違う…。25日間、かなり緊張いたしました~。
昔の先輩がたは、普通の幅のでもヒョイッと返っていらしたと伺いました。すごいことですよ、本当に!

ちなみに今月のこの床几、後半で、脚がバラけてペシャンコになります。後見の方が操作するまで絶対大丈夫なハズなのですけれど、何かおきたら…と思うと、実はとても不安を感じながらお茶を飲んでいるのでございます。

オーダーメイドです

2009年06月17日 | 芝居
今日は勉強会の<鬘合わせ>がいっせいに始まりました。
銅金の土台を作る鬘屋さんと、植えられた髪を結う床山さんと打ち合わせながら、生え際のライン<刳(く)り形>を決めてゆきます。
この度私は『双面』の<渡し守おしず>ということで、“眉なし”です。眉の有る無しによっても<刳り形>はかわりますので、本番に近い化粧をして、鬘合わせに臨みました。

私どもの勉強会のために、床山さん、鬘屋さん、そしてこれからは衣裳さん小道具さん大道具さん…。様々な分野のスタッフの皆様がお忙しい中働いて下さる。本当に有難いことでございます。
感謝の気持ちを忘れず、謙虚に勤めること。
大役をさせて頂くことで、ついつい舞い上がりがちになるものですが、よくよく自戒して、勉強させて頂きます。

スタミナ勝負もあと半分

2009年06月16日 | 芝居
歌舞伎座6月興行も、15日に<中日>を迎え、ようやく折り返しとなりました。なんだか今月は日が経つのが遅く感じられ、ずいぶん長く思われます…。

舞台に集中することは当然ながら、そろそろ勉強会の準備にも本腰を入れてとりかからなねばならなくなってきました。お稽古のはもとより、事務的な作業がこれからは目白押しです。
一般前売りも先日からはじまりました。好調のようで、有難く思っております。この勢いで、お一人でも多くの方々がお申し込み下さるよう、切に願う次第です。良い席はお早めに!

数年前にも実験的にやってみた、『合同公演ブログ』を、今年もやってみようかなと思案中です。色々な角度から、私どもの勉強会を知って頂きたい、お芝居を楽しむきっかけになって欲しいと思います。企画をいろいろ考えておりますが、皆様からのご希望などございましたら、是非とも伺わせて頂きたいです。

連日の夜半の豪雨、大変でしたね。うっとしい季節、舞台もムシムシしてきていますが、皆様体調にはくれぐれもお気をつけて。

なるほど…

2009年06月15日 | 芝居
『女殺油地獄』大詰「豊島屋」の場で、掛け取りからいったん戻った七左衛門が女房お吉の進める酒を飲むくだりで、
「肴も盃もいらぬ “なかがさ”添えて持っておじゃ」
という台詞がございますが、この“なかがさ”の意味がよくわからなかったので調べてみました。

なかがさ、は<中蓋>という字をあてるそうで、「中椀の蓋」という意味と、「中くらいの大きさの盃」という意味があるそうですね。
七左衛門の台詞の場合では、肴も盃もいらぬ、といっていますから、この場合は、お椀の蓋のことを指しているのでしょう。
お猪口でちびちび飲む時間はないから、グイッとやってしまおうと思ったのでしょうかね。お椀の蓋で酒を飲むということ、昔はよくあったのかな?

小道具でも、ちゃんとお椀の蓋になっています。
お酒が入っている器も、なかなか面白いですね。