梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

田草月稽古場便り・3

2009年04月30日 | 芝居
『加賀鳶』の<総ざらい>、そして『毛剃』の<初日通り舞台稽古>です。

舞台に出てみないと、やってみないとわからないことが多々ある<仲居>のお仕事。滅茶苦茶になることもなくすみまして、安心いたしました(やってる最中はドキドキでしたけどね)。もう少し段取りを整理しなくてはなりませんが、仲間とよく打ち合わせて、初日に臨みます。

序幕の海上の場は、毛剃の<汐見の見得>が有名ですが、歌舞伎座の大舞台いっぱいに、丸ものの船が動く様は、なかなかの迫力です! 今日生まれて初めて生で見ることができました。…度々かかる狂言ではないだけに、これを機会に、色々と勉強させて頂きたいと思います。

              ◯

今日は後輩と、歌舞伎座近くの<能登半島 時代屋>というお店で食事をいたしましたが、空輸で入ってくる石川の新鮮な食材は、どれもとっても美味しかったです。ゲンゲの天ぷら、白海老の素揚げ。ウマヅラハギの肝和えなんぞ、食べて幸せを感じる旨味とコク…。昼の部にちなんでお酒は<加賀鳶>。またまた盃を重ねてしまいました。

田草月稽古場便り・2

2009年04月29日 | 芝居
『暫』『毛剃』の<総ざらい>に、『加賀鳶』2回目の<附立>でした。

今日の『毛剃』は、仲居の段取りがだいぶまとまりまして、ほっといたしました。あとは、稽古場ではわからない、本舞台での居所や、小道具が入ってのやりとりがどうなるか。これは正直明日の舞台稽古までわからないものです。ここまで落ち着いたことを、まずは良しといたしましょう。…明日の課題は<臨機応変>です!

『加賀鳶』。道玄と梅吉は、音羽屋(菊五郎)さんが初役でお勤めになりますが、師匠の松蔵は2回目です。
昨日は私が出ている『毛剃』と同時進行のお稽古だったので、ろくろく立ち会えませんでしたが、今日は道玄が松蔵にやりこめられる「質見世」の場も拝見できました。
…このお芝居にかぎらず世話物のお芝居は、下座の合方と密接にからみあった、台詞回しや演技のメリハリが大変面白いものですが、お稽古場ですと、普段は黒御簾の中にいらっしゃる三味線方の皆様が、演者のすぐそばにお姿を見せて演奏されます。たまたま私がお稽古を拝見していた場所が、そのお三味線方に近い場所だったのですが、主演者の演技に合わせて、強弱緩急を自在に変化させながら弾かれる姿がとても印象的でした。ご自身のイキと俳優のイキが見事にのってゆく感じ。本当に気持ちがよいものですね。

            ◯

…夕方にはお稽古が終わりましたので、浅草で林家彦丸さんと落ち合い「小柳」さんで一献。
相変わらず落語の話、芝居の話、たまに与太話。気がつきゃ5時間呑んでました…。

田草月稽古場便り・1

2009年04月28日 | 芝居
<俳優祭>の賑わいが夢まぼろしだったのかと思うくらい、一気に通常モードに切り替わっての歌舞伎座5月公演のお稽古。
本日は『暫』『加賀鳶』『毛剃』の<附立>でした。

『暫』の侍女も、『毛剃』の仲居も初めてのお役ですが、『暫』の方は、何度か舞台も拝見し、また仕丁役では1度出演した経験もありましたので、段取りくらいは記憶にありました。同じ役の先輩方に合わせてゆきながら、細かい部分を確認させていただきました。座っている時間が長いので痺れがきれないか心配です。途中でいったん立って舞台を一回りいたしますが、ここで粗相をしたらエラいこと。最後は最後で花道の引っ込みもありますし…。
間近に成田屋(海老蔵)さんをはじめとする大勢の方々のお芝居を拝見できる嬉しさはございますが、そっちにばかり気を取られて、いざ立とうと思ったら! なんてことがないよう注意しなくては。

一方『毛剃』の方は、これまで全然ご縁のなかったお芝居でございまして、ビデオを拝見したくらいでは、細かい段取り等わかるはずもなく(ビデオは当然ながら主演者を中心にしたカメラワークなので、我々が勤めるお役の動きは、画面から見切れていることが多いものでして…)、今日のお稽古はアセアセしてしまいました。お芝居の流れを今一度確認し、明日は落ち着いてできるよう努力いたします。

            ◯

さて、本日は夕刻から国立劇場にて<芸の真髄シリーズ>の本番。
花柳寿輔師と師匠の『黒塚』、無事に終わりました!
耿耿と光る月の下、一面の芒の原という舞台に、心に沁みわたる長唄の名曲が響き渡る清浄感あふれる世界。そのなかに、私も裃後見として身を置いたわけですが、至福といったら大袈裟かもしれませんが、ああ、よい時間を過ごさせていただいているなァと、心から思いました。
歌舞伎の興行では、久しくお目にかからなくなっておりますのが残念でしたが、こうして携わらせて頂き、本当に懐かしく、また嬉しく感じました。


俳優祭!!

2009年04月27日 | 芝居
第35回<俳優祭>、大盛況のうちに打ち出すことができました! ご来場下さいました皆々様へ、心より御礼申し上げます!!
初めてお手伝いさせて頂きました<幕間シアター>でしたが、お陰様で、昼夜で計4回行った公演は、売り出した途端に売り切れるほどの盛況で、関係者一同驚いておりました。大勢の観客の熱気にあてられながらの仕事は大変ではございますが、とても楽しく、ウキウキした気持ちになるもので、これぞ俳優祭の醍醐味とも申せましょう。
今回の出演者は、上演順に中村京妙さん、市川段之さん、上村吉弥さん、中村蝶十郎さん、そして中村歌江さんの5人でした。全てメインディッシュ、まさに盛りだくさんの狂言立てでした!

…夜に<芸の真髄シリーズ>『黒塚』の舞台稽古がございましたので、最後の最後まで<俳優祭>に携われませんでしたが、沢山の方からあたたかいお言葉を頂戴いたしまして、元気をフルチャージすることができました。本当に嬉しいです! 有り難うございました!

緊張ばかりでしたが

2009年04月26日 | 芝居
本日、歌舞伎座卯月興行<四月大歌舞伎>、千穐楽でございました。

初日近辺は本当にどうなるのだろうと不安だった『伽羅先代萩』「御殿」の腰元でございますが、多々反省は残りましたが、25日間の中で、少しは前進できたのではないかと思っております。
衣裳の扱いですとか、歩き方ですとか座り方ですとか、基本的なことをきちんとする大変さを痛感したひと月でした。きちんと勤めるために、自分はどうすればよいのか。細かい話かもしれませんが、衣裳の着方ひとつで、動き方が変わってしまうということもあり、毎日色々と試しながら勤めさせて頂きました。

おかげさまで、衣裳の扱いは後半にゆくにつれてだいぶ慣れることができました。まだまだ納得いかないままで終わってしまいましたが、これは今後の色々なお役を勤めさせて頂く中で、意識して勉強をしてゆく所存です。
…一つの作品に携わるとき、どんな心で臨まなくてはならないのか、どれだけ技術と経験を積んでおかなくてはならないのか。
今回は分不相応なお役目を頂戴してしまいました。申し訳ない限りです。

もっともっと女形の様々を学んでから、再び挑戦させて頂きたい。
改めて、自分の今のレベルが判明した、そんな気がいたしております。


           ◯


千穐楽が目出度く打ち出したあとは、明日開催の<俳優祭>『灰被姫~賑木挽町戯場始~』の舞台稽古でございます。
私たち高砂屋一門は、この演し物には出演いたしません。当日はバタバタして絶対にお舞台を拝見できないので、今日拝見させて頂きました。
アァ、いろいろ喋りたいけどネタバレになってしまう! 見どころ満載、なんでもアリの爆笑世界、とだけ申し述べておきますね。
いよいよ、現在の建物では最後となる<俳優祭>が開幕です!
正面チケット売り場には、すでに当日券を求める徹夜組の方々が! 有難い限りです。お風邪を召しませぬように…。
それでは、ご来場頂く皆様、お会いできましたら、ロビーで…。
<幕間シアター>でお持ち申し上げております。

お悔やみ申し上げます

2009年04月25日 | 芝居
成田屋(團十郎)さんのご一門であられた、市川升寿さんがお亡くなりになりました。74歳でいらっしゃいました。

成田屋さんのお舞台で後見をお勤めになるお姿を、度々拝見してまいりましたが、平成19年の團菊祭での『勧進帳』では、升寿さんは弁慶のシン後見。私は義経の後見でご一緒させて頂き、間近でそのお仕事ぶりを拝見することが叶いました。段取り、こなし、シンへの心の配りよう、決して目立たず、さりげないのですがきっちりとしたお仕事ぶりは、ただただ「すごい」のひと言に尽きました。どうしたらああいうふうに舞台に「いる」ことができるのだろうと考えずにはいられず、ひるがえって、自分の未熟さを痛感させられもいたしました。

直接舞台のことを教わる機会を得なかったことが悔やまれてなりません。大切な先輩が、またお一人旅立たれました。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

合掌





お稽古やお祝いやお知らせや

2009年04月24日 | 芝居
27日開催の『俳優祭』で上演される長唄舞踊「狸八島」の<舞台稽古>が、終演後の歌舞伎座舞台にて行われました。
詳細は、観てのお楽しみ! でございますが、狸と兎の合戦が、ユーモラスに描かれた17、8分の作品。おとぎ話のような、大らかな楽しさでいっぱいです。
師匠が狸か兎かも、当日までのお楽しみ…。

さて、本日の歌舞伎座でお目出度いことがひとつ。山城屋(坂田藤十郎)さんが、『曾根崎心中』のお初役上演1300回を達成! 歌舞伎としてこの近松作品が初演されたのが昭和28年。それから50余年の歳月を越えてのこのたびの快挙。
偶然にも、1000回記念の舞台を中座の客席から拝見した身といたしまして、心よりお祝いを申し上げます。

それから…。
来月の私、昼の部序幕『暫』の<侍女>にも出演させて頂くことになりました。『毛剃』の仲居ともども初めてのお役です。
今まで仕丁でしか出たことがございません。心新たに、このお芝居を勉強させて頂きます!

黒衣は黒衣でも

2009年04月23日 | 芝居
今月の歌舞伎座は、昼夜に<差し出し>が使われる狂言が上演されています。
昼は『伽羅先代萩』の「床下」、
夜は『吉田屋』。

長い柄の先に蝋燭を立て、その炎で、主演者を照らし出す<差し出し>。
それぞれ、<仁木弾正の“引っ込み”>、<伊左衛門の“出”>を効果的に印象づける歌舞伎独自の演出法ですね。
2人の後見が、主演者の前後について照らすのが基本的なかたち。古式にのっとれば、後見はずっと“蹲踞”の体勢で勤めますが、片膝をついて勤めるやり方もございます。

私はこのお役目は勤めたことはございませんが、伺いますと、主演者のイキに合わせる難しさや、火が途中で消えてしまう心配もあり、なかなか気を遣うお仕事のようですね。(蹲踞で勤める場合は足の辛さも相当なものだそうで…)

さて、この後見は、自前の黒衣ではなく、衣裳方が用意する<繻子の黒衣>を着用します。
頭巾、着付、腹掛け、手甲、紐付が、繻子でできておりまして、足袋だけは普通の木綿の黒足袋です。
着付は、赤の紐を結んで合わせるだけで、細帯は締めません。頭巾は、常ですと左右の角を中に折り込むところを、わざと折り込まずに出しておきます。
普通の黒衣ではない、特別な役目をしている後見なんですよ、ということを表しているわけですが、<人形振り>の後見ですとか、以前お話しさせて頂きました<口上ぶれ>の後見も、同様の扮装となります。
(下の写真を御覧下さい)

…「床下」の仁木の引っ込みでは、“宙を行くように”と伝わっている仁木の動きに合わせて、差し出しを上下させるという心得もあるそうです。シンの芝居を助け、盛り上げる、大切な舞台効果なのですね!


ぶらり湯屋へ

2009年04月22日 | 芝居
今月は楽屋でもお風呂に入っておりますのに、夜になってから、近所を散歩がてら銭湯に行くことがよくあります。
そう遠くない距離に2軒あるものですから、今日はここにしようかな、と気の向くまま。広い湯船にゆっくり浸かり、ボーッとするのがなにより幸せを感じるひと時…。

夜の街角散歩は、昼間気がつかないモノがいろいろ見えてくるのが面白い。とくに呑み屋さんは、日が高いうちだと存在自体案外気がつかないものなのですが、夜になってみると、オヤッと思うところにイイ感じの赤提灯がぶら下がっていたりするんですよね。
<下町グルメ>などという特集があると必ず載るようなお店があったり、食べ物屋さんはけっこういいお店がありますヨ。

『鬼平犯科帳』の登場人物、岸井左馬之助が寄宿した地でもあり(当時は“村”だった)、鶴屋南北のお墓もあり、来月演舞場で上演の『お染の七役』の序幕<柳島妙見>もほど近い、意外とお芝居ゆかりのところでもあります。

…銭湯からほど近いところに、八重桜が咲いていました。


決まりました

2009年04月21日 | 芝居
歌舞伎座連続出演7ヶ月目となる、来月の<五月大歌舞伎>におきまして、成田屋(團十郎)さんと山城屋(藤十郎)さんの顔合わせによります『毛剃』の<仲居>を勤めさせて頂くことになりました。
恥ずかしながら、一度も生で見たことがない演目です。自分のお役がどんなお仕事をするのか、これから予習いたします。

歌舞伎座では襲名披露以来となる成田屋(海老蔵)さんの『暫』、音羽屋(菊五郎)さん初役の『加賀鳶』、久しぶりの上演という宇野信夫・作『神田ばやし』。舞踊は『寿猩々』『手習子』、これまた久しぶりの『夕立』に『おしどり』。
皐月の木挽町、爽やかに賑やかに! どうぞお楽しみに…。

ところで、数日前から当ブログの左欄にできましたコーナー、お気づきでしょうか?
《gremz》というサイトから持ってきたのですが、画面内の苗が、更新状況に合わせて成長しまして、無事成木になったあかつきには、実際の苗木が世界の緑化対策地域に植樹されるんだそうです。
エコだとかボランティアだとかには、本当に無縁なものですから、えらそうなことは申せませんけれど、スクスク育つ(であろう)苗木ちゃんを、見守るだけでも楽しいんじゃないかな。
こちらもよろしくお願いいたします。

俳優祭の翌日です

2009年04月20日 | 芝居
夕方から、28日開催の《芸の真髄シリーズ》で上演される『黒塚』のお稽古がございまして、私も『伽羅先代萩』の出番を終えてから伺いました。
花柳壽輔師の老女岩手実ハ鬼女、師匠梅玉の阿闍梨祐慶。師匠のこのお役は、平成13年2月大阪松竹座、澤瀉屋(猿之助)さんとご一緒して以来ということで、もうそんなに経ったのかと改めて思いました。

この作品の、曲の素晴らしさをひしひしと感じます。長唄を基調に、お琴や尺八も入った調べには、生み出された時代背景の故か、どこかモダンなところもあり、ドラマチックで、哀れがあって、しみじみと秋の陸奥の寂しさ、曠野の月夜の悲しさを感じさせられます。

今月はじめのお稽古に立ち会わせて頂いたとき、なぜか大変懐かしいもののように思えまして、自分でも驚いたのですけれど、第2景、見渡す限りの芒の原、弓張月のもとでの老女の踊りなど、救いを求める心、清い心、無の心、描き出す世界は本当に深いものがあるなあと思いました。今回、そんな素敵な素敵な作品に携わらせて頂けることが嬉しゅうございます。

芸の真髄シリーズ》、同時に上演される『隅田川』は、藤間紫師の急逝によりまして班女の前を大和屋(玉三郎)さんがお勤めになります。また、『万歳』は藤間可笑(市川笑三郎)さん、藤間紫陽(市川猿弥)さんの二人立ちと変更になりました。
改めて、お知らせ申し上げます。


小文にてご報告

2009年04月19日 | 芝居
あと一週間で『俳優祭』がやってまいりますが、今回私は<幕間シアター>のお手伝いをさせて頂くことになりました。
普段の舞台とは、ガラリと趣きをかえた“舞踊ショー”。毎年楽しみにされていらっしゃる方も多いかと存じます。
初めて携わらせていただくので、どんなふうな仕事となるかさっぱりわかりませんが、ご出演の皆様(お顔ぶれは当日のお楽しみ!)とともに、大いに盛り上げたいと思っております。



月島で

2009年04月18日 | 芝居
月島にある『魚仁』という居酒屋さんに初めてお邪魔しました。
七時近くに行ったら、たいそうな行列でして、20分近く待ってから入店。入店と行っても、通路にはみ出るようにしつらえられたテーブル席でしたので、夜風にあたりながらの食事となりましたが…。

ボリューム満点でお値段は良心的、しかもどれも美味しい! これなら並んででも入りたくなるのがわかります。やっぱりお魚料理が新鮮でいいですネ。一緒にいった後輩と、しっかり呑んで食べても「これだけでいいの?」というお勘定。ハァ~有難い限りです。

お店に向う途中、清澄通り沿いにある手ぬぐいと和雑貨のお店『こっさ。』も、可愛い小物がいっぱいあって面白いです。和柄に囲まれると安心するのは職業病でしょうか?


ワクワクする曲

2009年04月17日 | 芝居
今月楽屋入りいたしますのが、「花水橋」が開いてしばらくたったくらいなので、舞台ではちょうど立廻りが始まっている頃です。
黒羽二重の着物を尻端折り、蝋色の刀の下げ緒を襷にして、黒の手拭をかぶった“いかにも”な刺客が、足利頼兼、そして相撲取り絹川谷蔵と繰り広げる二つの立廻りは、使われている下座音楽がとても印象的ですね。

最初の頼兼との立廻りは、至極鷹揚な、古風な手順が昔から伝わっております。下座は「待つ宵」と申しておりまして。ゆったりと、そして色っぽい歌詞で、廓通いの殿様が見せる立廻りにはぴったりです。


待つ宵は 三味線弾いて 辛気節
泣いて明かせし後朝(きぬぎぬ)の 袖や袂よ 恨みわび
末はどうなることじゃやら よいやさ よいやさ



一転、谷蔵との立廻りは、キビキビとした勢いのあるものになります。下座は「撞いてくりゃんな」。清元の『三社祭』から移したものだそうです。


撞いてくりゃんな 八幡鐘よ 
可愛いお人の目を覚ます お人の人の 可愛いお人の 人の目を覚ます
サァサ なんとしょうか どうしょうかいな


「撞いてくりゃんな」を聞くといつも思い出しますのは、私の初舞台のときのことでございます。
平成10年5月の歌舞伎座での、初めてのお役が音羽屋(菊五郎)さんの『野晒悟助』の<提婆の子分>でございまして、この芝居の大詰に、悟助と大立回りをみせる大勢のカラミの中の一人でした。
この立廻りでも「撞いてくりゃんな」が使われておりました。緊張のしっぱなしでしたけれど、軽快で、威勢のいいこの曲にノせられて、本興行はじめてのトンボも元気にひと月勤めることができました。



膨大なお仕事のその一角

2009年04月15日 | 芝居
早稲田大学 演劇博物館での《六世歌右衛門展 ー新作と復活狂言ー》を、先輩方と拝見してまいりました。
『むすめごのみ帯取池』『切支丹道成寺』『黒塚物語』『建礼門院』『細川ガラシャ夫人』はじめ、枚挙にいとまがない新作の数々、《莟会》での『二人夕霧』や『日蓮上人御法海』、あるいは国立劇場での『玉藻前㬢袂』『阿国御前化粧鏡』などといった古典の復活。新しいものを次々生み出してゆかれた大旦那の足跡を、舞台写真はもとより、実際着用された衣裳や小道具、台本、プログラム等からたどるという企画でございます。

残された貴重な資料を、ご一緒させて頂いた先輩方の思い出話を聞きながら拝見できるという、願ってもかなわないような幸せなひととき。大変勉強になりました!
大旦那が昭和51年に復活なさった『金幣猿島都』の映像も放映されておりましたが、大旦那扮する、平将門と滝夜叉姫の合体した霊が花道を引っ込むその凄みといったらありません! 大時代に、こってりと、お役の本分を余すところなく描き尽くしたお姿に、ただただ感服いたしました。

岡本町のご自宅から移植された〈うこん桜〉も拝見することができました。黄緑色の花は今がギリギリの盛りで、おりしもの強風にも負けずに咲いておりました。