梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’08 開幕です!

2008年06月30日 | 芝居
【大田区民ホール アプリコ】にて、<公文協中央コース>の初日の舞台が開きました。
さっそくの昼夜2回公演。仕事の段取りがどうなるか、空き時間はどれくらいとれるか(お昼ご飯はできればゆっくり食べたい!)、などなど、これからのひと月、どんな1日のサイクルになるかがわかる初日の楽屋は、皆々どこかソワソワ、バタバタしてしまいます。
お陰様でどの演目でのお仕事も大過なく勤められましたが、どうも『神田祭』が終わるまでは、一息つけそうにありません。楽屋廊下に設置されたケータリングサービスで、お茶を飲みお菓子をつまむのが精々といったところです。
いっぱい働けるのは有難いことですが、忘れてはいけない<キッカケもの>ばかりなので、気を張り続けていないといけないのが、根がズボラでいい加減な私には大変なプレッシャーです…。
明日からも油断せずに頑張ります。

夜の部終演後は早速の“撤収作業”。昨日出したばかりなのにね。でも明日からは、朝開けたのをその日のうちに…。荷開け荷造りは、公演中にどんどん洗練かつスピーディーになるものです。

ここの演目についてのお話は落ち着いてからということで、まずは『梅之旅日記’08』の1ページ目でございました。
写真は「暑中につき無礼講」の貼り出しです。巡業に限らず、夏場の歌舞伎公演では、たいていこの張り紙が掲示されます。楽屋内でのみだしなみや行儀について、時節がら少々崩れてもおかまいなしですよ、という意味ですけれど、だからといって、ここぞとばかりにルーズになる人は、ついぞ見たことがございませんので、念のため。

梅之旅日記’08 前夜編

2008年06月29日 | 芝居
今回の<公文協中央コース巡業>のふりだしは、蒲田駅からほど近い【大田区民ホール アプリコ】。一昨年の同コースでは千穐楽にお邪魔した会館です。

楽屋のつくりや舞台の寸法など、一度でも経験しているところでの仕事は安心して勤められます。そういう意味で、今回の道中は行ったことのある所ばかりですので、有難いと言えば有難く、一方ではドキドキがないぶん刺激がない!? とも申せましょう。
お昼から楽屋作り、午後2時から『橋弁慶』『口上』『毛谷村』『神田祭』と通して<舞台稽古>です。
なんだかんだで、全演目に関わっておりまして、ず~っと舞台か舞台裏か師匠の楽屋にいた1日でした。自分の楽屋にいたのは、『神田祭』の後見になるために、ヘアセットをしたときくらいでしたよ、ホントに…。

『毛谷村』では、弥三松役で子役さんが出演いたします。最近は、どんな公演でも<子役さんはダブルキャスト>になっておりまして、今回も興行の前、後半に分かれて2人の男のコが舞台を勤めます。
舞台稽古は今日1回しかありませんが、2人ともに舞台に慣れるよう、公平にお稽古をするために、まず1人目が通し稽古に出て、それからもう1人が、弥三松が登場するくだりのみのお稽古をいたしました。鬘をかぶったり衣裳を着たり、花道を歩くということだけでも、稽古場と舞台とは大きく勝手が変わるものです。二人とも、自分の演技はちゃんと舞台上でできましたから、これで大丈夫ですね~。

師匠の『神田祭』。後見としての用事はとても少なく、舞台滞在時間も一瞬の出来事ですので、いたかいなかったのかわからないくらいな存在になりたいと切に思っております。
清元の浄瑠璃や、賑やかな合方、お囃子に合わせた所作事の立廻りが後半の見どころになりますが、今日のお稽古ではそういう部分が三味線やお囃子の間にきちっと嵌まるよう、藤間の御宗家もいろいろとおっしゃって下さいました。
弟弟子の梅秋がそのカラミに出させて頂いておりまして、返り越しも含めてトンボで頑張っております。彼をはじめ<若い者>の皆様には、怪我なくひと月の舞台を勤められますよう、心より祈っております。

さあ、博多座に続き6月中に2回目の初日があく<公文協中央コース>。各地のお客様にお会いできますことを楽しみにしております。

昨日と今日の日記

2008年06月28日 | 芝居
《6月27日》

朝八時過ぎの飛行機で東京へ。そのまま国立劇場へ直行しまして、勉強会の事務作業をいたしましたが、ひと月東京を離れたツケは大きかったです~。6時間机にかじりついて、もう一山がなかなか終わりません…。巡業の休演日に持ち越しです。

仕事を残していながら大変申し訳ない話ですが、6時半からは、かねて約束をしていた、渋谷シアターコクーンでの『夏祭浪花鑑』を拝見に。実は私、コクーン歌舞伎を観客の皆様と一緒に拝見するのは初めてです(これまでは舞台稽古にお邪魔させて頂いておりました)。
マァお客様の熱気といったら! お芝居に<参加している>といっても過言ではない、エネルギッシュな、活き活きとした客席の反応の中で、2時間半の物語は加速度的に進んでゆきます。
皆様ご存知の『夏祭』の世界。義、侠、意地の世界で生きる男たちの生き様が、この劇場ならではの装置、演出、演技の中で、くっきりと描かれます。なぜ団七が舅を殺したのか、なぜお辰は自らの顔に焼きごてをあてたのか、登場人物全ての行動に、自然に共感できる。痛いくらいに解る。そういう体験を、歌舞伎の舞台がお客様に対して与えられるということの凄さを、改めて感じました。
15分に及ぶカーテンコール! 総立ちのお客様! 出演者のお一人がおっしゃるには、「舞台から見る客席の様子を見せてあげたい」…。


《6月28日》

お昼前から歌舞伎座楽屋口にて、はるばる博多から陸路を経由して帰ってきた荷物の荷下ろし、そしてそのまま中央コース巡業への荷出し。あのトラックは何トン車なのかしら? ボテ、スーツケース、段ボール箱にクリアケース、俳優、衣裳、床山からの何百という荷物が全て降ろされるまでには、約1時間もかかりました。
それから床屋さんで散髪、午後4時半からは<公文協中央コース巡業>のお稽古がはじまりました。

この度私は師匠の舞踊『神田祭』の着付後見のみでございますが、なにせ少人数の座組ですので、他の演目でも舞台裏でのお手伝いをさせて頂くことになりました。萬屋(錦之助)さんの襲名ご披露の『毛谷村』は、師匠の六助で度々携わってきた演目で馴染み深い演目ですので、少しでもお力になれればと存じます。

この度の『神田祭』は、鳶頭の一人立ちの振付(藤間の御宗家)です。今回のために構成を変えているところもありますので、是非皆様にご覧頂きたく存じますが、若い者のカラミも出、獅子舞も登場しまして、打ち出しの狂言にふさわしい大変華やかな一幕となっております、どうぞお楽しみに!

梅之博多日記・有り難うございました

2008年06月26日 | 芝居
本日無事に、博多座『六月大歌舞伎』の千穐楽を迎えることができました。

『娘道成寺』の所化と『髪結新三』の通行の女ということで、ずっと座っているのと、一瞬で駆け抜けるのと、両極端なお役を勤めたひと月。所化の花笠踊りは何度させて頂きましても難しく、また通行の女では、どうしたらその場その状況らしく見えるか、悩まされました。
大過なく25日の舞台を勤められ、ホッといたしておりますが、以前にくらべましたら、所化で座っている時間が苦にならなくなりまして、師匠の後見で、舞台に<控えて>いることが多くなってきたことも影響しているのかしら? なんて思ったりもしておりますが、こういう小さなことでも、やはり昔の私とは変わってきたんだなァと思うと、10年の歳月は無駄ではなかったのかな…なんて。これからも、作らずに、考えすぎずに、力を抜いて自然な状態で舞台にいられるように、心身ともに修行してゆく所存です。

今月はいっぺんも風邪をひくこともなく、よいコンディションで生活できました。チョイとお酒を頂きすぎたかな、という日はありましたが、先輩方や仲間たちと、楽屋でもオモテでも、楽しい時間を過ごすことができ、また色々と話をすることができたこと、有難く思っております。
明日は午前中に東京に戻り、国立劇場へ直行して勉強会の準備。夜は先輩が出演なさっている、シアターコクーン『夏祭浪花鑑』を拝見に…って、体力続くのかしら!?

なにはともあれ、これにて2冊目の『梅之博多日記』は終了です。
そしてお次ぎは3冊目の『梅之巡業日記』のはじまり…。
誰もいない自宅はどうなることでしょう!?

梅之博多日記・食べどころ総決算

2008年06月25日 | 芝居
今月は前半は自炊をがんばり(トンカツまで揚げてしまった)、後半は誘ったり誘われたりの外食続き。節約になったのかならなかったのかよくわからない食生活でした。

いよいよ明日千穐楽を迎える今晩は、今回お邪魔したお店をまとめてご紹介させて頂きますね。

上川端商店街を博多座側から入って、キャナルシティ側に抜けるちょっと手前の右側にあるダイニングが『仏伊家(ふいうち)』。店名通り、フレンチやイタリアンのメニューを気楽に頂けます。こじんまりしたお店ですが、それだからこそできる親切なサービスにくつろげました。パスタやリゾットも、ひとつ手間をかけた丁寧な味で嬉しくなりますよ。

その商店街を抜けてから右に折れますと、東国原知事の幟が立っていて、イイ匂いが漂ってくるお店があります。こちらは宮崎地鶏の『嵐坊(らんぼう)』です。
新鮮なタタキとか旨味たっぷりの炭火焼、タルタルソースが絶品のチキン南蛮など、鶏尽くしが楽しめます。なんとこのお店、今月博多座にも出演している、音羽屋(菊五郎)さんのところのお弟子さんの、中学・高校の後輩が働いているのです。不思議な偶然ですね。

バトミントンのあとに立ち寄ったバーが、親富孝通りの北よりにある『Off Broadway』で、懐かしの80年代ミュージック(洋)で雰囲気抜群、手作りのハンバーガーが美味しいの何のって! すっかり顔なじみになっている後輩のおかげもあり、パンペロ(ラム)のロックですっかりご機嫌、楽しく過ごすことができました。

地元の人で大賑わいの焼き鳥『山笠』は冷泉公園そば。格安メニューで気楽に満腹&酔っぱらえるお店。鶏はもとより、酸味の利いたタレをさっとかけた豚足はプルップルの食感、あたりかまわずむしゃぶりつき、黒霧島(ありきたりなチョイスですが)で流し込む。居酒屋の愉しみですね。

前回お邪魔したもつ鍋の『越後屋』や韓国料理の『たもん』にも。懐かしい味に再会です。
…ホント博多は食に苦労しない街ですね~



梅之博多日記・目にも鮮やかな人工芝の緑

2008年06月22日 | 芝居
先ほどまで、ヤフードームでナイターを観ていました。
プロ野球じゃございませんよ、私たち歌舞伎の野球大会です。
役者、長唄さん・お囃子さん、狂言方さん、床山さんに付人さん、職種を越えての混成チームの紅白戦。きっちり2時間の楽しいゲーム。
初めて足を踏み入れたドームのグラウンドの広さといったら!
ものすごい開放感でした。

私のポジションは<応援>です。
はい、バットもグローブも握ったことがございません。
観ているだけで充分なのです。


梅之博多日記・運も不運も暦通り

2008年06月20日 | 芝居
『菅原伝授手習鑑 加茂堤』の幕切れ。
夫の桜丸から、無人の牛車を御所へひくよう任された八重は、すっかり休んでいる牛を立たせようと苦労しますが、車はちっとも動きません。

逢瀬の場に踏み込まれ、辱めを受けるよりはと都を落ち延びていった斎世親王と苅屋姫の安否も気がかり、逢瀬の手引きをした夫のことも心配、そんな一大事の中、急いで帰らなくてはいけないのに…!
千々に乱れる胸の内、八重はこんな台詞を言います。

八重 「めぐる月日は<不成就日(ふじょうじゅび)>か、お二人様の<凶会日(くえにち)>か、夫のためには<十方(じっぽう)暮れ>」
浄瑠璃「<鬼宿(きしゅく)>車を押し立てて <天赦(てんしゃ)><天一天上(てんいちてんじょう)>の お首尾はよかれ<神(かみ)よし>と 祈る心は<八専(はっせん)>の<黒日(くろび)>と<間日(まび)>のまだら牛 追い立ててこそ」

耳慣れない単語が出てきますが、調べてみますと、<>でくくった言葉はみな「暦の用語」であることがわかりました。「三隣亡」とか「一粒万倍日」とかは今もカレンダーに書かれていることがありますよね。

<不成就日>は何をしてもダメな日。
<凶会日>は吉事を行うと凶事に転じてしまう日。
<十方暮れ>は行いを慎んだ方がよい日。

対して、
<鬼宿>は吉日。
<天赦>は一番良い日。
<天一天上>はどの方位にも障りがない日。
<神よし>は神事を行うに吉の日。
<八専>は凶日と普通の日が交互に現れる12日間のことで、このうち普通の日が<間日>となる。
<黒日>は最悪の日。

専門的な語句を省いてご紹介しましたので、詳細は述べられませんでしたが、このことを踏まえて先に挙げたセリフや詞章を読みますと、何を言いたかったのかよく判りますね。
黒日と間日のまだら牛、なんて、よくできた詞章ですが、うっかりホルスタイン種を想像しないように…。
舞台の牛は、黒牛ですよ。

梅之博多日記・通行人の女のことで…

2008年06月18日 | 芝居
16日付の記事にコメントを頂戴しました<さくらひめ>様。

『髪結新三』での私の<通行人の女>ですが、昔からこの場の通行人は女でもほぼ<素面(すづら。いわばスッピンのこと)>で出ることになっておりまして、私も先人の教えに習い、白粉を使わない極薄の化粧しております。そのため私のもともと浅黒い地肌ほぼそのままで出ることになり、結果、貴方様から頂いたコメントのようなご指摘を受けてしまったのだと存じます。

この演目のような、ごくごく写実なお芝居では、その役<らしさ>を出す意味でも、<行儀>という面からも、脇役は立役でも女形でも、ほとんど化粧らしい化粧はいたしませんが、外に出ないわりには地黒な肌の私、海に行ってきたかのような肌をお客様にさらすのを心苦しく思っているのも正直なトコロなんです。
実際御覧になった方にどう見えているか、この度頂戴したコメントで初めて知ることができました。諸先輩方に伺った上で、もし可能ならば化粧の仕方を変えてみようと思います。また、これからは美白に取り組んでいかなければ!

大事なご意見をたまわり、心より御礼申し上げます。有り難うございました。

梅之博多日記・目指す敵は…

2008年06月15日 | 芝居
『対面』といえば思い浮かぶ意匠が、写真の<庵木瓜(いおりもっこう)>ですね。
今月師匠がお勤めになっていらっしゃる、工藤祐経の紋。祐経の衣裳はもとより、装置の壁面、煙草盆や脇息などの小道具にも、この模様があしらわれております。

この紋の成り立ちに、面白い説がございますのでご紹介いたします。なんでも、工藤氏の祖、藤原為憲(平安初期の人物)が<木工助(もくのすけ)>の官位を朝廷から賜った際、木“工”助の“藤”原氏なので“工藤”の姓を名乗るようになったのですが、造営、材木採集、職工の手配や管理という、いわば<家>に関係する職分ということで<庵>を描き、さらに<木工>の読み「もく」の洒落で「もっこう」を中に置いた、というのです。

ことの真相はわかりません(木瓜という模様自体、その成立、源流が定かでないそうです)が、これが本当だとしたら、なんともおおらかな話ではございませんか?

※こちらの手違いで写真の掲載が遅れてしまいましたことをお詫びいたします。

ちなみに、曽我兄弟の紋は<山形木瓜(やまがたもっこう)>。工藤家とはもともと近しい家ですから、紋にも共通するパーツがあるのです。

梅之博多日記・シャトルに翻弄され

2008年06月13日 | 芝居
行ってまいりましたバトミントン。
後輩、床山さん、付き人さんたち7名で天神の<ROUND 1>へ。
3組に分かれてダブルスを繰り返し、とにかく打ちまくる2時間半。
いや~楽しかったです!
巡業の合間に、公園や空き地でやるのもいいけれど、いちおうコートラインが引いてあって、ネットが張っているところで、ルール通りにやるというのは、気合いの入り方が違いますね。
床山の女の子が、打ったシャトルの速さといいコントロールといい、めっぽう上手くて驚いてたら、テニス部出身だということで…ナルホド。
私は無駄に動き回り走り回るばかりで、挙げ句の果てには「フォームがおかしい」と指摘される始末。いいじゃない、打ち返せれば! とムキになってみても、実際打ち返せないんだからお粗末な話で…。

とにかく、汗はたっぷりかきました。
まさしく<運動>でした。

終わってから飲んだ屋台のビールが美味しかったこと…ってそれじゃァ意味ないじゃない!

…交代で審判もいたしましたが、打たれたほうのチームに点を入れたり、誰が次にサービスするのか忘れてしまったりで、<脳力>もひどく衰えていることが判明しました。情けない話です。

(6月15日 記)

梅之博多日記・水着が似合うようにとまではいわないけど

2008年06月12日 | 芝居
ただ今私が滞在しておりますウィークリーマンションは、劇場から実に実に近い場所にございまして、通勤というよりもほんのプラプラ歩き。コンビニ、スーパー、薬局などもすぐそばなので、劇場以外ではちっとも歩いていません
時間だけはたっぷりあるので、お料理を張り切っちゃって何品もおかずを作ってしまい、夜は焼酎をお供にダラダラと食べ酔う日々。
これじゃあいけないなァ、と反省してます。
メタボは目前(もうなっているか)。
気がつくと、コンビニで「黒い烏龍茶」や「茶カテキンが入ってる飲料」に手が伸びている…。

「梅之さん、<運動>ですよ運動」と、後輩から言われていたのにね。
とりあえず、明日は仲間とバトミントンをしに行くことになりました。


梅之博多日記・小耳に聞いたあの唄は

2008年06月10日 | 芝居
歌舞伎におけるBGMともいわれる<黒御簾音楽>。とはいえ、BGMという以上の役割、効果を発揮する大切な存在です。
黒御簾で演奏される唄や三味線は長唄さんが担当なさいます。だからということもあるのでしょうが、有名な長唄の舞踊曲のひとくさりが、お芝居の下座として使われることはしばしばです(下座専用の曲ももちろん沢山あります)。

よく引き合いに出されますけれど、今月も夜の部で上演されております『弁天娘女男白浪』では、幕開きが「向い小山のしちく竹…」で『越後獅子』、弁天小僧と南郷の出は「繻子の袴のひだ取るよりも…」は『鷺娘』ですね。

『菅原伝授手習鑑 加茂堤』でも、お馴染みの曲が使われておりました。桜丸と仕丁との立廻りのときに、「主のためとて天神様に願掛けて 梅を断ちます めいはく…」と華やかに唄いますが、コレは『手習子』の最後の部分ですね。
この場には登場しませんけれど、外題通り、菅原道真が中心となる狂言で、<天神様>が下座に出てくる。面白いですね。

知っている曲が聞こえてくると、「オッ、これは」と思われる方もいらっしゃると思います。

梅之博多日記・暇つぶし以外のナニモノでもなく

2008年06月09日 | 芝居
ウィークリーマンション生活でもいつものように読書をしたくなるものですが、本屋さんが近くになかったりすると(活字読みたい!)という思いで、結構イライラしてしまいます。
そういう意味で、最近のコンビニでの本の取り揃えの豊富さは有難いですね。むしろ“ここじゃなかったら絶対買わないだろう”的な本がいろいろあるのが楽しいのです(しかも安いし)。

『日本“怪奇”伝説』『バカ画像五輪ピック』『画像バカ一代』『日本の女殺人犯101』『放送禁止映像全真相』

立て続けに買ってしまいました。
とても楽しんでいます。
東京には持って帰らないでしょうが…。

梅之博多日記・恋をする身は浜辺の千鳥

2008年06月08日 | 芝居
初めは加賀屋(魁春)さん、次に天王寺屋(富十郎)さん、3度目は松嶋屋(仁左衛門)さんと中村屋(勘三郎)さんの『男女道成寺』でしたが、今回山城屋(藤十郎)さんのお舞台で、4回目となる<所化>役です。

山城屋さんは御襲名以来、「道行」のお衣裳を新たに誂えられていらっしゃいます。従来ですと、黒地に枝垂桜の着付、白地に狂言模様か扇面などの織物の帯となるのですが、それをガラリとお変えになり、藤紫色の地に、小さい梅の花で麻の葉鹿の子を描き、そこに大ぶりの桜の花を散らした着付、帯は朱色地に金の亀甲つなぎ、山城屋さんのご紋(本紋・替紋)を散らすという意匠です。伺いますと、着付の模様は、題名通りの『京鹿子』なのだそうで、舞台上で拝見いたしておりましても、大変華やかなのは申すまでもなく、上方の<はんなり>とした趣きも感ぜられ、本当に素敵だと思います。

「道行」のあとの所化とのやり取りの中で、普段略されることも多い「問答」をなさること、「山尽くし」からすぐに「鈴太鼓」に移ること、鐘入りの衣裳が、赤地に金の鱗模様の<ぶっかえり>になることなど、『道成寺』にも色々ななさり方があることを勉強させて頂いております。

皆様、『道成寺』の各段で、どのくだりがお好きですか?
私は<道行>が1番、<山尽くし>が2番。着てみたい衣裳は<ただ頼め>の紫の着付…。