梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之回顧2006年

2006年12月31日 | 芝居
2006年もあと12時間。
今年も皆様のお力を持ちまして、当ブログを続けることができました。改めて御礼申し上げます(皆様からのコメントに、お返事をできなかった月がございましたこと、お詫び申し上げます)。

さて、私のこの1年のお役を振り返ると…。

1月歌舞伎座 『鶴壽千歳』後見・『藤十郎の恋』大道具方
2月博多座  『女伊達』若い者・『大津絵道成寺』槍奴
3月国立劇場 (国立劇場小劇場での18期生の発表会にて)『修禅寺物語』修禅寺の僧
4月歌舞伎座 『沓手鳥弧城落月』関東方武士・『関八州繋馬』軍兵・『井伊大老』侍女
5月歌舞伎座 『外郎売』振袖新造・『権三と助十』長屋の女房・『黒手組助六』振袖新造
6月歌舞伎座 『藤戸』裃後見・『荒川の佐吉』見物の男・『暗闇の丑松』若い者
7月国立劇場 『毛谷村』忍びの浪人直方源八
8月国立劇場 (宗家藤間会)『屋島官女』武者右源太・『大望月』後見
       (勉強会)『修禅寺物語』源頼家
9月歌舞伎座 『六歌仙 業平』後見・『籠釣瓶花街酔醒』九重付き振袖新造
10月国立劇場(40周年記念式典)『石橋』裃後見/(芸術祭)『勧進帳』裃後見
       『元禄忠臣蔵 第1部』申し次ぎの侍・大石の若党・諸士
11月国立劇場『元禄忠臣蔵 第2部』廓の若い者
12月歌舞伎座『嫗山姥』花四天・『将門』力者・『勢獅子』後見

お役の上では初めて勤める役が多かったように思います。後見をさせて頂く機会も多うございました。ひとつひとつの舞台に思い出はつきませんが、まさか私にさせて頂けるとは思ってもみなかった『毛谷村』の浪人役は、悩んだ数も疲労度も今年のベスト1です。結果を残せなかったのは本当に残念ですが、精神的にとても鍛えられたお役でした。
裏の仕事では、上には書かれておりませんが、師匠がお勤めになった『先代萩』の八汐の着付け作業と、『業平』の公家装束の着付け、そして沢山の小道具をつけ外しする舞台上での用事…。後見はやればやるほどその難しさを痛感いたします。私は人間的に過剰な部分が多いので、それを舞台の上で殺すこと削ること、ある意味禅の修行みたいな気持ちです。
芝居の世界に入ったばかりの頃のように、舞台に出てれば楽しくてしょうがないという時期は過ぎ去り、思い悩み考えつつ、ときに抑制、つとめて冷静でいられることを第一に考えるようにしておりますが、まだまだまだまだ修行が足りません。人間的な修養にも勤めなければと思っております。

春の入籍と引っ越し、夏の結婚式と、プライベートでも大きな変化があった年でした。環境が変わったことで、気持ちの変化もありましたが、これからも、外へ外へとアンテナを張り巡らして様々な体験を、そして経験を内へ内へと掘り下げてしっかり自分の糧にすることができるよう、毎日を大切に生きてゆきたいと思います。

皆様の2007年が、素晴らしい年になりますようお祈り申し上げますとともに、1回でも多くの舞台でお目にかかれますよう、願っております。
それでは、よいお年を!

勝ち取ったチケットで

2006年12月30日 | 芝居
今日から3日間のお休みです。
午前中から昼過ぎまでは家の片付けと掃除、正月のお飾りを買いに出かけたり。家内は本日も働いておりますので、一人の作業ですが、明日本番の<大掃除>の下準備としては、まあまあでしょうか…。

夕方、東京大神宮に行き、明日執行の<年越の祓(はらえ)>でお祓い頂く、夫婦2人分の<形代>を納めにゆきましてから、今日一番のお楽しみ、シアターコクーンにて<野田地図>第12回公演、新作『ロープ』を拝見してまいりました。
チケットの売れ行きが大変素晴らしく、早々に全席完売で、しかも今回は当日券の販売が、あらかじめ電話で受け付けた整理番号の順で売ってゆくという形式で、ただ早くから並べばよいというわけにはゆかなくなり、前売り戦も整理番号争奪戦にも破れた私、大好きな野田秀樹さんの新作を観ずに1年を終えてしまうのか、いや終えるものかと四方八方手を尽くし、ついにヤフーオークションで落札! 苦労して手に入れたチケットで観るお芝居には、いつも以上に集中して入ってゆけますね。

さて『ロープ』…。
ひきこもりのプロレスラー、ノブナガ(藤原竜也さん)は、グレイト今川(宇梶剛士さん)との対戦を前にして、リングの下に住んでいるという不思議少女、タマシイ(宮沢りえさん)と出会います。対戦は完全なる八百長のはずでしたが、<ロープの中の勝負はみんな八百長>ということを認めたくないノブナガは取り決めを無視して暴れまくり、今川は重傷を負ってしまいます。これはショーだったのか暴力事件なのか? しかし、タマシイの実況中継の力もあり、これをたまたま放映した弱小ケーブル局の番組が大変な視聴率。ディレクター夫婦(野田秀樹さん、渡辺えり子さん)はさらなる視聴率アップを目論み、ノブナガ、タマシイたちをあおってさらなる過激な<戦い>を見せようとするが…。
観客の前で<作られた勝負>が繰り広げられるロープの内側から、いつしか舞台は、真実の血が、命が散っていったベトナムの戦場へ。私たちは、他国で繰り広げられた人々の苦しみを、無惨な死を、本当に理解できるのか? プロレスのひと勝負と同じようにしかメディアを受け止められなくなっていませんか…。
後半から一気に加速してゆく芝居は、タマシイの、叫びにも似た戦場の実況中継がグイグイ胸にせまりまして、切なく哀しくなりました。<わあ面白い!>と喜びながら観る舞台ではないかもしれませんが、確実に、観る者へ届くものがある。というよりも、受け止めねばならないメッセージがある劇です。

今年も色々な舞台を拝見できましたが、最後の最後でこの舞台に出会えたこと。本当に私はラッキーです!

太郎月稽古場便り・梅の巻

2006年12月29日 | 芝居
今日が私にとりましての<仕事納め>。
昼過ぎに『金閣寺』、夜半から『松竹梅』の<初日通り舞台稽古>でございました。
『金閣寺』。これまでの稽古では“あるつもり”だった、師匠と私の間の<捕り縄>が、実際に使われました。さあこうなりますと、弛みすぎてもいけず引っ張りすぎても具合が悪い縄の張り具合の調節が難しゅうございます。本日のお稽古では、どこでどのくらいの間隔をとればいいのか、どのくらい引っ張ればよいのか、そういう演技以前の段取りをきめるのが精一杯。初日に備えて万全にしておきたいのは山々ですが、初日以降も思案案文、試行錯誤は続きそうです。

『松竹梅』での後見は、仕事が少ないので至極無難に勤まりました。しかしながら、着付け作業には時間が要しました。やはり王朝装束は大がかりなぶん手間もかかりますね。後見の仕事は、すでに楽屋から始まっております。お客様に見える見えないは別として、任務はきちんと果たせるよう努力いたします。
2006年の全ての仕事を終えたのが午後9時過ぎ。アクシデントもなく勤め上げましたのはなにより有難く、ホッと安心いたしました。明日から3日間の休日を大事に有意義に過ごし、平成19年をさらに充実した1年にすることができるように全力で頑張ります。
とりあえず明日はワクワクの予定が控えております…!

太郎月稽古場便り・竹の巻

2006年12月28日 | 芝居
本日は午前中に楽屋作りを済ませ、午後4時から<顔寄せ>、引き続き『金閣寺』の<総ざらい>、『勧進帳』の<初日通り舞台稽古>、『松竹梅』の<総ざらい>と、師匠と私が関係する演目が立て続けに稽古されました。
『金閣寺』では、実際動いてみての感覚が、昨日のお稽古でだいぶ掴めましたので、落ち着いて勤めることができました。しかし明日は広い舞台に場所が移ります。師匠と自分の立ち位置や歩く速度も変わることでしょうし、場合によっては段取りも変更があるかもしれません。今日までやってきたことはやってきたこととして、舞台稽古では臨機応変に対処できるよう気をつけます。

そういう意味では、『勧進帳』こそ稽古場と実際の舞台での動き、段取りの違いがはるかに大きいです。歌舞伎座の大舞台を、後見特有の<膝詰め>でたびたび移動いたしますが、なかなか目的地にたどり着きません! 進行しているお芝居の邪魔にならない速度で、しかるべきキッカケまでに所定の位置に移るためには、もっともっと場数を踏んで<舞台の寸法><芝居の寸法>を心得なくてはいけません。新年早々勉強の機会を頂いたことに感謝しつつも、まずは滞りなく諸々の用事をきちんとこなさなくてはならないのも事実。今日は改めて手順を確認しながら勤めさせて頂きました。

『松竹梅』も、明日の舞台稽古では後見の居所や動線を考え直さなくてはならないでしょう。本当の<仕事納め>、バシッときめて楽しい年の瀬を迎えられますように!

太郎月稽古場便り・松の巻

2006年12月27日 | 芝居
昨日千穐楽、今日稽古。
年の瀬でなくともこんなせわしないスケジュールを送っている私たちですが、12月は、29日までに全ての稽古を終えるのが普通でして、ということは今日を含めて3日間で仕上げなくてはなりません。この度は『切られお富』のみが30日に<舞台稽古>となっておりますが、私も師匠も、この演目には携わっておりませんから、本当の仕事納めまではあと2日。集中して働かなくては! です。

午後3時過ぎから『勧進帳』の<附総(つけそう)>。附立と総ざらいを合わせた稽古ですから、次の稽古はもう<舞台稽古>。出演者の方々が、すでに演技、段取りを心得ていらっしゃる狂言だからこそできることです。私もこれで3回目の<裃後見>です(10月のはじめに勤めさせて頂いたばかりですし)ので、手順はわかっておりますものの、初めて<歌舞伎座>の公演でさせて頂く。このことが、大変有難くもまたプレッシャーでございます。
稽古がはじまってすぐ、後見として控えながら、長唄囃子ご連中の演奏する「寄せの合方」を聞いておりますと、オーバーな物言いかもしれませんが、とても厳粛な、清々しい気持ちになりました。初春興行のお稽古と思うと余計そうなのかもしれませんが、この演目のもつ格調を崩さぬよう、心して勤める所存でございます。
続いては、稽古場を移して『松竹梅』の<附立>。王朝風俗の男女が揃って踊る『君が代松竹梅』とは異なり、『松の巻』『竹の巻』『梅の巻』の三部構成で見せるメドレー形式です。すでにチラシでも発表されているように、師匠は『松の巻』で在原業平(9月に『六歌仙』でも演じましたお役ですね)となり、成駒屋(橋之助)さん演じる、家来の駒王と2人で踊ります。
こちらでは紋付袴の<着付後見>となりますが、難しい作業はないぶん、どれだけ動きを削れるか、目立たぬようにできるかを、考えてまいりたいと思います。
『松竹梅』終了後は、これと同時進行で、もとの稽古場で始まっていた『祗園祭礼信仰記 金閣寺』の<附立>に合流。このお芝居で、師匠、そして私が登場するのは開幕から約40分後ですので、かちあうことも待たせることもなく出番をすませることができるというわけ。
師匠演じる狩野介直信を縛り上げて出てくる侍を、初めて演じさせて頂くのですが、師匠の演技に合わせて、手にした捕り縄を引っぱり、相手の動きを封じる芝居をしなくてはなりません。時代物ですので、リアルになりすぎず、といって形だけのものにならないようにするのが難しゅうございましたが、幸いなことに、今月の座組では、過去にこのお役をなすった方が、先輩後輩交えて何人もいらっしゃいましたので、皆様から色々とお話を聞くことができ、さらにはお稽古場での私の演技も見て頂くことができました。様々なアドバイス、注意点を頂きましたので、教わったことを守りながら、少しでも劇の雰囲気にあった演技ができるよう努力します。

明日は楽屋作り。先ほども申しましたように『勧進帳』は<初日通り舞台稽古>。バタバタしそうな予感ですが、できる限り落ち着いて取り組みます。

最後の舞台は雨の中

2006年12月26日 | 芝居
本日、12月大歌舞伎<千穐楽>。
何事もなくつつがなく、25日間の舞台を終えることができました。
『嫗山姥』と『将門』、ふたつの立廻りに参加させて頂き、『勢獅子』では後見、『出刃打お玉』では師匠の数度の<早ごしらえ>。沢山たくさん勉強させて頂いたひと月でした。
興行が始まる前に予想していたよりも、はるかに<くたびれる>毎日ではございました。しかしながら、先輩方の鮮やかな立廻りを目の当たりにし、自身の未熟な出来を顧みたり、衣裳さんとじっくり一から相談しながら段取りを工夫したりと、改めて、今まで気がつかずにいた諸々のこと(とても大切な、忘れてはいけないこと)を確認しながら仕事をすることができたのは、大変有難いことでした。
公演中盤、トンボの調子が少々崩れかけまして、ご覧の皆様に格好悪い姿をお見せしてしまった日がありました。おかげさまで数日で元に戻りましたが、いつかも申しましたように、心技体のバランス、そして日々の鍛錬があってこそ勤まるもの。常によいコンディションでいられるよう、これからはもっと己に厳しく稽古をしてゆかねばなりません。

なにはともあれ平成18年の最後の公演を無事に終えることができました。色々課題は残りましたが、悔いはありません。1年を通じて、怪我もなく大病もせず、多くの勉強をさせて頂きました。回顧はまた後日といたしますが、今はとりあえず、大きく「ホッ」とさせて下さい。
明日はもう来年の稽古ですが…。

大鍋でグツグツと

2006年12月25日 | 芝居
これから年賀状書きに没頭する“予定”ですので、ひと言日記です。
今日は楽屋で<お汁粉>を作りました。といっても、先輩が仕込みから調理までして下さったのを食べるだけの私。あったかくて甘~くて、冬の甘味はやっぱりこれですね。
ちなみに昼食は<ナイルレストラン>のムルギーランチ。こちらは食べる最中から汗が出てくる辛さですが、「お汁粉カレー、甘いと辛い」で、なんだか元気が湧いてきました。明日の千穐楽も、しっかり勤められそうです!

えっ、まさか…

2006年12月24日 | 芝居
皆様メリークリスマス!
どんな一夜を過ごされてますか?
昼間10枚買ったスクラッチくじ<クリスマス トリプルマッチ>をさきほど削りましたが、5等が1枚と、特別賞1枚のあたりで、差し引き500円の儲け。ささやか、実にささやかな幸せをかみしめている小市民梅之です。

今日は歌舞伎座にもサンタが出現…!?
夜の部をご覧になった方、ある意味ラッキーでしたね(笑)。
私もおおいに驚きました。

公演は残すところあと2回。来月は、『松竹梅』の<着付後見>、『勧進帳』の<裃後見>、そして『金閣寺』の<縄取りの侍>を勉強させて頂きます。『金閣寺』では、師匠演じます狩野直信を縛り上げて登場するというお役。時代狂言ですので、品よく、きっちり演じることができるよう頑張ります。後見ふたつは、毎度申しますように、行儀良く、目立たず! です。
さあ、どんな初春となりますでしょう。来月の無事をイエス様に祈りながら、眠りにつくことにいたします。

肉芝仙より伝わりし…

2006年12月23日 | 芝居
『忍夜恋曲者』の主人公、滝夜叉姫は<蝦蟇の妖術>をつかいます。さしもの勇者大宅太郎光圀も、これにはタジタジとなるわけですが、劇の後半、<屋台崩し>の直前に御殿から這い出してくる<蝦蟇>は、カラミの力者をたぶらかし、幕切れは滝夜叉姫の足下に伏して、ともに光圀を睨みつけるという恐ろしさ。ある意味では、もうひとり(蝦蟇は人ではないけれど)の登場人物といっても過言ではないでしょう。
今月、この蝦蟇を勤めていらっしゃるのは加賀屋(東蔵)さんのお弟子でいらっしゃる、中村東志二郎さん。今回2度目となる蝦蟇の仕事について、お話を伺うことができました。

頭部と胴体部分でふたつに分かれた着ぐるみとなっているそうですが、口の開閉を操作する糸を、自分の左手の指にとりつけるようになっており、その左手を胴から離すように伸ばすと、口がパックリと開くとのこと。
そんな仕組みがある頭部、普通にかぶった状態では、顔が上向きになってしまうので、中の自分の顔はグッと下向きにしておかないと、いい顔の角度にならない。のど元には覗き穴(ここだけ紗布になっている)がついていますが、ときには蝦蟇の顔のせいで視界が遮られることもあるようです。
蛙とはいえ妖術をもつ化け物ですので、動きが軽くならないよう、おどろおどろしく見えるよう気をつけていらっしゃるそうです。ぬいぐるみは自分の体より、当然大きくなるわけで、自分ではほんのわずかな動きだと思ってやった仕草が、いやにオーバーになってしまうのだそうです。
幕切れ、屋根の上でのキマリの形が、体のほとんどを足場から乗り出しているために、バランスをとるのが辛いとおっしゃっていましたが、同じ舞台に出ていますが、そんな風には見えませんでした。着ぐるみの中での人知れぬご苦労、カッコいい形のための忍耐。やってみなくてはわからない世界ですね。あの高い屋根から皆を見下ろす眺めはどんなものなのでしょうね。

写真をいじって、掛け煙硝のドロドロドロ…のつもりですが、あまり恐ろしさは出ませんでしたね。

カボチャ食べました?

2006年12月22日 | 芝居
冬至ということで、楽屋風呂は<柚子湯>でした。
今月は、『将門』終演後に<力者>役同士で入浴いたしておりますが(隈もとっておりますしね)、風呂場の扉をあけると、爽やかな香りが立ちこめていました。いい風情ですね。今年の5月の端午の節句には、やはり楽屋風呂で<菖蒲湯>にも浸かれましたし、お陰様で無病息災。残り数回の舞台も乗り切れそうです!

夜は仲間うち6名での飲み会。忘年会というほどのものではありませんが、マアみんなよく喋りました。このメンバーならずしては語れない刺激的過激的トーク。免疫のない人は近寄らないほうが身のためかも? でも皆々熱いモノを持って生きているのです…。

仕事納めは何日に…?

2006年12月21日 | 芝居
今日、歌舞伎座初春興行の稽古割りが届きました。
例年、歌舞伎座の初春興行の稽古は、基本的に12月29日に全てを終わらせて、30、31日(そして1月1日)はお休みになることが多いのですが、演目によっては30日にも稽古をおこなう場合もございます。今年の稽古も、1演目だけ30日にもお稽古が予定されています。
ほとんどの演目は、27日からの3日間で仕上げるわけですが、古典芸能なればこそできることなのかもしれませんね。いつも以上に集中力が必要となるでしょうが、頑張ってまいります。
今年最後のお仕事が、無事に勤まりますように…。


今年何回目かのおめでた

2006年12月20日 | 芝居
(この文章は21日に書いたものです)

夜の部終演後、先日入籍をすませた仲間の、結婚をお祝いするパーティーがございました。
役者仲間はもとより、付人さんや大道具さん床山さんなど、50余名が集まっての賑やかな宴席。余興などはございませんでしたが、可笑しくもあたたかい先輩方のスピーチの数々、京都南座に出演中の仲間やサプライズな幹部俳優さんからのビデオレターと、とても楽しい時間でした。
今年の6月も、仲間の結婚を祝うパーティーがございましたが、仲間内で幹事を決めて、手作りで行うお祝いの席は、とてもアットホームですし、お互いの人となりをよくわかった者同士でこそできる気の利いた進行が、おおいに場を盛り上げてくれますね。
…新しい生活をはじめたお二人には、どうぞ末永くお幸せになりますよう、心からお祈り申し上げます(我が家庭のことはさておいて)。

写真はビデオレターを鑑賞中の一こまです。

短文をご容赦

2006年12月19日 | 芝居
12月大歌舞伎、そして2006年の歌舞伎公演もあと1週間! 
年賀状書きも大掃除も、何ひとつ手を付けていないのがちょっと怖くなってきた年の瀬です。
平成18年をふりかえるのは、大晦日にすることにいたしまして、まずは残り7回の立廻りと後見をしっかりと勤めなければ!
ちょっと疲れましたので、今日はこれにて失礼いたします。

富貴草 名取草 深見草…

2006年12月18日 | 芝居
『勢獅子』に獅子舞が登場することは以前お話しいたしましたが、見世物、曲芸としての<獅子>が出てくる本作はもとより、『鏡獅子』『連獅子』など、獅子そのものが登場する、いわゆる<石橋もの>の舞踊におきましては、衣裳、小道具、装置などに、<牡丹>の花があしらわれることが大変多うございます。写真は『勢獅子』で鳶頭が持つ扇ですが、ご覧の通り大きく牡丹が描かれております。
また、たとえビジュアルには登場しなくても、『越後獅子』の歌詞には「牡丹は持たねど 越後の獅子は…」とありますし、<石橋もの>の曲の多くには、「牡丹の花房匂い満ち満ち」「牡丹芳(ぼう) 牡丹芳」「牡丹に戯れ獅子の曲」というフレーズが、共通して使われております。

<唐獅子牡丹>なんてひと口にいわれるくらい、もう定番の組み合わせなわけですが、たんに百獣の王と百花の王を並べただけではない、切っても切れない理由があるようです。
文殊菩薩の霊獣にして百獣の王たる獅子にも、たったひとつ恐れるものがありまして、それは自らの体内に巣食う虫。この虫は皮膚を喰い破って身中に入り込み、やがて増殖し、肉をくらい出すのですが、これが獅子にとっては大変に苦痛なのです(いわゆる『獅子身中の虫』の由来)。
この虫を退治する方法というのが、実は牡丹の花でして、この花からこぼれる露を浴びれば、たちまち虫は死んでしまう。そこで獅子は折に触れて牡丹の花にその身をこすりつけ、もぐり込み、しばし休らうということなのです。
虫による苦痛をこらえつつ、一心に花と触れ合う様をあらわしたのが、お能でいう<獅子のクルイ>。これがのちに歌舞伎舞踊にもとりいれられました(長い毛を振る所作もその一つ)。
お獅子様は実はカラダのメンテナンスのために牡丹のそばにいたわけですが、そもそも牡丹自体が、中国では古来からその花の豪華さが尊ばれていましたし、薬効成分もあり漢方にもなるところから、大変縁起のよい花と考えられていましたので、この二つの組み合わせは実にめでたい<吉祥紋>として、仏教美術はもとより、様々な意匠にとりいれられております。

さて今月の『勢獅子』には、いったい何カ所牡丹が取り入れられておりますでしょうか?
これからご覧になる方は、ちょっと探してみてください。

ウイルスの恐怖

2006年12月17日 | 芝居
ノロウイルスが大流行ということで、皆様もご用心なさっていらっしゃるとは存じますが、なんとも恐ろしい事態でございます。
楽屋でも、ひどい腹痛などの症状を訴える人がいましたが、診察の結果はノロウイルスではなかったそうで、いわゆる感冒性胃腸炎だったようですが、楽屋という閉ざされた空間に、40名以上がすごしているわけですから、一人何かの病気にかかると、すぐに周囲に感染しかねません。こまめに換気をし、うがい手洗いを忘れず、予防線をしっかり張って劇場での生活をおくらなくてはいけませんね。

平成10年12月の歌舞伎座公演では、普通の風邪はもとより、インフルエンザも大変に流行りまして、名題下部屋でも短期間の休演を余儀なくされた人が幾人かでました。普通の風邪でしたら、とても舞台に穴をあけることはできませんが、インフルエンザは法定伝染病ですし、症状も重篤ですからね。あの月の楽屋は、ほとんどの人がマスク姿という不思議な光景でした。
それ以来、劇場での大規模な風邪、インフルエンザの蔓延はなかったと記憶しておりますが、ノロウイルスは数年前の浅草公会堂での初春公演中に流行ったそうで、このときも短期の休演者が出たと伺っております。あと数週間が流行のピークだそうですから、忘年会シーズンですけれど、食べ物には重々気をつけましょう。
腹痛をこらえての舞台ほど、ツライものはございませんよ…。