梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

有り難うございました

2010年08月25日 | 芝居
第16回『合同公演』は、お陰様をもちまして、4日間8回の公演を無事に終えることができました。
土日の公演では<満員御礼>の看板を出す回もございました。平日も、平均で約85パーセントの入場率となり、本当に有難く思っております。

<より若手のための>勉強会となった2回目の公演で、『仮名手本忠臣蔵』に挑戦させて頂き、出演者一同、得るものは大変多うございました。
稽古の間、音羽屋(菊五郎)さん、加賀屋(東蔵)さん、三河屋(團蔵)さん、そして藤間勘祖師、勘十郎師より頂いたお教えは、大切な宝物です。

…この度は、おかやというお役を勉強させて頂きました。
今の私にできる全てを尽くすことだけを思って勤めさせて頂きました。
娘が売られ、夫が殺され、その犯人が聟ではないかと疑い、責めあげ、それが間違いだったことを知ったときは、聟は命を失おうとしている。
そんな老婆の<ありえないような1時間>を生きることは、肉体的にも、精神的にも、辛かったです。

教わったことを守って、仲間と気持ちを合わせて、4日間の公演に挑みました。
どこまでおかやらしくなれたかは、はなはだ心もとないのですが、少しでもご覧頂いた皆様の心に届くなにかがあったなら、幸いでございます。

協賛下さいました、松竹株式会社様、社団法人伝統歌舞伎保存会様をはじめ、大道具様小道具様、衣裳様床山様スタッフの皆様、忙しいなか舞台稽古や本番を観にきて下さり、ご助言を賜りました先輩方。本当に多くの方々のお力添えとお励ましのおかげで、無事に千穐楽を迎えることができましたこと、厚く御礼申し上げます。

昨日の反省会をもって、第16回公演の全ての日程を終了いたしました。
思えば、1月末から準備がはじまったわけですが、あっという間の日々でした。
思うこと、感じること多々ございました。我々若手に託された責任の重さ、学ぶ、教わる者としての意識。
これからも、試行錯誤は続くのだと思います。皆でしっかり手を携えて、取り組んでいけたらと思います。


                  ◯


この更新をもちまして、『梅之芝居日記』は、しばらくお休みを頂きたく存じます。

このブログは、2005年の3月に開設いたしましたから、5年の月日が経ったわけですね。
その間、このページを通じて沢山のご縁が生まれ、よい思い出がいっぱいできました。
励まされ、助けられ、あたたかく見守られながら、日々のお芝居のこと、お役のことをお話しさせて頂く毎日は、とても楽しゅうございました。

私は、先月30歳になりました。
ひとつの節目を迎えるにあたり、公私にわたり、これからのことを色々と考えるなかで、青臭い言い方になりますが、自分の中身をもっともっと豊かにしたいという思いを抱きました。
お稽古ごとですとか、趣味ですとか、あるいは生活スタイルですとか、これまでの自分が体験できなかった(しようと思わなかった)ことを、これからチャレンジしてみたいなァ…と、そう思うのです。
自分を変えようとか、そういうオーバーなことではなく、幅広く、楽しく、のんびりと遊ぶ気持ちで、これまでと違う時間を過ごしたいな、という感じでしょうか。

ひとまず、ブログを通じてなにかを<発信>することをお休みさせて頂き、自分の中に<貯める>ことに集中したい。そういう思いでございます。
これまでの<発信>の仕方も、十分に省みる所存でおります。
その上で、どのくらい先になるかはわかりませんけれど、再びなにかをお伝えしたい気持ちが高まれば、再開させて頂くことになるかと存じます。

とは申せ、師匠が出演する毎月々の本興行や、仲間が挑戦する企画公演などの情報、ご案内は、掲示板がわりにお知らせしたいと思っております。


これまで、拙い文章にお付き合い下さいました、延べ255,310人のお客様へ、心からの御礼を申し上げますとともに、
突然のお休みとなることを、深くお詫び申し上げます。

本当に、本当に有り難うございました。
またいつか、この場でお会いいたしましょう。


8月25日

中村梅之








正念場です

2010年08月17日 | 芝居
本日『合同公演』は<顔寄せ><附立>。
ついに本稽古を迎えました。

『五・六段目』は、竹本も下座も、いわば“生音”となりまして、これまでの、録音を使っていた稽古とは、かなり雰囲気が変わりました。
より本番に近い環境(あとは衣裳と鬘、舞台装置となりますね)になり、大変やりやすくなりました。太棹に乗せて、気持ちもより入ります!

今日に至るまでも、そして今日からも、怒濤の日々でございます。
例年以上に慌ただしく、アツい毎日。
体力気力も限界ギリギリです。

とにかく、全力で挑みます。

           ◯

『合同公演』はおかげさまで21日(土)ヒルB・ヨルA、22日ヒルAは<残席僅少>となりました。有り難うございます。
まだまだ残席のある公演もございますので、どうぞお気軽にお問い合わせを!
国立劇場チケットセンターはこちらから!

稚魚の会友の会 夏のパーティー

2010年08月08日 | 芝居
午後6時から、<稚魚の会友の会>の皆様をお招きいたしましての親睦パーティーを開催させて頂きました。
ご同伴者も含めて、50人以上の方々がお暑い中お越し下さいました。心より御礼申し上げます。

『合同公演』に出演する同人からは、お役への意気込みなどを申し述べさせて頂き、恒例の余興、福引きも。私も、性懲りもなく一席伺ってしまいましたが…。
私どもをご後援下さる皆様と、短い時間ではございましたが一緒の時間を過ごすことができまして、嬉しく有難く思っております。

これからも、末長く<稚魚の会>一同をお見守り下さいますよう、改めてお願い申し上げる次第でございます。

稽古稽古の日々です

2010年08月06日 | 芝居
『五・六段目』は、約2時間のお芝居です。
A、Bダブルキャストでの上演ですから、お稽古は2回分。講師の方々からのダメ出しや、出演者同士での打ち合わせも入れれば、1日のお稽古は5時間くらいになります。
稽古場の独特の緊張感の中に長時間いることは、それだけでも体にこたえるものですが、懇切丁寧に2班分のご指導をして下さる講師の方々のご負担を思えば、弱音は吐けません! 自分の出ない班を拝見することで得るものも沢山ございます。一刻一秒も無駄にできない初日までの日々、16人の出演者は気力と体力を振り絞って臨んでおります。

今日は<趣向の華>『真田小僧』の稽古もございまして、夕方から作・演出の尾上青楓師のお稽古場へ。初めての<立ち稽古>でございました。
台本を読むだけでは見えてこなかった動き、間が、青楓師の細やかなご指導で組み立てられてまいります。私の<母>役も、なるほどこういう段取りになるのかと、目から鱗の思い。旦那様の國矢さん、我が子の梅丸と、イキイキと、そしてホンワカとした落語の世界の住人になれそうな手応えがございました。
<合同公演>に先立っての“3人芝居”。難しいですが素敵なお役を勉強させて頂きます。こちらもどうぞご覧頂きたく存じます。
公演詳細はこちらを御覧下さいませ。

        ◯

<合同公演>残席状況も、徐々に徐々にではございますが、良い方向へと向っております。
この流れが途絶えないようにしたいもの。よろしくご喧伝下さいませ!


『合同公演』本格始動です

2010年08月04日 | 芝居
8月1日に巡業千穐楽、翌2日から『合同公演』「五・六段目」稽古。
休んでいる場合ではないのですが、ちょっぴり疲れております。(しかしなんという暑さなのでしょう!)

最初の2日間は出演者のみで<自主稽古>をし、段取りを固めました。
本日は、監修・指導の音羽屋(菊五郎)さん、加賀屋(東蔵)さん、三河屋(團蔵)さんの三師が、お忙しい中お出まし下さり、A、B両班をたっぷり5時間かけてご指導下さいました! ただただ感謝申し上げるのみです。

個々の演技のことよりも、皆とのイキとか、相手がやりやすい芝居の仕方とか、個人稽古ではわからなかったことを、沢山ご指導いただきました。
皆様のご指導により、自分のカラをちょっとずつでも破っていけそうです。それがとても有難く、嬉しいのです。
固まらぬよう、硬くならぬよう、気持ちを通わせ合うチームワークを大切に!

        ◯

『合同公演』は、残念ながら平日公演(とくにヨル公演)に、大いにお席の余裕がございます。
出演者一同、最後の最後まで宣伝活動をしてまいりますが、どうか皆様のお力を賜りまして、熱い熱い公演を作り上げたく存じます。
何卒よろしくお願い申し上げます!!

国立劇場チケットセンターへはこちらから!

大船で千穐楽でした

2010年08月01日 | 芝居
私の実家、神奈川県鎌倉市大船<鎌倉芸術館>での2回公演をもちまして、『公文協東コース巡業』はめでたく千穐楽を迎えることができました。

かなり“濃い”巡業でした。

『重の井子別れ』腰元、『勧進帳』富樫の裃後見、『七段目』仲居という本役3つに加え、実は公演半ばで、体調不良により休演なさった方がいらした関係で、『近江のお兼』の幕切れに、お兼が乗る<二段>を出す黒衣の後見も勤めることになりまして、結局昼夜4本のお芝居に関わることとなりました。
毎日毎日会場が変わる<巡業>というものは、普段の興行にくらべて独自の緊張感があるものです。そういう環境でこれほど舞台に出させて頂いたのは、実は初めての経験でございました。『重の井』の腰元は初役でもありましたし、『勧進帳』への早ごしらえもありで、色々な面でドキドキが常につきまとっておりました。
最初の頃は、正直申しまして、しんどいというか苦しいというか、ネガティブな感情ばかりもってしまいましたが、日を追うごとに、そういう状況にも慣れることができました。

どんなときでも、楽しんで、明るく働いたほうがよいのだけれど、なかなかその境地には達せないもの…。
自分ひとりでは、ずーっと悶々としていたのでしょうが、気のおけない仲間たちや、スタッフの皆様と過ごす時間のおかげで、徐々に肩の力を抜くことができました。
仲間の有難さを、これほど実感した巡業はなかったです。心から感謝!

『勧進帳』富樫の後見は本日で154回目。
ようやく、入り口に来た思いです。
やっぱり、数をこなさなければ見えてこないものがありますね。
ブキッチョだから、経験をとにかく重ねないと、体が覚えてくれません。
これからも、慌てず、焦らず、自分のペースで修行してまいります。

どんなに遅い歩みになるとしても…!


          ◯

いよいよ気持ちを切り替えて、『合同公演』へ!
ひたすら、真剣に、一途に。
よろしくお願いいたします!