梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記三巻目・ついに開幕!

2009年11月30日 | 芝居
本日、京都南座吉例顔見世興行の初日の幕が開きました!
満員御礼! 有難うございました。
反省点はございましたが、自分のお役、仕事もまずは大過なく勤めることができました。心からホッとしております。

ひとつ出番が終わっても、すぐに次の拵えにかかるような一日のスケジュールになりました。お昼ご飯を食べる時間があったのは幸いですが、劇場からは全然出られないので、屋上から町並みを眺めるのが唯一の生き抜きです。

まずは体調管理に気をつけて、あと26回の舞台を乗り切りたい! そして少しでもよい舞台を勤めたい!!

一歩一歩を確実に。しっかり勉強させていただきます。

梅之京都日記三巻目・いやはやなんとも

2009年11月29日 | 芝居
午前11時から『佐々木高綱』『一條大蔵譚』『封印切』『土蜘』『助六曲輪初花桜』の〈初日通り舞台稽古〉。師匠→自分→自分→師匠→自分と出番が続く、まさに怒濤の一日でした。

『佐々木高綱』。ウグイス笛は、次の『一條大蔵譚』の支度もありますので、前半と後半で担当者を分けました。私は、より師匠の演技に関わる前半を受け持ちますが、前後で鳴き方や雰囲気が変わらないように気をつけねば!
…師匠3回目の高綱は、扮装を一部前回と変えました。是非お確かめ頂きたく存じます。

『一條大蔵譚』は、昨日も予測した通り、南座の間口に合わせて段取りが結構変わりました。さすがに歌舞伎座の通りとはまいりません。腰元や仕丁はギッチリ混み混み! なので、いくつかある用事をすることになっていた方が、いざ舞台に並んでみますとどうにも動線が悪い。そんなわけで、これまで座っているだけだった私も、明日からご用事をさせて頂くことになりました。いきなり本番というのが誠に誠に怖いのですが、とにかく落ち着いてやるっきゃない…!

慌だしく化粧をし変えて『封印切』。だんだんと落ち着いてきています。衣裳を着て鬘をつけて(ほとんど先月と変わりませんが)、装置の中に身を置いてみて、やっと少し雰囲気がわかってきた感じ。しかし忠兵衛と八右衛門のやり取りを、お客様より近いところで拝見できるんですから、これくらい嬉しいことはありませんよね。自分の課題を早く克服して、この濃厚な世界にどっぷり浸りたいな。そうすれば、よりこの芝居の仲居らしくなれるて思います。

『土蜘』では、師匠のことはもちろんのこと、梅丸の太刀持もついつい気になってしまいました。

『助六曲輪初花桜』、こちらも『大蔵譚』以上の混み様! 今回は揚巻の道中はなく、揚巻、意休、白玉も本舞台に居並んだ景での幕開きですから、まさに〈女の園〉。ズラリ揃った光景が、浅葱幕の振落しで一瞬に現われるのですから、今からお客様の反応が楽しみです。
揚巻付き新造としての仕事の段取りも、反省はありましたがまずは無事にゆきホッとしていますが、これからも整理、修正があるやもしれませんから、油断なく怠りなく! 

お昼を食べる余裕もない一日でした。明日はすこしは時間のゆとりがあるかな?
あっという間に初日が来ます。大所帯の楽屋、師匠の仕事と自分の出番、時間との戦い、とにかく試練の京都。

まだ遊びに出かける気持ちは起きませんなァ…。


梅之京都日記三巻目・あれよあれよと

2009年11月28日 | 芝居
午前11時から『佐々木高綱』の〈総ざらい〉。ウグイス笛も実際に使いました。芝居の要所要所、十回くらいあしらいますが、なかなか緊張いたします。ウグイス笛を吹くこと自体はけして難しくはありませんけれど、間合いや音色はこだわればこだわるほど〈奥深い〉ものがあり、一幕の雰囲気を壊さずに、お客様の耳に心地よいウグイスさんになれるよう勤めたいです。…前回の顔見世での『将軍江戸を去る』ではホトトギス笛を吹いてました。なんだか京都に来るたびに笛を吹いているようです。

『一條大蔵譚』は〈総ざらい〉。腰元役はこれで4回目なので、戸惑うようなことはございませんが、南座は間口が狭いので、本番の居並びなどはどうなりますやら。

『土蜘』は〈附総〉で、素の稽古は今日1回のみでございます。梅丸が太刀持を勤めますが、なかなか重たいお役です。セリフもありますが、なにせ変声期ですから本人は大変だと思います。
この演目では、過去に頼光の後見をさせていただきましたが、松羽目物のなかでも重量感や緊迫感は屈指のものです。こういう雰囲気に溶け込める役者になりたいなと、今日の稽古を拝見していて改めて思いました。
順番が逆になってしまったかもしれませんが、師匠の平井保昌は今回が初役でございます。後見はありませんが、出るたびに拵えがかわりますので、裏の用事をしっかりと!

『封印切』『助六曲輪初花桜』は〈総ざらい〉。東西の廓が舞台のお芝居に、いっぺんに出られるというのも面白い巡り合わせですが、面白がってる余裕はなし! 昨日よりかは落ち着いて取組めましたが、何度も申します通り、よい意味での〈馴れ〉が生まれるまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、焦らずじっくりと、心を大きくもって勉強させていただきます。本当にテンパりやすいんです、私…。
早くも『お祭り』『石橋』は〈初日通り舞台稽古〉でした。客席から拝見させていただきましたが、『お祭り』では新たにご工夫された立回り(頭をなさる松嶋屋さんにちなんでるんです)、『石橋』は曲、振付、所作ダテなどを藤間の若宗家(勘十郎師)が構成なさったもので、大変興味深く拝見させていただきました。弟弟子の梅秋が、両方に出させて頂きまして、返り越しや返り落ちを勤めておりますので、僣越ながらご声援お願いいたします(怪我にはホント気をつけて欲しい)。

さあ明日行われる5演目の舞台稽古には、全て関係しております! 気力体力集中力です!!


梅之京都日記三巻目・始まりました!

2009年11月27日 | 芝居
このブログをはじめてから、三回目となる「京都日記」です。

朝八時二十分の東京発の〈のぞみ〉で京都入り。車中では爆睡でした。2年ぶりとなる南座に直行し、軽く楽屋作りをしたところで、12時半から早速『佐々木高綱』の〈附立〉です。
師匠3演目となる高綱。新歌舞伎とはいえ演出や段取りはほぼ固まっておりますが、やはりその都度変わってくるところは多々ありまして、裏の用事をする立場の私も、今回新たな気持ちで臨んでおります。前回は兄弟子が担当していた〈ウグイス笛〉の効果をさせていただくこととなりましたので、演出の廣田一氏にキッカケを伺いながら稽古を拝見。今日は〈附立〉なので実際に吹かなくてもよいのです。明日の〈総ざらい〉は本番通りですので、しっかり勤められるよう整理、確認をいたしました。
…初日があきますと、この演目のあとが『一條大蔵譚』で、私は腰元で出演、部屋子の梅丸も女小姓で出させて頂きますのでそちらの手伝いもあります。なので師匠の高綱の用事も最後まで携わることができないかもしれず、弟弟子の梅秋と役割分担をうまくしませんと、ドカジャカになりかねません。明日しっかり固めるつもりです。

初めて出させて頂きます『封印切』も〈附立〉。周りが全員経験者という中に、ポツンと入ってしまったのでプレッシャーがすごいです。段取りは皆様に教えて頂きましたが、実際やってみますと手も足も出ません。今はとにかく「周りに合わせる」こと! 足を引っ張らないよう、お邪魔にならぬよう気をつけるしかありません。
山城屋(坂田藤十郎)さんの忠兵衛と、松嶋屋(仁左衛門)さんの八右衛門の白熱のやりとりが間近に拝見できて本当に嬉しいのですが、残念ながらまだ自分に余裕がないので、学びとるところまでゆきません。千穐楽までには少しは進歩したいものです!

松嶋屋さん約1〇年ぶりの『助六曲輪初花桜』での新造役は、けして広いとはいえない南座ロビーでの稽古場に、ずらり居並ぶ出演者の数の多さにまずグッタリ。居所なども、とても本番通りにまいりませんので、わりあいとアバウトな感じでした。
揚巻付きですので、早く出番が終わりますが、いわゆる〈居残り新造〉の方々の大変さを思いますと、喜んでばかりはいられませんね。

稽古後、ホテルにチェックイン。最初はよそよそしい感じだった部屋も、いつも自宅で使っている荷物を並べ出すと、なんとはなしに落ち着いてきますね。久しぶりのホテルでのひと月を、楽しみたいです。

京都にそなえて

2009年11月26日 | 芝居
今日はお休みでした。
11時まで布団の中でウダウダし、ノソノソと京都のホテルへ送る荷物作り(今回はウィークリーにはしませんでした)、モソモソと中途半端な食事。
やっと頭も起きてきたところで銀座へ出て、整体の「銀座 マナで『忠臣蔵』の疲れをとってもらいました。<劇団偉人舞台>の鹿島さんに紹介してもらって、半年ほど前から通っているのですが、とっても効くのですよ、これが! 先生も大変親切な方、私の舞台も観にきて下さいます。
それから東急ハンズで旅先用の目覚まし時計、マルイで風邪対策のハーブティーを買ったりブラブラと。
仕事を終えた家内と合流して、食事をしてから帰宅。
先ほどまで、来月出演の『封印切』のビデオを拝見しておりました。

さあ、我が家とはしばしの別れ。
明日は頑張って6時起き。8時には車上の人となる予定。
寝坊しないように気をつけマス。

やり遂げた感は抜群です

2009年11月25日 | 芝居
お陰様で、歌舞伎座さよなら公演 11月吉例顔見世『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』、無事千穐楽を迎えることができました。大勢の方々にご来場頂き、心より御礼申し上げます。

久しぶりに12時間以上歌舞伎座で過ごすひと月は予想以上に疲れましたけれど、軽い風邪をひいたくらいで、まずはつつがなく勤めおおせることができました。
久しぶりの立役の出演だった「四段目」。これはもう、お芝居というか<儀式>みたいなもので、こういう時間の流れを演劇として成立させてしまう歌舞伎って、本当にすごいと思いました。この場を支えるのは、すべての出演者の<気持ち>だと思います。だからホントに気が抜けませんでした。日頃緩みっぱなしの精神が、少しは鍛えられたかしら…?

「七段目」の仲居は2回目ですが、まだまだ仲居の風情、雰囲気には近づけません。先輩方は自然にやってらっしゃることが自分にはできないもどかしさ。意識してやってしまうとわざとらしくなる…。
もっともっと数をこなしたいです。前回より少しは進歩したかなと思ったのは、あのペラペラの裾をからませないで歩けるようになったことぐらいでしょうか。
来月も『封印切』で仲居役ですので、しっかり勉強させて頂きます。

「十一段目」の引揚げは、千穐楽まで色々と細かい手直し、変更がございました。
師匠演じる服部逸郎の家来に、槍を持たせるようにしたり(警護の役であることをはっきりさせる)、浪士の花道の引っ込みの段取りも整理され、由良之助は最後のセリフで「早く亡君のもとに行き、再び忠義がしたい」という内容のセリフを加えました。たんなるフィナーレにならず、さらに情の通った、ドラマとしての「引揚げの場」になったように思えます。
万雷の拍手の中花道を去ってゆく浪士たち、そして見送る服部。
千穐楽の舞台は、いつもとはまた違った感慨がございました。

…さて、これにて歌舞伎座『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』は終わりましたが、今月の一座には、来年1月大阪松竹座での通し上演に出演する仲間も多く、「まだ終わった気がしない」という声も…。なかには先月の名古屋の通し上演にも出演していた人もいますから、これで3分の2…。いったい何回討ち入りすればよいのでしょう?
3座3様の『忠臣蔵』。1月は、より上方の雰囲気に溢れた演出になることと思いますが、お客様には、それぞれの違いを楽しんで頂きたいものです。

今月は虫食いばかりの更新になってしまい申し訳ございませんでした。チョコチョコとオマケ記事を追加するかもしれません。それでは、歌舞伎座最後の『忠臣蔵』のお話、これにて幕とさせて頂きます。





次に会えるのはいつでしょうか(↓)

2009年11月22日 | 芝居
気がつくと『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』もあと三日となりました。残りの舞台、お役を大切に勤めてまいります。

…さて、『忠臣蔵』の通しでは、何といってもこの狂言のみ行われる<口上人形>による"狂言名題"と"役人替名"の読み上げが、大切な演出として伝わっています。
配役紹介である"役人替名"は、幹部俳優さん、名題俳優さんのお勤めになるお役を述べてまいりますが、今回の一座では、総勢56人いらっしゃいますので、それなりの時間がかかりますが、開幕を前に、場内の期待がだんだんと高まってゆくような、歌舞伎でしかできないプロローグだと思います。

常ならば、開演の15分くらい前から行うこの口上ですが、今回は午前11時からとし、この開始をもって「昼の部開演」としています。歌舞伎座さよなら公演にあたり、しばらくはお目にかけることができないこの風習を、ご来場下さる皆様にしっかり観て頂きたいということで、このようになったと伺っております。開演前に行いますと、ギリギリでご入場なさる方がご覧になれないことがままございますので…。

ちなみにこの口上のはじまりを告げる下座のお囃子は<七つ頭の片シャギリ>と申すそうで、普段松羽目物の開幕時に使うものと、出だしが少し違うのです。今ではこの『忠臣蔵』のときにしか使われていないそうですが、格の高い、大切な演目のためのお囃子だそうです。

前回の通しのおりにもご紹介いたしましたが、柝の回数、七五三の東西声、置き鼓など、「大序」は本当に独特の世界ですね。

本番は午前9時

2009年11月21日 | 芝居
第239回『子供歌舞伎教室』が23日(月)に開催、今日は本公演終演後に舞台稽古がございましたので、拝見させて頂きました。
今回の演目は『道行旅路の花聟』<落人>です。加賀屋(松江)さんの早野勘平、紀伊国屋(宗之助)さんの腰元お軽、そして滝野屋(男女蔵)さんの鷺坂伴内という、『七段目』の“三人侍”の皆様が揃ってお出になるという配役です。

華やかな舞台面ですし、物語性も強い曲。後半には立廻りもありますから、学生の皆さんには、親しみやすいかもしれませんね。
…加賀屋さんの勘平は2度目、10年前の平成11年2月歌舞伎座公演中の子供歌舞伎教室でもお勤めになっていらっしゃいますが、そのときは私も花四天で出演させて頂きました。当時私は実家の大船に住んでいましたから、朝早く起きるのが大変でしたこと、懐かしく思い出しました。

この度は、本公演の<落人>にも出演させて頂いております梅秋が、立廻りで一人がかりの<返り立ち>をいたします。本番は早朝ですから、コンディションには気をつけて、無事勤めおおせて欲しいです。







今年最後のお役が決まりました

2009年11月19日 | 芝居
来月は、今年最初で最後の地方公演。京都南座吉例顔見世興行に出演させていただきます。
名題下それぞれのお役を知らせる"葉紙"が届きました。
『一條大蔵譚』「桧垣」の腰元、『封印切』の仲居、『助六曲輪初花桜』の揚巻付き詰袖新造の3役を頂戴いたしました。

今回の狂言立てで、女形が出る演目の全てに出させて頂きます。さあ忙しくなりそうな予感!
それぞれのお役を、しっかりと勉強させていただきます。

部屋子の梅丸も「桧垣」の女小姓と『土蜘』の太刀持で出演することになりましたので、一門揃っての京都生活です。悪い風邪がはやっていますので、体調には気をつけてまいりたいものです。

人騒がせな獣

2009年11月18日 | 芝居
『五段目で 運の良いのは 猪ばかり』の句をひくまでもなく、「歌舞伎十二支」の定番メンバーの“イノシシ”さんですが、愛らしいお顔とは裏腹に、中腰のような体勢のまま走り続けるのは相当しんどいそうで、経験なすった皆様、「大変だよ、あれは」とおっしゃいます。
中からの視界も狭いので、自分の走っているコースがはっきりとわからないというのも怖いですね。うまく見当や目印をみつけられるまではドキドキなんじゃないですかね。「松の木にぶつかった」とか「とんでもないところに引っ込んできた」とかいうアクシデントも、まま聞くところでございます。

ただ走れば良いというものではなく、これはある意味、定九郎の拵えがえのための“つなぎ”的なものでもありますので、早すぎては定九郎の準備が間に合いませんし、遅すぎてはイノシシらしさ、凄みがでません。ちょうどよいスピードで勤めなくてはなりませんので、やはり“芝居心”が大切な仕事なのでございましょう。
師匠が先年、定九郎を初役で勤められたおりには、我々弟子たちも初めての仕事でしたので、舞台稽古ではイノシシに舞台を2周してもらい時間をかせぎ、具合をみさせて頂きました。この結果をふまえて、初日はゆっくりめの1周、そして日を追うごとに徐々にテンポをあげて…という感じで調整いたしましたが、今回は勝手がわかっておりますので、最初から程よいペースでやっております。

イノシシが去ってから定九郎が再び出ます。あとを見送るように上手にゆくと、ぬかるみで滑ったという心でオコツき、左膝をつきますのが、揚幕からの鉄砲の「パンッ」のきっかけです。これは、滑ったはずみでうずくまった定九郎の姿を、勘平がイノシシと見誤ったという心なのですね。
歌舞伎は理屈ではありませんけれど、先人がお考えになり、練り上げてきたた型というものには、ちゃんと“意味付け”がなされているのですナ。

寅年初春狂言

2009年11月17日 | 芝居
歌舞伎座さよなら公演も、いよいよ大詰めとなりましたが、平成22年初春興行の演目が発表されましたね。

寿 初春大歌舞伎
昼の部

一、春調娘七種
二、梶原平三誉石切
三、勧進帳
四、松浦の太鼓

夜の部

一、春の寿
二、車引
三、京鹿子娘道成寺
四、与話情浮名横櫛 見染・源氏店

…師匠は『勧進帳』の富樫、『松浦の太鼓』の大高源吾、そして『春の寿』に出演なさいます。
『春の寿』は、京屋(雀右衛門)さんが久しぶりに本興行にお出になる誠におめでたい舞踊でございます。

初春らしい、華やかな舞台が揃いました。どうぞ来年も、残り4ヶ月となる歌舞伎座にいらしてくださいませ!


たまげました

2009年11月14日 | 芝居
近所の映画館のレイトショーで、マイケル・ジャクソン『THIS IS IT』を観てきました。
こんなことをいっちゃァなんですが、彼の急死が世間、いや世界を騒がすまで、彼自身にも作品にも、なんの興味もわかなかったのですが、今回、「果たせなかった最後のライブ」のリハーサル風景をまとめたこの作品を観て、この人の、アーティストとしての技倆の凄さはいうまでもなく、1曲1曲がどうすれば最高のクオリティーになるか、観客に自分の想いを伝え、感じさせ、そして無条件の興奮を与えるために、どれだけのこだわりと試行錯誤を重ねればよいのかということを常に考えながら、体の限界まで“闘って”いた彼の生き様に、本当に感動いたしました。
天与の才とあくなき努力。言葉にすれば簡単ですが、彼はまさに“特別な人”だったのですねェ。誰も真似できない<世界>を作ることができる人。その<世界>が、他人を虜にしてしまう、体のシンまで酔わせてしまう数少ない人…。

そして彼を取り巻くスタッフの方々の素晴らしいこと! マイケルのどんな注文にも冷静に、着実確実に、しかし“エンジョイ”しながら対応しているのがスゴい。舞台に生きている者の端くれといたしまして、こういう関係はとても羨ましいですね~。
バックダンサーのオーディション風景もございましたが、どれだけの数の人々が、このライブに憧れ、夢を、命を懸けて取り組んできたのかということがわかっただけでも、大きな収穫でした。ひるがえって、今の自分の甘えや怠惰を恥ずかしく思い、もっともっと真剣に、真摯に生きてゆかねば! と…。

深夜というのに満員の客席。
死してなお、この影響力。
マイケル、奇跡の人。

歌舞伎座最後の…

2009年11月13日 | 芝居
本日『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』、<中日>でございました。
変な表現ですが、1日は長~く、ひと月はあっという間のような感覚です。あと半分で、『今の歌舞伎座最後の顔見世興行』も終わってしまうのですね…。

最後といえば、本日は恒例の『機関祭』でもございまして、終演後に我々名題下有志も参加させて頂き、祭壇に心ばかりの品を奉納してから、皆様と楽しく歓談いたしました。
歌舞伎座を動かしている<機関>、つまりはボイラーも、あと5ヶ月ちょっとで役目を終えようとしております。
新しい建物になったときに、このような役目を担う場所にはたして気軽に出入りできるかどうかはわかりません。セキュリティーの問題もありましょうし、最先端の技術や設備により、今のような環境はまず再現はされないのでしょうから、皆がワイワイと集って宴会ができるような空間は、もうなくなってしまうのだと思われます。

そんなわけで、『これが最後の機関祭』かも? という声もあり、お開きとなって、めでたく手締めをいたしましたときには、なんだか感慨深いものがありました。
…歌舞伎座興行もあと160余日だということ、改めて感じた次第です。

私はうめゆきです

2009年11月12日 | 芝居
ここ数年の恒例、お酉様にみんなで参拝し、熊手を買いました。
木札に名前を書いてもらい、お代も支払い、吉例の手締めとなるところで、アルバイトなのかしら、大学生くらいの男の方が、「お名前はなんて読むんスか?」と聞いてきましたので、「"うめゆき"です」と答えました。

「わっかりました、それでは手を締めさせて頂きます!…え~、中村"うめすけ"さんの来年一年の幸せを祈り…」

先輩、仲間はずっこけましたよ。
今聞いたばかりだよね…?

私の名前は"うめゆき"です。

        〇

…もう四年前になりますか、私たち夫婦の結婚披露宴。司会はプロの方にお願いいたしました。
夫婦の職業がら、略歴やご来賓の方のお名前、肩書きに、なじみのない言葉や読み方が多々ありましたので、こちらで作った原稿は、総ルビで用意しました。

新郎新婦入場、乾杯の前のプロフィール紹介となります。司会の方(女性)は滑らかな、そしていかにもな口調で私のこれまでを紹介して下さいます。
「…そして太郎さん(私のことね)は国立劇場歌舞伎俳優研修を修了され、中村梅玉師のもとに入門、中村"うめきち"の芸名を名乗り…」

紋付袴姿の私はビクンと痙攣しました。新郎側のテーブルは、ややざわついていましたが、プロフィール紹介はそのまま澱みなく続いたのでした。
フリガナあったよね?
その後、主賓でいらした師匠が、スピーチのなかでさりげなくフォローして下さったのが大変有り難かったですが、

私の名前は"うめゆき"です。


よろしくお願いいたします。

『忠臣蔵』どうでもいい話

2009年11月11日 | 芝居
「やっぱり『忠臣蔵』は重みが違いますね、体も気持ちもこたえますよ…」と後輩。ややあってから、
「考えてみたら、毎日葬式に出てるようなもんですよね」…って、そりゃ『四段目』はそういう場面かもしれんが…。

        ◯

『七段目』の幕切れに再登場する仲居たちの『送ろかえ』のセリフ、あれをずっと『お風呂かえ』と勘違いして喋っていた人がいたとかいないとか。確かに由良さんもひとッ風呂浴びてから山科に帰ったら気持ちイイかも(湯冷めに注意だけど)。

かくいう私も数年前まで『六段目』の勘平の『金もかえって石、瓦』を、『石か藁』だと思い込んでいましたが。

        ◯

私が『五段目』の定九郎の血糊を作っているところを御覧になった方が、「密かに(毒を)盛ってるんじゃないだろうね」。
まさかそんなことは! でも何かおきたら真っ先に疑われるのは私なのでしょうか…。
どなたか梨園サスペンス『定九郎殺人事件』お書きになりませんか?

        ◯

再び『七段目」ですが、松嶋屋(仁左衛門)さんの由良之助では、<見立て>がないということを知ったのは先月の末。それまではああでもないこうでもないとない知恵を絞っておりました。
ひとつ思いついたのは、扇を開いた5人の太鼓持ちに、輪になって追いかけっこをしてもらって、それからその扇で松嶋屋さんの紋を作って、「<追っかけ>銀杏はどうじゃいな」…うまくないな、あんまり…。