梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第四夜

2009年09月30日 | 芝居
午前11時より<総ざらい>を行い、その後、第一幕のみの<初日通り舞台稽古>になるという、珍しいお稽古でした。

<総ざらい>は初めてのノンストップ。多少の不具合もございましたが、この物語の流れ、勢いが初めてわかりました。思った以上にテンポがでておりまして、長めの映画1本分くらいの上演時間になりそうです。凝縮された、濃い空間をどう作り出すか。稽古後のダメ出しがあってから、小一時間で舞台稽古の幕が開く…。稽古着を脱ぎ去り、バタバタと化粧をして衣裳を着て、すぐさま本舞台で演技を…といきたいところですが、新作の舞台稽古はそんな甘いものではございません。

各場ごとに、装置のチェック(道具調べ)から始まり、登場人物の立ち位置、動線の決定(居所合わせ)、照明の変化の確認(明かり合わせ)、特殊効果や仕掛けがあれば、そのテストと手直し(テクニカルリハーサル)、場合によっては衣裳や化粧、小道具の調整も行なった上で、一度通して演じてみて、その後改めてダメだしがあるわけですから、場面ごとにかなりの時間がかかるのです!

覚悟していたことは申せ、予想以上に<今>決めなくてはいけないことが多く、時間がかかりました…。
第一幕は、2つの場面を残して時間いっぱいとなり、これは翌日に持ち越し(いわゆる“預かり”となったわけです)となりました。
一からどころかゼロから作り上げる芝居ですから、当然のことと思います。そのために、4日間も舞台稽古が予定されているのですからね。

               ◯

…当月の<ええじゃないか>は曲調も振り付けも全く違う斬新なものとなっております。
2ヶ月目の私の扮装はこの通り…


ちなみに先月のワタクシはこちらから。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第三夜

2009年09月29日 | 芝居
11時より、2回目の<附立>。

<プロローグ>のええじゃないかは、お陰様で一発OKでした。昨日の録音でかなりの数歌ったので、出演者一同、歌詞が頭に入ったのがよかったのですね。
…このええじゃないか、さんざん歌い踊り狂ったところで、一転、突如現れた人間豹に襲われる修羅場となりますが、ここもなかなか大変です。数分間、舞台中を泣き叫びながら逃げ惑うおぞましい光景をスキなく見せるには、集中力が必要です。
演出の高麗屋(幸四郎)さんがおっしゃる、「気の抜けた人はすぐわかる」とのお言葉の重さ(というか怖さ…)。
とにもかくにも、お客様を物語へと引き込むパワーを、我々で生み出さなければなりません!

さて、明日はもう1回目の<舞台稽古>がございますが、衣裳、小道具、大道具、そして仕掛けといった諸々の準備も、いよいよ大詰となっております。
一昨年の国立劇場での『うぐいす塚』上演時の記事でも申し述べましたが、復活にせよ新作にせよ、「お手本がない作品」を上演するにあたっては、台本を読み込んだ上で、衣裳や鬘といった扮装、それに合わせた持ち道具のイメージを一から作らねばなりません。逆にいえば、そのイメージに基づいて、稽古場で演技を作っていったり、下座音楽を決めたりすることもあるくらいですから、大道具の装置も含め、ビジュアル面の準備は非常に大切であり、難しいのです。

先月の歌舞伎座公演中から、衣裳や鬘はそれぞれの担当とご相談して仕立てられ、今日劇場に運ばれました。大道具さん、小道具さんは、この記事を書いている今(午後11時)も、最後の追い込み作業をなすっていらっしゃることと思いますし、特殊技術専門のアトリエ・カオスの皆様もご同様でしょう。
我々も、それぞれの師匠と各スタッフの皆様との間に入って、明日の舞台稽古が少しでもスムースに進むよう、色々と打ち合わせをさせて頂くことになるのですが、師匠演じます陰陽師・鏑木幻斎のことにつきましても、
小道具方さんと、祭壇になにを飾るのかとか、どんな扇を持つのか。
衣裳方さんと、どの場で何を着て、いつ着替えることになるのか。
大道具のことでは舞台監督の方と、セリ下がりのきっかけや登退場の段取り、仕掛けの方法を伺いました。

しっかり打ち合わせしたと思っても、イザ舞台稽古をやってみると、どんどん変わってしまうということもあるのですけれど、そんなときこそ、どれだけ事前に把握していたかで、迅速な対応ができるかできないかが変わってくるんですよ。
なにかを生み出す、作り出すために、必要な時間と申しましょうか、わかっておかなきゃいけないことの多さ…。
これとても、経験を積んでいれば<応用>が利くのでしょうけれど、私はまだまだ…。

新しい芝居が生まれる瞬間に立ち会える幸せ、喜びとともに、大変さもひしひしと感じております。





<乱歩歌舞伎>体験日記・第二夜

2009年09月28日 | 芝居
楽屋作りを朝から行い、高麗屋(染五郎)さんの行う宙乗りの関係者は安全祈願祭とお祓い。
11時から<顔寄せ>、そして<附立>となりました。

<プロローグ>のええじゃないかが難しい~! 速いテンポの歌をうたいながら踊らなくてはならないのですが、油断すると間がずれてしまうし、集団演技で大切なフォーメーションも気にしなくてはいけないし、昨日も書きましたけど、歌詞を思い出してると振りを忘れ、振りを考えていると歌詞が出てこない!

今日しょっぱなの稽古なぞ、いっとう最初で歌詞が出てこなくなり、歌詞が出ないから歌えないので踊ることもできず、完全に<停電>してしまい、恥ずかしいかぎりでした。慣れるのにはまだまだ時間がかかりそうですが、今日は何回もここの箇所を小返しして下さったので、だいぶ体に入ってきました。
それにしても、“歌い踊る”ということが、こんなに息が切れるとは! ミュージカルの方なんか、どうやってらっしゃるのでしょう!? 
…20人の動きが、おのおの猥雑に、激しく強くということで、揃えなくてもよいというのが有難いところで、これが<一糸乱れぬ>なんてご指示でしたら、私は徹夜でお稽古しても追いつかないでしょう…。
ただ、高麗屋(幸四郎)さんがおっしゃられた、貧困に喘ぎながらも、時代に反発しようとしている町人たちの、一揆ににも似た<激しい気持ちの訴え>が、少しでも観客の皆様に伝わるように。それだけは心して勤めたいと思います。

踊りながらの生歌は、我々ではどうしても弱くなる箇所もあるので、録音したものも同時にかぶせることになりました。国立劇場の<録音室>(こんな部屋があったんだ!)で、20人が揃って「ええじゃないか ええじゃないか」と吹き込む光景はなかなか面白いものでしたが、一定のテンポで歌い続けないと具合が悪いということで、試行錯誤しながらの録音でした。
他に、人間豹に襲われるときの悲鳴、わめき声も収録いたしましたが、スタッフ方の「それでは、『助けてくれ~』テイク1…」などという指示がなんだか面白くて、ツボでした。
何にもない壁に向って心を込めて叫んだり助けを求めたりというのも不思議な体験でした。声優さんはどうやっていらっしゃるの?

                 ◯

今日の稽古は6時間くらいでしたでしょうか。台本も変われば音楽も変わる、振りも立廻りもどんどん変わっています。
迅速に対応する力を大いに養うことになる、当月のお稽古場です。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第一夜

2009年09月27日 | 芝居
歌舞伎座<九月大歌舞伎>千穐楽から休む間も無く、国立劇場十月公演『京乱噂鉤爪』の稽古が始まりました。

私は「プロローグ」の<群衆(女)>、1幕2場「鴨川堤」の<物乞いの女>、2幕1場「町人3(女)」のお役を頂戴いたしましたが、本日はお稽古に先立ちまして、《衣裳合わせ》がございました。
この度の舞台では、場面によって、従来の歌舞伎衣裳とは趣を変えたものを着用するのだそうです。衣裳コーディネートの方がいろいろとお見立てくださり、出演者全員が実際に着たところで、演出であられる高麗屋(幸四郎)さんがご覧になり、色みや形をご修正下さいました。…こういうのを「衣裳パレード」っていうんですか?

本日は<立稽古>でしたが、高麗屋さんがおっしゃられました通り、一週間で新しい芝居を作り上げることは『奇跡に近い』わけで(『野田版研辰の討たれ』は2週間くらいかけましたかね、でもこれだって相当短いですよ)、その奇跡を起こさなくてはならないのですから大変です!
今日は各役各演技を掘り下げるというより、段取りをつけるのが主眼の"荒立ち"という感じでしたが、7時間かかりました…。

これから、さらに動きや音楽を整理しつつ、それぞれのお役の気持ちを掴んで、演技を生み出していくわけですが、楽しみでもあり、不安でもあり…。有り難いことにセリフも頂戴いたしましたので、全くの新作とは申しながら、やっぱり歌舞伎でございますから、その点重々気をつけて、勉強させていただきますので、よろしくお願い申上げます。

ちなみに<プロローグ>の群衆は「ええじゃないか」を踊るのです(幕末ですので)。まさか2か月続けてええじゃないかを叫ぶことになるとは思いませんでした。リズムと歌詞が違うので、ただ今頭が混乱しておりマス。踊りは20名によるテンポの早い群舞。みんなと頑張ろ~!

あっという間のような気がしました

2009年09月26日 | 芝居
歌舞伎座さよなら公演<九月大歌舞伎>、無事に千穐楽を迎えることができました。有り難うございました。

『竜馬がゆく』の<ええじゃないか>の女、『桔梗旗揚』「馬盥」の腰元。かたや2分、かたや40分余という、両極端な出番の2役でしたが、つつがなくひと月勤めおおせることができました。心より御礼申し上げます。

このたび、「馬盥」の腰元を勤めさせて頂くにあたりましては、先立って『先代萩 御殿』の腰元に出させて頂いたことがとても役に立ちました。
「御殿」は義太夫狂言のなかでもとりわけ格の高い作品、その中の、八汐対政岡、そして千松の死という緊迫した場面に身を置くという経験を、至らぬ身ながら、ひと月勉強させて頂きました。そのおかげで、今回、おなじような緊張感をたたえた「馬盥」の場に臨むにあたっての気構えと申しましょうか、雰囲気の掴み方がわりあいと自然にできたように思います。

もちろん「御殿」は義太夫狂言、「馬盥」は南北翁の作品ですから、全く同じ雰囲気にはなりませんが、もし「御殿」を経験しないでいきなり「馬盥」に出ていたら、緊張の度合いはかなり違っていたんじゃないかなぁ(しかも長いしねェ…)。
これからも、少しずつでも前進して行ければと思います。とにかく経験、経験! 女形になってからたった4年です。いろんな作品のいろんなお役を勉強して、早くみんなに追いつかなくちゃ!

<ええじゃないか>は毎日楽しく演じることができました。三味線を弾きながら歌うのは、最初は大変でしたけど(どっちかがわからなくなる!)、慣れたらより面白く、浮かれた感じで「乱入」できました。台本には男装した女とございましたが、他の方との兼ね合いもありましたので、あまりそのことにはこだわらない化粧・拵えにいたしましたがいかがだったでしょうか? へんにいじくりすぎてはいけないですし、といって物足りなくても雰囲気がでませんから、「ご自由に」というのは難しいですね。

師匠19年ぶりの『鈴ヶ森』に携わることができましたのも勉強になりましたが、タイトルにもいたしましたが、なんだか今月はあっという間でした。1年も4分の3が終わってしまいました。残りの3ヶ月も、楽しく、真剣に勤めてまいります。

歌舞伎座風景・3

2009年09月25日 | 芝居
私たちが普段過ごす名題下部屋の一角に飾られた額…。
立廻り等で、名題下俳優が<みんなで>受賞した賞状たちなのです。
写真に入らなかったものも含めて15、6枚はありますでしょうか。数十年前のものからつい最近のものまで、先輩、仲間の栄誉が讃えられております。

私が関係しているものもひとつ…。

(見にくくて申し訳ないです)

平成15年11月新橋演舞場『宮本武蔵』で、武蔵に次々と斬り殺される<吉岡の門人>の一人をさせて頂きましたおりに、「立廻り一同へ」ということで頂戴したものです。全体として賞は頂きましたが、私は不出来でした。情けないですネ。

こういうものも、建て替え中はどうなるのでしょうか…?

『京乱噂鉤爪』を前に

2009年09月21日 | 芝居
映画『陰陽師』を観る。
師匠演じる悪の陰陽師<鏑木幻斎>は、映画で言えば真田広之さんの役どころかな?

本屋さんで『呪術の本』を買う。
陰陽師の使った呪符や、儀式の作法を調査中。もっと詳しいコトが知りたいのですが…。

京都出身の後輩に、京都弁を習う。
私がさせて頂く<町人の女(三)>のセリフ、舞台が京都なものですからね。
しかし難しいナァ、微妙な抑揚が…。
わざとらしくならないように気をつけます。

昼間には、歌舞伎座ビル地下の稽古場での<抜き稽古>も行われています。
着々と、『人間豹の最期』の準備は始まっているのです。


闇を貫く旋律

2009年09月20日 | 芝居
数多の雲助を切り倒した権八。
足下に落ちていた鞘を見つけ、中に詰まった砂(浜辺ですからね)を落とし、刀を納めようとしてフト気がつく提灯の明かり。
刃こぼれはないか確かめようとその灯に近づき、かざす刀身。
まず差表を上から下へ、続いて差裏を下から上へと確かめてゆくその視線の先に見えた、長兵衛の眼差し。
ハッとして飛び退く権八を呼び止める、ご存知「お若けェの、お待ちなせえやし」の名台詞…。

『鈴ケ森』の、権八と長兵衛の、運命の出会いの光景ですが、ここで使われている下座音楽が<しのび三重(さんじゅう)>でございます。

細棹三味線の,3の糸の高い勘所で「チチチチチチ…」と細かく弾くその音色と、合間に「ボーン」と入る鐘の音は、シンプルにして大きなインパクト。
これが役者の動きに合わせて繰り返されるのです。
この『鈴ケ森』では、上記の場面を中心に、数カ所で使われております。

<三重>という用語は,義太夫の三味線にもございますけれども、どちらも、場面の状況、演技に応じて使用される、決まった旋律のこと、とお考え頂いてよろしいかと思います。
下座音楽の<三重>といえば、『熊谷陣屋』や『忠臣蔵 四段目』で、花道を去る熊谷、由良之助に合わせての<送り三重>とか、『曽我対面』のみに使われる、五郎十郎兄弟の出に伴う<対面三重>、『忠臣蔵』の三段目と四段目の間(転換中)に演奏される<つなぎ三重>というものもありますが、他にもいろいろとあるようですね。名称と用例を調べなくては!

<忍び三重>が使われる状況は、たいていの場合暗闇で、しかも凄みのある演技に合わせるのがもっぱらです。
…11月の『忠臣蔵 五段目』で、師匠が勤める定九郎の演技にも、この三重が使われます。偶然とはいえ、同じ役者が続けてこの三重を使うというのも、面白いですね。




コッピーが来た!

2009年09月19日 | 芝居
新しい家族ができました。
魚ちゃんですけれど…。

「コッピー」(アカヒレとも)という種類です。中国は広東省が原産とかや。
小さなビンの中でも暮らせる、丈夫な品種だそうで、ずぼらな私にはピッタリです。

小学校の頃、メダカやザリガニを飼って以来のペット。
いや~、可愛いです!!

巡業先の宿にも連れてゆこう。
なにせ貯金箱くらいのビンですから。手持ちで、ね。

初めて観たのは天王寺屋さんの紅長でしたなァ…(16年前)

2009年09月16日 | 芝居
夜の部『松竹梅湯島掛額』の「お土砂」の場は、戸板康二氏も「いかにものんきな時代の、ドタバタ喜劇」と述べておられますが、歌舞伎には珍しい、全編が笑いと洒落でまぶされた作品です。
それを大真面目に、真剣にやるからこその、「大人の芝居」なのですが、楽屋落ちがあったり、時事ネタがあったり、アドリブがポンと入ったりと、台本どおりにならないところの面白さも、御覧下さる皆様におかれましてはお楽しみの一つかと存じます。

私も、平成10年11月の松竹座で、今回と同じく播磨屋(吉右衛門)さんの紅長によりますこの演目に、捕手の役で出演させて頂きましたが、まだ芸名も頂いていない頃ですので、お稽古の時点で笑いがまきおこるような,良い意味での<ゆるさ>がある雰囲気に、ちょっと驚くと同時に、毎日楽しんで勤めさせて頂いた記憶がございます。

中盤で捕手一同が「お七はどこじゃ,お七はどこじゃ」と、下座に合わせて囃しながら探しまわるくだりがございますね。
捕手のひとりが、結局お七がいないと報告するときに、ギャグと申しましょうか洒落と申しましょうか、面白オカシイことをいうのが決まりでして、当月も先輩がなすっておいでですが、私のときなどは、お笑いの本場大阪での上演で、俄然捕手一同の意欲がわいたのでしょうか、ほぼ日替わりのネタでやったような…。
先輩が「銭形平次」のテーマをひとくさり唄って(私はコーラス)、『七はいないがハチはいる』みたいなことを言ったりね…。(文で書くと面白くないネ)

その他、お櫃のご飯で喉を詰まらす坊さんが“くいだおれ人形”に変身したり、「551の蓬莱が食べたい」とか当て込みの台詞があったり、吉本のギャクをやったり。
アイディア次第でいろいろできる作品は数少ないですから、凝り性の方は腕の見せ所!?

…お七の母、おたけは、亡くなられた紀伊国屋(宗十郎)さんでした。
お稽古のときに、我々の捕手のくだりを御覧になって、
「自分が若い頃のこの芝居で、捕手がお七を探す動きを、わざと<ナンバ>にしていたのが、ギクシャクした感じがあってとても面白かった」と教えて下さいましたのを、今でも思い出します…。

紀伊国屋さんは、千穐楽にはご自分も女亡者になって早桶に入ったのですよ!

 



年末までの舞台

2009年09月14日 | 芝居
歌舞伎座さよなら公演《九月大歌舞伎》、本日<中日>です。
けっこう長いこと劇場内にいるわりには、日々の流れが速く感じられます。

さてさて、歌舞伎座11月興行の詳細も発表になりましたので、梅玉一門の年内のスケジュールをご案内させて頂きます。


10月 国立劇場『京乱噂鉤爪 ~人間豹の最期~』

昨年大好評だった『乱歩歌舞伎』第2弾です。前回大凧に乗って大空に消えた人間豹、恩田乱学が、今度は京都に出現です!
師匠は悪の陰陽師、<鏑木幻斎>をなさいます。相当な悪人だそうですが(台本がまだ届いてないので詳しくは知りませんケド)、
どんなことになるのでしょう? 梅丸も出演が決まりました。

11月 歌舞伎座『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』

<さよなら公演>もラストスパート、いよいよ大作の上演です。この度の十一段目は「引揚げ」もつきます。
師匠は、大序・三段目<桃井若狭之助>、五段目<斧定九郎>、十一段目<服部逸郎>の3役。まさに朝から晩まで、です!


12月 京都南座 『當る寅年 吉例顔見世興行』

南座の顔見世に出演させて頂きますのは、もう何回目になるのでしょう? 師匠にとりましては、今年最初で最後の地方公演です。(もちろん私にとっても…)
昼の部の序幕に、岡本綺堂の『佐々木高綱』で<佐々木高綱>、夜の部には音羽屋(菊五郎)さんの『土蜘』で、“独り武者”<平井保昌>をお勤めになります。

              ◯

こう書いてしまうと、もう1年が終わってしまったような気がする…。
先が見えてしまう、ということは、良いようでもあり、寂しくもあり…。
とにかく残り3ヶ月も、元気に乗り切りたいものです!

『お祭り』の趣向

2009年09月13日 | 芝居
昼の部の『お祭り』では、清元の皆様が、黒紋付の着流しに、浅葱と白の“半染め”の手ぬぐいを<吉原かぶり>にした姿で演奏されていらっしゃいます。
上手にしつらえられた前後2列の緋毛氈を敷いた床几に、三味線方は腰掛けて前列に、浄瑠璃方は正座して後列に。三味線方の皆さんは白緒の草履も履いています。
この演目で、このようなスタイルでの演奏は、なかなか珍しいことのように思います。

『お祭り佐七』の序幕の祭礼の場、町内の余興として<落人>を一くさり演じる場面でも、清元ご連中とお囃子さんが同様の拵えで舞台に立ちます。これは、演奏者というよりも、ひとつのお役として舞台に<出演>していると考えたほうがよいわけで、『幡随院長兵衛』の序幕村山座、長唄の皆様による、大薩摩節<金平法問諍>の演奏も同じ趣向でしょう。頭に手ぬぐいや頭巾をかぶっているのは、鬘をかけなくてもそれ“らしく”見せるためで、とにかくこの一幕の間は、演奏の皆様も登場人物のひとり、同じ時間に存在しているというわけです。

では,今月の『お祭り』。
舞台稽古のときにこの舞台面を拝見して、オヤと思ったのですが、そういえば今月の『お祭り』は、「名残惜木挽の賑(なごりをおしむ こびきのにぎわい」という副題がついております通り、もともとの題材である<山王祭>にこだわらず、歌舞伎座がある木挽町界隈でのご祭礼という設定になっております。

…木挽町の一角で、賑やかに演奏が始まって(土地のお師匠さん方か、それとも腕に覚えの兄ィさん達か…?)、それに合わせて芸者や鳶、手古舞が踊りを披露している…。

そう考えてみた次第です。

皆様はどうお感じになりましたか?





お宝を探せ

2009年09月12日 | 芝居
増え続ける筋書き、台本、雑誌や資料をドカンと整理するために、収納棚を大量に購入しました。
組み立てるのも大変ですが、荷物の入れ替えも一苦労…。
まだ半分も済んでいませんので、先が思いやられますが、嬉しい発見も。

知り合いの方から、「今はもう使わないから」といって、その方の家に眠っていた邦楽関係の教本、譜面をまとめて送ってもらっていたのですが、改めて整理してみてビックリ。お能の謡本、端唄・小唄など俗曲の譜、常磐津の浄瑠璃本(珍しい曲多数)、調べものに重宝するだけでなく、お稽古にも使えるものばかりで、早く見つけていりゃァよかったのにと後悔もいたしましたが、これからドンドン使っていこうと思っております。

端唄や小唄は、お芝居でも随所で使われてますからね。今月の「ええじゃないか」みたいに、いつ舞台で弾くことになるかもわからないし…。

まだ何か見つかるかも!?
俄然楽しくなってきた荷物整理でした。

対立の現場にいて

2009年09月11日 | 芝居
昼の部『時今也桔梗旗揚』は、<義太夫が入らない時代物>と申せばよいのでしょうか、何とも表現に苦労する演目です。
ですが、光秀と春長のやり取りの、息詰るような展開、そして先人が作り上げた<型>の魅力、その濃厚さ。浄瑠璃が入っていないということにあとから気がつくような、そんな重量感が、この作品の魅力なのでしょう。

光秀が、そうとは知らず,妻の切髪が入った木箱を開け、オヤと思案し、ハッと気がつくまでの時間。
これが義太夫狂言でしたら、いわゆる<カラ二>が何回か「トーン」と入るところでしょう。それがこの芝居では全くの無音の時間となります。この時間の濃密さ…!
お客様の視線、気持ちが、グングン光秀に集まってゆくのが、腰元役として舞台に居並んでおりましても感ぜられます。

無音の魅力の一方で、下座音楽の力も負けてはいません。
演技に付随して、要所要所で場の空気をグッと締める大太鼓や鐘。
歌舞伎ってスゴいなあと思います。ただのBGMでも効果音でもない、まさに役の気持ち、お芝居の展開そのものが、音で表現されるのですからね…。

40分近い正座の行は確かに辛いですが、こういう場面に出られたことは有難い!
4月の『先代萩』と同じく、ピンと張りつめた空気に身を置くということ。勉強というか、“修行”ですね、まさしく。
<腰元>役は本当に難しいです…。