瀬崎祐の本棚

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地上十センチ  14号  (2017/02)  東京

2017-02-16 21:18:07 | 「た行」で始まる詩誌
 和田まさ子の個人誌。表紙には、いつも楽しいフィリップ・ジョルダーノの軽快で幻想的な絵。

 「髪を洗う」宿久理花子、は寄稿作品。
 浴室でゆうべ抜け落ちた髪の行方を探っている。ジョシであることを問い直しているのだが、その行為自体がとても不安気味だ。行末で終わる言葉かとみせて、その言葉は次行へと続いたりする。だから、読む呼吸、リズムが分断されたり、慌てて引き延ばされたりする。作品が孕んでいる不安定な気持ちが、その分断と継続で巧みに増幅されている。

   黒髪を洗うか
   のじょのいたいけ
   ない
   ろを好んだかってのあの指に、
   入念に梳かされたり巻かれたり
   擦りこまれたりはもうぜったいに
   されない黒髪は(以下、略)

 「抜けてくる」和田まさ子。
 板の上に積まれていたという「思想の杖」とは、いったい何だったのだろう。「年月はそのあたりに太い草を生やした」ともいうことだ。しかし、今はすべてが枯れきっている。とにかく話者はそんな場所へ来ているわけだ。ここへ来るだけの理由もあったのだろうし、もしかすれば目的もあったのかもしれない。でも、そんなことは説明しなくてもいいことだ。

   だれかが
   木でつくられた人型を通る
   待っていれば
   やがて来る
   壊れながら 抜けてくる
コメント
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