第4詩集。127頁に30編を収める。
文字は丸ゴチックで印字されていて、軽快な感じを与えている。語り口も普通を装った話し言葉風でさりげない。しかしそこには、苦笑いで何とか自分を励まそうとしている必死さが透いて見えるのだ。
他者の間に紛れ込んでいる自分が何者であるのか、自問もしている。他者との関係が捻れていて、社会の中での自分の存在に不安があるのだろう。
たとえば「待ち合わせ」では、私は駅前の犬の銅像の前で人を待っているのだが、誰と待ち合わせをしているのかが思い出せない。そして、待ち合わせの場所も時間も不確かなのだ。適当に目があった中年男に、僕が待ち合わせをした人でしょうか、と声をかけると、なんと、多分そうだという。
この見ず知らずの中年男との
(多分)久しぶりの再会を喜んだのだが
私の前には 新たに
この男と 一体 何の用件で待ち合わせしたのか?
という問題が 立ちはだかっていたのだった
私ばかりか、相手も同じ状況を抱えていたという、この脱力感が勝嶋作品の持ち味だが、同時に不気味な現代社会での人間関係の風刺にもなっている。本当に用事のある相手など、いるのだろうか、と。
後半に収められている「ゴッホの小さな白い花」は、そんな作者の優しい一面がよくあらわれた作品。ゴッホ展で会場の人たちは、ヒマワリや糸杉の絵を「天才だ/スゴイスゴイと」感心しているのだが、その一方で「キチガイ になって自殺したんでしょ」とも言っているわけだ。片隅にひっそりと展示されている小さな絵には白い花が描かれていたのだが、それに目を留めた作者は、
もしかしたら ゴッホは
炎 や ひまわり じゃなくて
ほんとうは
この 小さな白い花 に
なりたかったのかもしれない
文字は丸ゴチックで印字されていて、軽快な感じを与えている。語り口も普通を装った話し言葉風でさりげない。しかしそこには、苦笑いで何とか自分を励まそうとしている必死さが透いて見えるのだ。
他者の間に紛れ込んでいる自分が何者であるのか、自問もしている。他者との関係が捻れていて、社会の中での自分の存在に不安があるのだろう。
たとえば「待ち合わせ」では、私は駅前の犬の銅像の前で人を待っているのだが、誰と待ち合わせをしているのかが思い出せない。そして、待ち合わせの場所も時間も不確かなのだ。適当に目があった中年男に、僕が待ち合わせをした人でしょうか、と声をかけると、なんと、多分そうだという。
この見ず知らずの中年男との
(多分)久しぶりの再会を喜んだのだが
私の前には 新たに
この男と 一体 何の用件で待ち合わせしたのか?
という問題が 立ちはだかっていたのだった
私ばかりか、相手も同じ状況を抱えていたという、この脱力感が勝嶋作品の持ち味だが、同時に不気味な現代社会での人間関係の風刺にもなっている。本当に用事のある相手など、いるのだろうか、と。
後半に収められている「ゴッホの小さな白い花」は、そんな作者の優しい一面がよくあらわれた作品。ゴッホ展で会場の人たちは、ヒマワリや糸杉の絵を「天才だ/スゴイスゴイと」感心しているのだが、その一方で「キチガイ になって自殺したんでしょ」とも言っているわけだ。片隅にひっそりと展示されている小さな絵には白い花が描かれていたのだが、それに目を留めた作者は、
もしかしたら ゴッホは
炎 や ひまわり じゃなくて
ほんとうは
この 小さな白い花 に
なりたかったのかもしれない