瀬崎祐の本棚

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詩集「飛ぶ」  長津功三良  (2009/06)  コールサック社

2009-06-24 22:06:16 | 詩集
 第8詩集でソフト・カバーの140頁、32編を収める。福谷昭二の栞が付く。
 長津功三良といえばヒロシマの原爆を取り上げたいくつもの作品、詩集が代表的なものとしてすぐに思い浮かぶ。しかし、今回の詩集は、「生きること」「またこんな話を聞きました」などのいくつかの作品を除いては、直接的に原爆を詩ってはいない。方言を巧みに取り入れた生活に密着した作品や、今は亡い「女(おまえ)」を偲ぶ作品などで、作者の体温を感じさせるものが主体となっている。次の作品は、村の長野郷というところにある木造の観音菩薩像を詩っている。

   かんのんさんは とてもふるいもんじ
   いきみごうの だいじなもんじゃけぇの
   みんなじおまもりしちいかにゃぁいけんので
   ちゃんとおさいせんあげち
   われらぁ まいつき いっかいは おまいりせぇや
   そうでなきゃぁ くどくなんかぁ ありゃぁせんど
                  (「新ちゃんちの観音さん」より)

 観音さんを守ってきた新ちゃんの言葉が生き生きとあらわされていて、人が生きるということはこういう肌触りなのだと感じさせられる。
 もちろん、今回の詩集に収められた作品を生きている作者が置かれている位置は、原爆体験がもたらした憤りの上にあることは言うまでもない。
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