瀬崎祐の本棚

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詩集「母の魔法」  愛敬浩一  (2015/07)  書肆山住

2015-07-26 11:40:44 | 詩集
 第9詩集。「詩的現代叢書」の7冊目。68頁に25編を収め、田口三舩の跋文が付いている。
 群馬の上毛新聞に連載したり、雑誌「上州路」に発表したりした作品である。1編を除いて、20行から30行足らずの作品で見開き2頁におさまっている。
 「赤城山」は、通勤の車中から感じる北川の山を詩っている。私は特に見ようとは思わないのだが、赤城山は毎日行ったり来たりしている「米粒のような/私の車」を見ている。今日も同じように走っているのだが、

   それでも五月だから
   どこか五月のような走り方だ
   私の誕生月、五月よ

発表媒体の関係から、おそらくは詩を書かない読者も想定して書かれていると思われ、平易な書き方に工夫されている。
 自分に引き換えて考えれば、通常の書き方が読者を想定していないというわけではないのだが、それでも書きたいように(我が儘に)書くわけで、平易な書き方への工夫はなおざりにしてしまいがちだ。
 この詩集に収められた作品のような書き方では、作者が我慢しなければならない部分があるわけで、なおそのうえで書ききらなければならない。そのために切り捨てられるものと、かえって付け加わるものがあるのだろう。
 「母の魔法」。小学生の私が干してあったシャツをそのまま着ようとした時に、母が「」ささっと畳み」、「ぽんと叩いてから/笑顔で私に差し出した」話。すぐに着るのに、とも思ったのだが、

   母は
   まるで魔法でもかけるように
   シャツを畳んだのだ
   たぶん私は
   何か、とても大切なことを学んだのだと思う

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