瀬崎祐の本棚

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詩集「わたしが失ったのは」  島田陽子  (2008/12)  編集工房ノア

2008-12-09 23:19:30 | 詩集
 110頁で34編を収める。大腸癌が見つかり、その手術をうけ、術後の化学療法をうけ、その後の経過観察をしている日々が詩われている。これから我が身がどうなっていくのかという、まさにぎりぎりの日々の心の記録が、内視鏡検査、画像検査、手術告知、手術日の様子、などをとおしてなされている。

   滝は滝になりたくてなったのではない
   落ちなければならないことなど
   崖っぷちに来るまで知らなかったのだ
   思いとどまることも
   引き返すことも赦されなかった
                           (「滝」より)

 この作品は、発表時期から推察すると今回の闘病が始まる前の作品であるが、作品の後半部分では滝を落ちた流れは「新しい旅も用意されていた/岩を縫って川は再び走りはじめる」と、大きな転機を迎えたときの作者の心の有り様がよく表されている。詩集のタイトルは「わたしが失ったのは」であるが、闘病生活をくぐり抜けることによって、”わたしが得たもの”も確かにあったに違いない。
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