第4詩集。115頁に26編を収める。吉田文憲、神谷光信の栞が付く。
清楚なたたずまいで、思わず姿勢を正さずにはいられないような気にさせる詩集である。
「Benedictus」。壊れた天窓からの冷気に音楽が聞こえてくるのだ。この場所、この時間になにか崇高な歓びが訪れているようなのだ。その方面には疎いのだが、タイトルはミサの賛歌から来ているようだ。
岩塩のような天の涯
一本の樹のふかい信頼を呼吸する
この星の肺腑もあなたを通している
どの作品でも、言葉は具体的な事柄からは離れて、少し浮き上がっているように感じられる。人の動作や感情も詩われているのだが、それらが日常的な物事として持つ重さを振りはらって、そこから抽出したものだけをまとって漂いだしているようなのだ。
「海の言」は「ふたつの眼をもつ生きものは/何でもふたつに分けたがる」と始まる。海の水にまでもことばの線を引いて分けたがると、鷹揚さを失った人間を少し皮肉に捉える。存在するということは、そういうことではないのだろう。誰でもそんなことは越えたところで存在しているのであり、
嘆くとき祈るとき
どんな視線も届かないひかる波動をきみに伝える
いつの日かきみがきみのかたちを失っても
ぼくの刹那すべてにきみがいる
まるごと息吹でいる
直接的に詩われているわけではないのだが、この作品をはじめとして、歴史的にくりかえされてきた人間の営みの愚かさを乗り越えようとする意志が感じられる。
清楚なたたずまいで、思わず姿勢を正さずにはいられないような気にさせる詩集である。
「Benedictus」。壊れた天窓からの冷気に音楽が聞こえてくるのだ。この場所、この時間になにか崇高な歓びが訪れているようなのだ。その方面には疎いのだが、タイトルはミサの賛歌から来ているようだ。
岩塩のような天の涯
一本の樹のふかい信頼を呼吸する
この星の肺腑もあなたを通している
どの作品でも、言葉は具体的な事柄からは離れて、少し浮き上がっているように感じられる。人の動作や感情も詩われているのだが、それらが日常的な物事として持つ重さを振りはらって、そこから抽出したものだけをまとって漂いだしているようなのだ。
「海の言」は「ふたつの眼をもつ生きものは/何でもふたつに分けたがる」と始まる。海の水にまでもことばの線を引いて分けたがると、鷹揚さを失った人間を少し皮肉に捉える。存在するということは、そういうことではないのだろう。誰でもそんなことは越えたところで存在しているのであり、
嘆くとき祈るとき
どんな視線も届かないひかる波動をきみに伝える
いつの日かきみがきみのかたちを失っても
ぼくの刹那すべてにきみがいる
まるごと息吹でいる
直接的に詩われているわけではないのだが、この作品をはじめとして、歴史的にくりかえされてきた人間の営みの愚かさを乗り越えようとする意志が感じられる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます