第2詩集か。109頁に29編を収める。
「夜の窓」。夜があたりを覆い、残された幾つもの小さな窓には小さな世界がひとつひとつある。この夜という大きな布が取り去られたら、区切られた世界は混じりあうのだろうかと、話者は訝しく思っている。美しい幻想世界をみているようだ。
さまざまに傷ついてこぼれ落ちた
暮らしの名残を
世界という塊に戻すように
きれいに整えられたテーブルは
私たちの時を織りなす
新たな場所となるのだろうか
また青い夜が来れば、「やはり私たちは/それぞれの哀しみの/小さな窓を開けて空を見ている」のだ。茫漠とした孤独感が世界を包んでいる。
詩集タイトルの「アンティフォナ」は、ローマ・カトリックの修道院で詩編を朗唱する際に伴われた短い曲とのこと。歌が詩へと繋がっていくのだろう。
「遠い雨」。雨の音が私の内に底知れぬ淵を作り始める。そして遠い入江の巻貝の中にもひと粒の水が護られている。今、私に降る雨から思念は闇の中を彷徨う人々へひろがるのだが、雨の音は優しく、懐かしく打たれて睡り続けることしかできないのだ。これに続く最終連が強く心に残る。
巻貝の中に隠されていた一片の紙片に
記されたことばが
世界を創ったものだとしても
「前夜」は、「この夜の先へ行こう」と始まる。
静かに待つ人々の列に並んで
この舟に乗ることを承知して
忘れられる記憶を書き残して
それはなにか大事なもののために決断しなければならないことなのだろう。世界は残酷に拡がりゆくのだ。だからこそ話者たちは明日のために夜の寂寥へ舟を漕ぎ出すのだろう。
詩集全体の語り口には荘厳な雰囲気がある。宗教には疎いので単に空想するだけなのだが、敬虔なたたずまいが意識される以前のものとして作者にあるのかもしれない。そのような人が発する言葉は、その人のものでありながらも、発語の始まりの時点でなにか大いなるものに導かれているのではないかとも空想してしまう。
「夜の窓」。夜があたりを覆い、残された幾つもの小さな窓には小さな世界がひとつひとつある。この夜という大きな布が取り去られたら、区切られた世界は混じりあうのだろうかと、話者は訝しく思っている。美しい幻想世界をみているようだ。
さまざまに傷ついてこぼれ落ちた
暮らしの名残を
世界という塊に戻すように
きれいに整えられたテーブルは
私たちの時を織りなす
新たな場所となるのだろうか
また青い夜が来れば、「やはり私たちは/それぞれの哀しみの/小さな窓を開けて空を見ている」のだ。茫漠とした孤独感が世界を包んでいる。
詩集タイトルの「アンティフォナ」は、ローマ・カトリックの修道院で詩編を朗唱する際に伴われた短い曲とのこと。歌が詩へと繋がっていくのだろう。
「遠い雨」。雨の音が私の内に底知れぬ淵を作り始める。そして遠い入江の巻貝の中にもひと粒の水が護られている。今、私に降る雨から思念は闇の中を彷徨う人々へひろがるのだが、雨の音は優しく、懐かしく打たれて睡り続けることしかできないのだ。これに続く最終連が強く心に残る。
巻貝の中に隠されていた一片の紙片に
記されたことばが
世界を創ったものだとしても
「前夜」は、「この夜の先へ行こう」と始まる。
静かに待つ人々の列に並んで
この舟に乗ることを承知して
忘れられる記憶を書き残して
それはなにか大事なもののために決断しなければならないことなのだろう。世界は残酷に拡がりゆくのだ。だからこそ話者たちは明日のために夜の寂寥へ舟を漕ぎ出すのだろう。
詩集全体の語り口には荘厳な雰囲気がある。宗教には疎いので単に空想するだけなのだが、敬虔なたたずまいが意識される以前のものとして作者にあるのかもしれない。そのような人が発する言葉は、その人のものでありながらも、発語の始まりの時点でなにか大いなるものに導かれているのではないかとも空想してしまう。
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