瀬崎祐の本棚

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地上十センチ 18号  (2018/04)  東京

2018-05-15 18:09:01 | 「た行」で始まる詩誌
和田まさ子の個人誌。12頁。
表紙には軽快なフィリップ・ジョルダーノの絵で、毎号楽しみにしている。こんな奥行きのない世界にごちゃごちゃといろいろな夢の産物が同居するような、楽園のような絵が描けたらいいなあ。

「冬」久谷雉はゲスト作品。
タイトル通りに“冬”を描いているのだが、あたりは少しも寒くはない。ただ研ぎ済まされたものが気持ちを貫いていく。「年老いた/従姉妹たち」が来てくれるのだが、冬をむかえるためには、よその島からの便りを受けとれるようにしておかなくてはならないのだろう。

   牛乳びんを
   かばんの奥で鳴らして
   港の軒先を
   あかるくしてゆくような
   従姉妹たちだと
   いふ

この作品では「むかへた」「いふ」と、旧仮名使いがされている。その旧仮名が、どこか懐かしさを覚える光景の中に物語があるような作品によく合っていた。美しい作品。

「明日の準備」和田まさ子。
とてもわかりやすい、というか、言いたいことがとても素直に伝わってくるタイトルである。今号に和田は3編を載せているのだが、あとの2編のタイトルは「いい姿勢」「生きやすい路線」である。やはり直球勝負のタイトルである。

   自分がどれほどだめかはわかっているが
   靴の減り方はいわれないと気がつかない
   「その靴の底 左に傾いているよ」
   うしろからいわれて進めなくなった

なるほど、と思わされる。今日の自分はこんな風であったわけだ。狭いゲートでは姿勢を斜めにするし、持ちきれない本は置いていくわけだ。「手も足もたんねんに洗」って明日に備えるのだ、と、覚悟はできているわけだ。それだけ今日は大変だったのだろうな。
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1 コメント

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感謝! (和田まさ子)
2018-05-17 22:29:22
「地上十センチ」18号の詩誌評を書いてくださり、ありがとうございます。久谷雉さんの詩「冬」の作品理解を深めました。また、拙詩へのご批評をありがたく、感謝です。いつもあたたかな読みをしていただき、おことばを支えにしています。
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