瀬崎祐の本棚

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六分儀  35号  (2009/07)  東京

2009-09-11 18:04:14 | 「ら行」で始まる詩誌
 「くらげの自己責任」樋口伸子。
 タイトルからして奇妙であるが、展開される物語もすばらしく奇妙である。家の屋根からくらげが凧のように連なって空に揚がっているのだ。近所の人はなんとかしろと言ってくるし、行方不明だった叔父さんもあらわれる。くらげはさらに増えていく。くらげがあらわれ、それが増えるなどというのは、おそらく醜聞なのだろう。しかし、それはそれでかまわないではないか。「意地も誇りもなくして/この家系の景観をそこねっ放しの叔父さん」も憎めない人物で、つい、缶ビールなど差し出してしまうのだ。

   それよりじつは風呂場には
   子くじらが一頭 流れついてきて
   細い目で笑いながら育っている
   くにゅくにゅ くじらの意地と誇り  (最終連)

 どの家にも隠れて育っているものがあるのだろう。どこからともなくあらわれて、捨てることのできない、その家なりの意地と誇りを栄養にして育つのだろう。奇妙なできごとにとまどいながらも、それを受け入れているユーモア感がたまらんなあ。もしかすると、あの叔父さんも次第に増えていくのだろうか?
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