瀬崎祐の本棚

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詩誌「ガーネット」  97号  (2022/07)  兵庫 

2022-07-08 22:44:37 | 「か行」で始まる詩誌
「羽」高木敏次。
私が語っている男は何者なのか。私は男に対して何をすればよいのか、そして男は私にとってどのような意味を持つ人物なのか。二人の関係は不穏な雰囲気もありながら、とても大切にしているようでもある。人が川に沈むときにするような目をした男なのだ。そして「川があふれれば/その目が読み解くもの/見えなくて/私は濡れるだろう」というのだ。これに続くのは、

   読めない手紙なら引き上げたい
   できないのなら
   男だけでも
   引き止めたいのに

どこまでも真剣なのに、どこまで行っても何も明らかにはならない。話者と読者がいつまでもねじれた位置にいることが企まれているのだろう。

「夜凪」萩野なつみ。
風のない路地。そしてロータリーには「夜の横顔」が吹き溜まる。きみは離れていくようなのだが、話者はきみにかける励ましの言葉を自分のなかに沈めている。

   ささやかでやさしいおろかさで
   つなぎとめていた星が
   順番に燃えるから
   その時だけは
   怒りながら泣いていい

話者は一度はきみに手をのばそうとしたのか、それともその行為を自らに禁じたところから始まった言葉だったのか。おそらくきみが気づいていないであろう話者の言葉だけに、その静かさが美しい。

巻末にある「ガーネット・タイム」という同人のエッセイの欄で、神尾和寿が『「鎌倉殿の13人」による「仁義なき戦い」』を書いている。NHKらしからぬほどに謀殺、粛清がおこなわれている大河ドラマの登場人物を、深作欽二監督のヤクザ映画になぞらえている。北条義時を広能昌三だとするのを始めとして、両方のファンにとっては大変に面白い見立てだった。すると、小池栄子演じる頼朝の妻・政子は、広能昌三に指のつめ方を教えた山守組長の妻といったところか。「昌ちゃん、あんたが気ばらにゃいけんのよ」(笑)。
コメント
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