瀬崎祐の本棚

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視力  7号  (2015/04)  宮崎

2015-04-19 21:11:28 | 「さ行」で始まる詩誌
 同人は4人だが、1人が休会とのことで3人の作品を載せている。27頁。

 「アーモンドの森」外村京子。
アーモンドの実がどのようになるのか知らない。したがってこの作品がどこまで実際のアーモンドの森に即しているのかはわからないのだが、作品に書かれた森はたしかに物語での森となっている。それは「月夜に浮かぶ島」にあり、そこでは「ざわめきにつられて枝はふるえ/花はいっせいに開きはじめる」のだ。要するにそこは特別の森であり、特別のことが起こる場所なのだ。

   受粉してゆく青年の手もとに
   まっしろな花びらが散りつもる
   (彼の新しい機械は重い

 「三月の庭」本田寿。
 退屈だった日は日記に嘘を書くという。たとえば「桃の花が咲いた」と。すると本当に翌朝には桃の花が咲いていたのだ。別の日には「桃の花が散った」と書いたのに、満開のままだったりする。現実は嘘の記述に従ったり裏切ったりするのだ。一方で、書かれてしまったことが現実を支配するという思いはとても魅力的である。
 (余談になるが、映画「主人公はぼくだった」は、他人の書いている小説の通りに自分の現実が変化するというものだった。)
 しかし、「桃の花を空壜に挿した」と書いたら、

   庭先の桃の木が消えていた

   美しい嘘さえ現実によって罰されたのだ
   きょう あなただけが空虚な庭の中に立っている

コメント
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