瀬崎祐の本棚

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詩集「半跏思惟」  苗村吉昭  (2013/10)  編集工房ノア

2014-01-04 13:04:51 | 詩集
 第5詩集。125頁に30編を収める。
 4つの章に分けられており、「壱」の8作品では、世界が構築されるまでの7日間を創造主の独白という形で描いており、人を超えた時点での物語となっている。「四」は、半跏思惟像についての5作品となっている。こちらでも作者は仏像を通して人を超えた存在のものに相対している。
 その間に置かれた作品「弐」「参」の作品で、形式的にいえば、作者は人の世界を描いていると言える。
 三歳の娘と一緒にショッピング・センターの催事場にいる「キャラクター・ショー」。ショーの後で長蛇の列に並びサイン色紙を買い写真撮影をする。

   キャラクター・ショーは僕らの人生に似ている と
   娘はやがて大きくなり
   今日貰ったサイン色紙を捨てる日が来るだろう
   キャラクター・ショーなど子供騙しの嘘っぱちだと気づく日が来るだろう
   しかし僕ら大人の世界だって大人騙しの嘘っぱちだ
   僕らはみんなファスナーのない着ぐるみを着て
   それぞれの事情を隠しながら
   嘘の微笑みと偽りの手を振り続けている

 苦笑いをするしかないのだが、その世界を受け入れて人は育ち生きていくわけだ。
 地球を収めた小さなガラス玉をのぞき込む「ガラス玉」という作品。ガラス玉の中に俺は、頭上から俺に見られている俺を見つける。そして俺は自分の現在・過去・未来を理解する。誰もが一度は空想するような情景だが、今の自分を肯定しようとしている気持ちが快い。
コメント
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