瀬崎祐の本棚

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ひょうたん  51号  (2013/12)  神奈川

2014-01-16 20:43:46 | 「は行」で始まる詩誌
 「豆腐譚」小原宏延。
 真夜中に、「豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ」という言葉を思い出し、幼いころに豆腐を買いに行ったことを思い出している。
 豆腐は押せば容易に形が歪み、さらに力を加えれば崩れてしまう。それほどに柔らかいのに、自分だけで在るときにはくっきりとした形を保っている。柔らかいのだが、その形はきちんと保たれている。この作品の話者は、そんな豆腐が「薄暗い大きな水槽の底に/整然と沈んだ白い立方体」である様子に惹かれている。

   豆腐の角はするどく切り立ち、
   わずかな狂いもない
   ひとはわずかに狂っている

 そんな豆腐のきりりとした居住まいとひとの居住まいを比べているわけだ。狂わない形を保つことに畏敬の念を持っているようにも思える。しかし、その「わずかな狂い」がひとが生きているということの証左でもあるのだろうが。

   真夜中に豆腐の白い角
   を思い浮かべるなんて
   でもそんな夜を過ごすのは
   失われた時への
   曲がり角なのかもしれない

 幼い頃を過ぎて「角がとれてまるくなった」と言われるのだが、「それこそ死角ではないのか」と苦々しいようにも思っている。一方、豆腐は柔らかく崩れながらもいつまでも決して角を失わない。そんな「まるくならない/白い瓦礫」なのだ。
コメント
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