瀬崎祐の本棚

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詩集「蝋梅の道」「ピック、パック、ポック、パック」  谷内修三  (2013/10)  象形文字編集室

2013-11-16 23:16:14 | 詩集
 2冊の詩集を同時にいただいた。どちらもB5版の簡易製本で、前者は45頁に17編、後者は49頁に19編が収められている。
 「狼狽の道」の中の「冬の帰り道」は、情景描写を主とした7行の作品。ある小学校の前の道で、雲の切れ間から差した光が電信柱と交通標識の影を道に落としたのだ。

   影は静かに落ち着いていて動かない 光は表面を駆け抜けて行きそうだ
   まぶしい色が鳥になってすーっと滑るように飛んで行った
   赤坂三丁目の交差点まで道はまっすぐだ

 この最後の1行で話者の視線も光となって飛んで行く。実際には、飛んだことによって道がまっすぐなことにも気づいたのだろう。こうして、考えたのではなく感じたことによって生まれた作品となっている。
 「裁判所の裏の、」では、何故か向かっていた図書館へ行かずに引き返してしまう。そして「なぜ図書館へ行くのを止めたのか考え」ている。自分の行動なのだが、自分でも確固たる理由は思い当たらず、自分に説明ができない。ところが最後の2行で、

   ある日、そうやって
   午後の牡丹が崩れるのに突き当たった。

 何の脈絡もなく置かれたこの美しい2行が、説明無用で迫ってくる。作品には理屈は要らないのだということを改めて感じさせられた。 
 「ピック、パック、ポック、パック」に収められた作品の大部分では擬人化されたような”ことば”が主人公となっている。”ことば”は本の話を聞いたり、殺人の瞬間を描写したり、夢を見たり、快楽を求めて旅に出たりする。作者の想念の世界が”ことば”の言葉を借りて表出されている。そのために、感じる部分がいささか少ないように、感じられた。
コメント
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