瀬崎祐の本棚

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「NEKOHIME」  阿賀猥  (2011/09)  星雲社

2011-10-04 19:17:48 | 詩集
 阿賀隈の前詩集「転生炸裂馬鹿地獄割れて砕けて裂けて散るかも」のときにも、その装幀、内容の破天荒ぶりに呆気にとられたのだが、今回の本も表紙絵にはでっぷりとした猫のイラストが描かれている。頭にはちゃんと王冠も載っている。これが猫姫だな。
 本には朗読CDが1枚付いている。疾風という津軽三味線ユニットが演奏をおこない、それと呼応するように阿賀が5編の自作詩を朗読している。本の活字部分には、朗読されている詩作品、それに各作品にまつわる阿賀自身が書いたエピソード、それに浜江順子などが書いた三味線や朗読に関するエッセイ風の読み物、が収められている。
 阿賀の朗読は初めてこのCDで聴いたのだが、その劇的な雰囲気には驚いた。普通に詩人が朗読会でおこなうような代物ではない。状況劇場、あるいは天井桟敷の舞台を彷彿とさせるように、その声が周りの空間を取り込んでしまう朗読である。そこに異空間を現出させている。
 朗読会の写真を見ると、やはり芝居を見ている雰囲気になりそうだ。浜江順子の表現を借りれば「舞台にぺたりと座って下を向きながらひたすらうにゅうにゅ朗読するどこかシュールな瞽女を想わせる阿賀」ということになる。その傍らに津軽三味線のユニットが並び、朗読会ではさらに白厚塗りの異形の踊りも付いているようだ。機会があれば、ぜひとも舞台を見てみたい。
 だから今回の本も、これはどうみても朗読のための出版物である。詩集だとか、エッセイ集だとか、分類わけをするのが馬鹿馬鹿しくなってくるほどに傍若無人な内容である。これが伝えてくるものは活字だけで見てもその魅力はまったく伝わらない(だから作品の引用紹介はおこなわない)。聴かなくては。この本は朗読CDを届けるための解説本(?)である。
コメント
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