第8詩集。122頁に21編を収め、岡井隆の栞が付く。
とても清らかな詩集である。それは、気持ちが揺れた事柄は邪なものがないものばかりで、だから、揺れた気持ちにも邪なものが混じってないのだ。
たとえば「風 見つけた」では、「自分の姿が自分自身でわからないから」「風はときどき寂しくなる」という。そして、
だからときに大風や野分けとなって
草原を渡る
草々をなぎ倒してゆく
湖面に大波を立てる
そこに自分の姿を見るのだ
そして
なおさら寂しくなる
それに続くさまざまな風の吹く場面へ向ける視線がやさしい。蝶のはばたきを吹き戻してしまう風、先頭になってしまった渡り鳥が胸に受ける向かい風、そして屋上から飛び降りようとした人を「そっと後ろへ押し戻してくれる風」など。
今の自分をここへ立たせているこれまでの思いが中心となっている。詩集タイトル作「背後の時計」は柱時計が刻む時間に急き立てられている生き方を詩っているのだが、過ぎ去ってきた過去の時間を暗示もしているのだろう。
栞の岡井隆にならって、好きな詩行をいくつか紹介しておく。
日没はいつも一回きり/ひらがなのような足音が夕闇に溶けてゆく(「旅立ちは夕暮れが」より)
花時計はその枯れてゆく時間をみずから刻んでゆく(「育ってゆく離れてゆく」より)
燃える思いは月曜日に/燃えない思いは水曜日に/きちんと袋に入れて所定の場所に出してください(「心の管理人」より)
とても清らかな詩集である。それは、気持ちが揺れた事柄は邪なものがないものばかりで、だから、揺れた気持ちにも邪なものが混じってないのだ。
たとえば「風 見つけた」では、「自分の姿が自分自身でわからないから」「風はときどき寂しくなる」という。そして、
だからときに大風や野分けとなって
草原を渡る
草々をなぎ倒してゆく
湖面に大波を立てる
そこに自分の姿を見るのだ
そして
なおさら寂しくなる
それに続くさまざまな風の吹く場面へ向ける視線がやさしい。蝶のはばたきを吹き戻してしまう風、先頭になってしまった渡り鳥が胸に受ける向かい風、そして屋上から飛び降りようとした人を「そっと後ろへ押し戻してくれる風」など。
今の自分をここへ立たせているこれまでの思いが中心となっている。詩集タイトル作「背後の時計」は柱時計が刻む時間に急き立てられている生き方を詩っているのだが、過ぎ去ってきた過去の時間を暗示もしているのだろう。
栞の岡井隆にならって、好きな詩行をいくつか紹介しておく。
日没はいつも一回きり/ひらがなのような足音が夕闇に溶けてゆく(「旅立ちは夕暮れが」より)
花時計はその枯れてゆく時間をみずから刻んでゆく(「育ってゆく離れてゆく」より)
燃える思いは月曜日に/燃えない思いは水曜日に/きちんと袋に入れて所定の場所に出してください(「心の管理人」より)