レコード・ジャケットのような大版の体裁で、61頁に11編を収める。山本十四尾の解説が付く。
詩集タイトルにある”塩の道”とは、越後から信州へと峠を越えて塩を運んだ道を指している。作品の主人公は千曲川のほとりに暮らした「きん」という女性で、あとがきによれば著者の伯母にあたる人物をモデルにしているようだ。そして著者の曾祖父は信州で海産物問屋を営んでいたようだ。当時の資料を交えたりしながら、明治時代の彼らの生き様を作品にしている。
これらの作品の成立には、おそらくは己の来歴をもとめて、時の流れの中に位置づけたいという希求があったのだろう。そのことを通して己の存在意味を確認しようとしたのだろう。
きんは早朝から店で働いていた 昼近いころ番頭の次郎
のところに 隣村の実家から知らせがあった 兄の出稼
ぎ先から突然の事故で 峠の谷間に転落した知らせだっ
た 村中で大騒ぎとなり皆で探しに出たが 谷間で俵と
ともに見つかったとき兄は帰らぬ人となっていた
(「亀屋」より)
個人の来歴が他人にとっても意味を持つためには、そこには個人を離れたなにか普遍的なものが必要となる。この詩集では信州での旧家の暮らしぶりがその役割を担っている。歴史資料的な意味合いと、個人の来歴につながる感情的な部分が統合されているのだ。
詩集タイトルにある”塩の道”とは、越後から信州へと峠を越えて塩を運んだ道を指している。作品の主人公は千曲川のほとりに暮らした「きん」という女性で、あとがきによれば著者の伯母にあたる人物をモデルにしているようだ。そして著者の曾祖父は信州で海産物問屋を営んでいたようだ。当時の資料を交えたりしながら、明治時代の彼らの生き様を作品にしている。
これらの作品の成立には、おそらくは己の来歴をもとめて、時の流れの中に位置づけたいという希求があったのだろう。そのことを通して己の存在意味を確認しようとしたのだろう。
きんは早朝から店で働いていた 昼近いころ番頭の次郎
のところに 隣村の実家から知らせがあった 兄の出稼
ぎ先から突然の事故で 峠の谷間に転落した知らせだっ
た 村中で大騒ぎとなり皆で探しに出たが 谷間で俵と
ともに見つかったとき兄は帰らぬ人となっていた
(「亀屋」より)
個人の来歴が他人にとっても意味を持つためには、そこには個人を離れたなにか普遍的なものが必要となる。この詩集では信州での旧家の暮らしぶりがその役割を担っている。歴史資料的な意味合いと、個人の来歴につながる感情的な部分が統合されているのだ。