瀬崎祐の本棚

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詩集「スピラスィヨーン」  北岡武司  (2011/01)  和光出版

2011-02-18 21:56:12 | 詩集
 第3詩集。102頁に31編を収め、秋山基夫の濃密な栞が付いている。装幀は、1年前に美術雑誌「版画」で特集が組まれていた版画家の高原洋一。
 詩集タイトルは聞き慣れないフランス語だが(著者はドイツ語の大学教授であるが)、あとがきによれば、「三位一体の父と子から聖霊が発出する仕方を指す神学的概念である」とのこと。語源的には、”呼吸”からきているらしい。そして、吸気がアスピレ、呼気がエクスピレとなる。
 「産道をでるとすぐ息を吸った」とはじまる「アスピラスィヨーン」は、人が生きていくときに欠かせない呼吸を主題にしている。それは、人が大いなる者に生かされている存在であることへと関連されていく。われわれは「ひょっとしたら神さまの/吐く息で地上に投げだされたのか」とまで思ったりもする。そして生きていくことは、何かを懸命に吸い込み、何かを吐きだすことなのだ。

   アスピラスィヨーン
   混じりけないスピラスィヨーンへの憧れ
   思いきり息を吸い込み 胸をふくらます
   エクスピレするために
                           (最終部分)

 作品は親しみやすいものとなっていて、気取り屋でお洒落な、それでいてちょっとしたことにもいじけやすく、ものぐさでいながら恋を夢想ばかりしていて、他人に対して臆病なくせに簡単に騙されてしまう純粋さを持っている、そんな著者が等身大であらわれている詩集である。
コメント
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