瀬崎祐の本棚

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花  49号  (2010/09)  東京

2010-11-12 22:24:06 | 詩集
 「どこか遠く」秋元炯。
 気がふさいで、疲れも溜まっていたために、行く先も定めずにバスで”どこか遠くへ”出かけた顛末が書かれた散文詩。居眠りをしている間にバスは終点に着き、そこから酒を飲みながらバスを乗り継いだので、自分がどこに来たのかも判らなくなっている。そこは背の高い葦に囲まれた河原で、

    見まわすと 自分の周りだけ葦が踏みなら
   されて丸い空き地ができている 葦のほかは
   何も見えない 立ち上がると 足がふらふら
   する 足が勝手に動き出して 周りの葦を踏
   みつぶし始める どうやら眠り込む前も 同
   じ動作を続けていたらしい

 小さな子供があらわれたりするこの場所は、周囲の様子も見えず、おそらくは時間の流れも通常ではなかったのだろう。桃源郷というにはあまりにも殺風景だが、日常から隔絶された場所へたどり着いていたわけだ。話者も、無意識のうちにそんな場所を求めてバスに乗ったのだっただろう。
 そして話者は、「いつの間にか 体の中から毒気が抜けきってしまってい」ることに気づく。葦を踏みつぶして自分だけの場所を作ったことが、よかったのだろう。しかしそれならば、今までの日常が待っている場所へ帰れることができるのだろうか。
コメント
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