瀬崎祐の本棚

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詩集「夏の森を抜けて」  日原正彦  (2009/12)  ふたば工房

2009-12-21 10:20:32 | 詩集
 27歳時の第1詩集からはじまり第14詩集となる。その間に詩論集2冊も出している。日原の年齢は私(瀬崎)と同じであり、その旺盛な創作力には感嘆する。123頁に25編を収める。
 こんなことを書くと怒られそうだが、日原の作品は基本的に善人の作品である。それは人に対してということを通りすぎて、人を含むすべての命を取りまいている自然に対して邪悪な心を全くもっていないということである。そこにあるのは、人智を越えたなにか大いなるもに対する畏敬の念であり、それを感じ取ることの喜びである。
 「風の見えてしまうときがある」ではじまる「風のかなしみ」はしみじみ美しい作品。自分が自分に吹かれていってしまうときに、「目が 見るのではない/目の 絶望が見るのだ/風のかなしみを」。そして、おそらくは風に吹かれたためなのだろう、ポプラは「輪郭の定まらない明日の方へ/激しく身を揺すぶってい」て、「ぱらぱらと昨日のかけらがこぼれ」るのだ。具体的な出来事などではなく、気持ちの中に生まれた形も持たないあるものが風の中にある。

   そして 今日も 自問するのだ
   はらはらはら…と
   不断にめくられてゆく自分のいのちの
   最後のページに滲みあがってくる風景のむこうへ
   どのように捨てられれば
   風のかなしみと

   ひとつになれるのだろう

 透きとおるようなと言ってもよい感覚をとらえて、やわらかな色合いの言葉にあらわすという日原の持ち味がでている作品である。
 「午後一二時三分四秒五」「夏の森を抜けて」については既に感想を書いている。
コメント (1)
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