瀬崎祐の本棚

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詩集「のうがええ電車」  小松弘愛  (2009/11)  花神社

2009-12-02 21:13:33 | 詩集
 第11詩集。副題に「続・土佐方言の語彙をめぐって」とあるように、土佐弁を題材にした作品25編が収さめられており、巻末には収録語彙のアクセント表まで付いている。
 これはとても楽しい詩集であった。たとえば「のうがええ」とは具合・調子がいいということであり、「ひがはいる」とは、昼間にお酒を飲んでなった朦朧状態をさすらしい。昼間のお酒は夜の酔い方とは違うのだ。微妙なこだわりがあるなあ。

   そして
   「あこなく」
   と 腕を斜め上方に伸ばしてもよいあたりに
   ぽかっと浮かんでいる白い雲
   あまり形はよくないが
   その昔の
   握り飯のような雲を眺めることになった
                         (「ここなく」最終連)

 ここの「ここなく」とは近くを指す「ここ」であり、「あこなく」は遠くを指す「あそこ」である。土佐弁の解説のようなものにまで踏み込んだりもして、蘊蓄を傾けている作品もある。楽しい。このような土佐弁の解説を散文で書かれてもこれほどの味わいにはならないだろう。なによりも作者の身近なものとしての言葉を使っており、言葉への愛情が感じられる。詩で書かれたからこそ土佐弁が生きている。
 方言で書かれた詩集としては有馬敲「古都新生」が今年の夏に出ている。あちらは京都弁での詩集で、やはり読んでいて嬉しくなるような詩集だった。
コメント
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