新・日本現代詩文庫の1冊で、7冊の既刊詩集からの作品が収められている。解説は西岡光秋、森田進。このような選詩集では、作者の中に流れた時間が感じとれることが興味深い。25歳時の第1詩集「鋲」の作品はどれも非常に感覚的であり、思いが追いつく暇もないほどに軽やかである。
それに比して第7詩集「抱卵期」中の「漏刻」では、じっとりとした思いが座り込んでいる。詩われているのは夕刻の淀んだようなひとときである。午睡から醒めたばかりのようなぼんやりとした意識が、自分を取り囲んでいるものを認識している。
研ぎ澄まされた刃面をすべる指先に 読み違えた
未来の傷口が痛む 目で追う活字の行間からこぼ
れる砂粒のように 降り積む懐かしい時を反芻し
て……誰かがしきりにわたしを呼んでいる
かっては誰かに語りかけていた言葉はここにはなく、すべてが独白となって自分の内側で反響している。書き続けてきて、ここまで深く自分の中へ穿ってきたのかという捉え方で読んだ。張りつめた言葉と、それによって伝えてくるものが確かにここにはある。
それに比して第7詩集「抱卵期」中の「漏刻」では、じっとりとした思いが座り込んでいる。詩われているのは夕刻の淀んだようなひとときである。午睡から醒めたばかりのようなぼんやりとした意識が、自分を取り囲んでいるものを認識している。
研ぎ澄まされた刃面をすべる指先に 読み違えた
未来の傷口が痛む 目で追う活字の行間からこぼ
れる砂粒のように 降り積む懐かしい時を反芻し
て……誰かがしきりにわたしを呼んでいる
かっては誰かに語りかけていた言葉はここにはなく、すべてが独白となって自分の内側で反響している。書き続けてきて、ここまで深く自分の中へ穿ってきたのかという捉え方で読んだ。張りつめた言葉と、それによって伝えてくるものが確かにここにはある。