瀬崎祐の本棚

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詩集「神出来」  金堀則夫  (2009/07)  砂子屋書房

2009-06-27 13:25:49 | 詩集
 119頁で28編を収める。前詩集「かななのほいさ」でもそうであったが、自らのルーツを探す術として作者は土地に、地名にこだわっている。土地の来歴があって、そこに人の営みが乗っている、そして人の営みが土地の来歴になっていく。「はるかな土には/これから蘇る千古の深さがある」(「乾田」より)と、土は歴史そのものになっていく。
 美しい地名「星田」は幾度となく作品にあらわされてきたが、これが「乾田」に通じて、さらに「乾」は「天」の意だとも言う。

   乾は雨となって
   田は乾き切らず
   わたしに涸れない田を与える
   水を切れ
   土を切れ
   陰の田を晒す
   乾田(かんでん)じゃない
   カンデンは<神出来(かんでら)>となる   (「乾」より)

 星と鉱山が土地を見下ろし、土地を支えているのだろう。そして、作者は谷から谷をめぐり、坂を下り、絶壁を眺める。そんな土地に支えられた人の、自らの存在を信じる強さを感じる。
コメント
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