瀬崎祐の本棚

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櫻尺  34号  (2009/05)  川越

2009-06-26 21:56:58 | 「さ行」で始まる詩誌
 毎号いろいろな花びらで表紙が埋め尽くされている鈴木東海子の個人誌。今号も10人の詩作品、2人の評論と、非常に充実した内容である。
 「音信(おとずれ)の庭」鈴木東海子。大きな石柱のオブジェの置いてある庭にいるようだ。

   このように堅い指があって、指の関節がふくらんで。いて。
   石を叩いてきた手が軽くはさむ先にけむがのぼっている。わ
   たしの望むように手があってかってやわらかい指をもった人
   であったことが思いだされるのであった。

 なにかの意志を持ったような指の動きが背後にある物語を感じさせる。指の動きはかたちをとり、声のようになにかを伝えてくるのだろう。ここでは、今ある固い石と、かってあったやわらかい指のイメージの対比が見事だ。

   炎のようにもえてきた堅い指によってつくられたかたちたちは
   内部のようであったが外部であった。わたしをとおしてうまれ
   でたものに内部だけのつながりで外部もつつんでしまいたかっ
   た。

 石柱にはいくつかの穴があいており、空が見え、風が通り抜けるのである。指は、今は石のように堅くなっていて、指にも風の通り抜ける穴があいているのだろう。オブジェに魅せられて、身体が同化してしまいそうになっている感覚が伝わってくる。
コメント
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