瀬崎祐の本棚

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鶴亀  3号  (2009/04)  兵庫

2009-06-10 23:27:17 | 「た行」で始まる詩誌
 「仮面」中堂けいこ。「やあやあと囃し立てる水霊ら」で始まるこの作品のチーフとなっている仮面は、同時に収録されている紀行文から推察すると、ヴェネチアの祭りの時に使われるあの妖しげな仮面であろう。表情を隠した人々が集まったカーニバルのざわめきが伝わってくるような作品である。

   人いきれ ひときれの陽射しさけて わたしはおまえの内側に逃れよう
   しらふもまた付け替え可能と気付くとき わたしたちは主語を失うといういいぐさ

 内容はなんのことを言っているのか、実はよくわからない。まるで生身の自分を仮面の奥に隠してしまっているように、肉声は消えている。そのうえで、舞台の上に役者を勢揃いさせて無言劇を演じさせているような趣である。仕草の意味を追わずにいればよいのだろう、そこでは架空の物語が美しくくりひろげられているのだから。

   真っ白い缶おしつけ 本日は満員御礼と からからさみしい音をたてよ
コメント
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