桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

礼文島断章20・94年の礼文の話⑤

2005-05-12 21:33:29 | 旅行記
この日は風もなく、素晴らしい天気だった。島に着いて振り返ると、利尻島の眺めが素晴らしかった。

すぐに台地の上に登り、そのまま西海岸の入り江に降りた。驚いたことに先客がいた。地元の人で、お客が来たので皆でやって来てバーベキューをしているのだそうだ。

私達も流木を集め、乾燥した海藻をたき付けにして火を付けた。女性陣は火の番をし、男性陣は海に入ることにした。Nも私達の真似をして海に入ろうとしている。水着の用意はしておらず、下着のパンツ一枚である。うまく服が脱げず、すでに不機嫌である。

この入り江は水深が1メートルくらいと浅い。しかも海底には海藻がたくさん生えている。これらが日の光を浴び、今年の酷暑の影響も受け、普段の年なら冷たくて入れない(実際前の年は皆唇を紫色にして海に入っていた)のに、今年は実に快適な海水浴が楽しめた。

この入り江には、たくさんの海生生物が生息している。これらの生物の生態観察も、トド島へ来る時の重要な目的である。私達もそうした生物を採集し、解剖したり、火であぶったり、写真などに収めたりして楽しんだ。観察した後は海へ帰した。中でも、短いトゲのたくさん生えた、たわしのような触り心地のする、丸く平たい生物は、石を投げる時の”水切り”ならぬ”ウニ切り”で海へ帰してやったりした。近くにいる地元の人達も海に入っていた。きっと私達と同じく、生態観察をしていたのだろう。

海から上がって、火に当たって体を温め、乾かし、お昼にした。軽く昼寝もした。この後、「一月遅れの七夕」で書いた、Rちゃんの「おしっこ」事件が起こるのである。確かに女性は島でのトイレには困ることだろう。そんなことも笑いのもとになってしまうのは、Rちゃんの愉快なところである。

そうこうしているうちに時間となった。迎えに来た船に乗り、白浜に戻った。迎えに来た車に乗り、西上泊まで送ってもらった。ちょうど24時間コース組がアトリエ仁吉に来ているので、その激励と差し入れに行くというのである。アトリエ仁吉では、4人が元気にお昼を食べていた。この好天のもと、男性陣はすっかり陽に焼けている。皆元気そうで、しかも楽しそうである。どうやらTさんの話題で盛り上がっていたようである。

出発も見送りたいとのことで、それまでの時間、澄海岬に行ってみた。行く直前に、Nの母親がNをからかった。するとNはすっかりすねてしまい、ぐずりだした。コイツ、将来まともにやっていけるんだろうか、と皆で顔を見合わせた。

澄海岬は実に素晴らしかった。何度も訪れた澄海岬であるが、この時ほど天気が良く、風もなく、海も凪いでいた時を私は知らない。この頃はまだ人も少なく、柵などもしっかりしていなかったから、私達は岬の突端まで出かけていった。紫色のツリガネニンジンが見頃だった。

アトリエ仁吉に戻り、24時間コース組を見送った。1人で24時間コースを歩いた私からすると、こんなふうに何人もの人で歩くのもいいな、と思った。

この日はどこも天気に恵まれたようだ。帰ってきてから、この日礼文岳に登ったYさんから、礼文岳の山頂から撮した写真が届いた。これも素晴らしい眺めだった。

コメント
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