気になりだしたら止まらないキヨちゃん

　暫く前からキヨちゃんの補聴器が調子悪かった。以前に片方紛失しているし、年月的にも５年が寿命と言われている物の１０年目。そりゃあ不調も出るか。
　とは言え、父が買って７年目に私が半額出して買いなおした補聴器。たいへんお高い。だからキヨちゃんも買い直すのにはためらい、
　「安いのチラシで観た。」
など、それこそ本当にそれは補聴器か？というような情報を持ってきたりしたのだが、さすがに雑音が酷くなると我慢できなくなった。
　とは言え、一人で行けるわけも無く、また今の時期バスなどで一人で出掛けて欲しくないので、半日休みを貰って補聴器の調整に連れて行くことにした。
　さて当日朝、
　「母ちゃん目医者も行きたい。とにかく目の前に黒いものが跳びまわって、外に出られん。」
と言い出した。
　おそらくそれは飛蚊症で、以前にも言われていたが、その後治まっていたのだ。とは言え、半日で両方行けるかどうかは分からない状態だった。出掛ける前に、
　「とにかく、今日１４時までには帰るけん。」
と言い残して仕事に出た。すると午前中にくりりんからライン。
　「お母さん、『すずは何も説明せずに仕事に行った。』とぼやいてたよ。」
・・・言うたがな・・・。
　さて、気になりだすと我慢出来ないキヨちゃん。１３時には電話が入る。
　「帰ってこれんのか？母ちゃん、時間ないけん（補聴器調整時間が１５時まで）、タクシーで行こうか？」
・・・。だから・・・。
　「待って。もうちょっとしたら帰るけん。時間は間に合うけん。」

　そして家に帰り、大急ぎで着替えてキヨちゃんと出掛けた。補聴器の調整はしたものの、やはり寿命は寿命らしく、その上キヨちゃんの聴力は落ちていないのだが、耳の形も変わってきておりフィットしていないのも原因らしい。
　さて、どうするかとさんざん悩んだ末、グレードを落として買い直す事になった。とは言えそれでもなかなか高い買い物だ。新しく型を取って、発注して出来上がりは今月末だ。
　それから眼科に行こうと思ったら、キヨちゃんは保険証を持ってきていない。
　「ほなって、まさか眼科に行くとは思わなかったのに。」
って、貴方が言いだしたがな。
　で、キヨちゃんをバスターミナルで下ろし、保険証を取りに往復１時間。その足で眼科に行った。
　キヨちゃんの目は片目はほとんど視力が無い。それは交通事故で視神経を損傷しているからだ。で、もう一方は白内障の手術後はよく見えていたが、今回の検査で、入れたレンズが曇ってきている事、再手術は無理な事が判明した。そして、黒いものはやはり飛蚊症。結局加齢なので治らない。
　それでも耳も目も見て貰ったことでキヨちゃんはかなり安心した。帰りの車では、
　「補聴器、ちっといじったんかな？雑音がしない。」
と言い出した。
　さらに翌日、
　「なんか、黒いものが跳ぶのが減った気がする。」
と言う。
　全く何も解決していないはずなのだが、ならば高い買い物もしなくて良かったのか？
　やれやれ・・・・。

＊母の日は稲荷寿司と細巻き、茶碗蒸しにした。

　　　　　　


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