![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/e1/57deb9e06107169c687a16fe625f58a0.jpg)
〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店、昭和13年5月23日発行)〉
前回の最後は、
村塾の農場はそのままとし、建物の一部を実家の方に移し、塾は一時閉鎖となったのである。松田の生涯において、このことは最大の挫折であった。
で終わったのだが、実はこの後に、 しかし、この失意の間に、松田を全国的に有名にした『土に叫ぶ』は執筆されたのである。
と続いていたのである。そこで今回は、それを受けての項「ベストセラーになった『土に叫ぶ』」からであり、同書の出版の経緯を安藤玉治は次のように紹介していた。
出版元の羽田書店は衆議院議員羽田武嗣郎が始めた出版社である。ここから出版されることになったのは、昭和十二年春、農地法調整法案が衆議院に上程されるというので上京していた松田が、国会議事堂内で羽田と会ったことによる。
そのとき羽田が、松田のこれまでの「十年間の生活記録をぜひ書いてくれ」と頼んだのである。…投稿者略…(羽田は)岩波書店の岩波茂雄に出版人になりたい旨の相談をもちかけた。
「それは大いに賛成だ。しかし見るところ君は商売人ではなさそうだ。私のところで面倒見てやろう」ということになった。 (『追悼文集「和光」』)
…投稿者略…
その羽田のたっての頼みを受けた松田は、まとめることも、書くことも自分にはたしてできるだろうか、とさんざん迷った末に、「私のようなものが書いたもので皇国と農村の弥栄にいくらかでも役立つならばと、最善をつくして書くことを心にきめた」のであった。
〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』142p~〉そのとき羽田が、松田のこれまでの「十年間の生活記録をぜひ書いてくれ」と頼んだのである。…投稿者略…(羽田は)岩波書店の岩波茂雄に出版人になりたい旨の相談をもちかけた。
「それは大いに賛成だ。しかし見るところ君は商売人ではなさそうだ。私のところで面倒見てやろう」ということになった。 (『追悼文集「和光」』)
…投稿者略…
その羽田のたっての頼みを受けた松田は、まとめることも、書くことも自分にはたしてできるだろうか、とさんざん迷った末に、「私のようなものが書いたもので皇国と農村の弥栄にいくらかでも役立つならばと、最善をつくして書くことを心にきめた」のであった。
このことに関しては、甚次郎自身も『土に叫ぶ』の「序」の中で、
本春(昭和13年の春:投稿者註)、農地調整法案が衆議院に上程の日、帝國議事堂で敬愛する羽田書店主と會つた。…投稿者略…その時、私に十年の生活記錄を書いてくれとのことである。けれども私は筆の人ではない。鍬の人であり、語る人ではなく、働く人である。書くことも、まとめることも出來ないと思つたが、羽田氏の農村の行末を思ふ切なる熱意に動かされ、歸鄕後に熟考し、私のやうなものが書いたもので皇國と農村の彌榮にいくらかでも役立つならばと、最善をつくして書くことを心にきめた。
〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)〉と似たようなことを述べている。
さて、そう決意した甚次郞は昭和13年の旧正月の元旦から書き始め、同年5月18日に出版、発売直後から、全国各地から励ましの手紙が届きその数は三千余にも達した、と安藤は述べていた。もちろん、『土に叫ぶ』がベストセラーになったことは皆さんご承知の通りである。
なお、私が持っている『土に叫ぶ』の奥付は下掲のようになっていて、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/6a/d687162b82b6546fd6030976628dee65.jpg)
その押印は、著者の「松田」ではなくて「羽田」となっている。当然この本の印税は羽田武嗣郎に入ったということになる。
また、『宮澤賢治名作選』の奥付は下掲のようになっていて、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/02/008606fd328d906bf1fb9f5640d89c03.jpg)
奥付の印紙は、賢治手作りと思われるハンコ「宮澤」となっていて、当然この本の印税は宮澤家に入ったことが判る。そして、ベストセラー『土に叫ぶ』に引き続き、この『名作選』もベストセラーになり多くの人に読まれた。ちなみに、『名作選 上』の奥付は下掲のように、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/7c/c844fe9de555b3eff03613b80073eb0e.jpg)
昭和21年5月21日第十一刷となっていて、少なくとも第十一刷まで発売されており、ロングセラーでもあったことが判る。しかも、この奥付の印紙のハンコはこれまた「宮澤」であり、かなりの印税が宮澤家に入ったことになる。さぞかし、宮澤家は松田甚次郎に感謝したことであろう。それまでは全国的には殆ど無名だった宮澤賢治の名前と作品を全国に知らしめた上に、だからなおさらにである。(先に、賢治同様に、甚次郞は金銭に無頓着で経済観念に乏しかったようだということが判ったが、というよりは、甚次郞はお金には淡泊であり、それよりは他人のために尽くしたいという高潔な人間性の持ち主であったということを、この奥付は裏付けてくれていると言えそうだ)。
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《新刊案内》
『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))
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なお、目次は次の通りです。
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そして、後書きである「おわりに」は下掲の通りです。
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