みちのくの山野草

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「天才脳の秘密」

2018-01-03 09:00:00 | 賢治に関する不思議
『意識と感覚の脳科学』(日経サイエンス社、2014年10月22日号)
 さて、論文
    「天才と変人」 解き放された知性 S.カーソン(ハーバード大学)
そのものについて言及する前に、この論文は上掲の雑誌『意識と感覚の脳科学』の中の第五章「天才脳の秘密」に所収されていたので、まずはこの「天才脳の秘密」の序で述べていることを以下に一部紹介したい。
 そこには、
 創造性の源泉について長く研究してきた心理学者や脳科学者が最近注目しているのが、天才と変人の関係だ。たぐいまれな才能を発揮する藝術家や科学者は、しばしば奇妙な行動を取る。
            〈『意識と感覚の脳科学』90p〉
ということが述べられていた。やはり、この記述を読んで私は直ぐ天才賢治のことを連想した。それはもちろん私だけではなかろう。なぜなら、例えば賢治の愛弟子の澤里武治がこんなことを追想していたというからだ。
 先生はひよいひよいと身軽に歩き、時に道でない野原の芝の中や、暗い草原の中に飛び込んでい行つて、この夜の風景に深く感動されて居られるやうでした。そのうち、ホーホーと声を挙げ、いきなり飛び上り、ゴム靴の踵を摺り合はせて、キーキーといふ音さへ立ててるのです。私は暫くあつけにとられて……
             〈『續 宮澤賢治素描』(関登久也著、眞日本社)62p〉
もちろんこの「先生」とは賢治のことである。教え子の武治が「私は暫くあつけにとられて」というくらいだから、賢治のこの行動は端から見ればかなり「奇妙な行動」に見えたであろう(武治は賢治の教え子の中では最も賢治から愛されていたし頼みにされてもいた。また、武治自身も賢治を大変崇敬していたと判断できるから、武治が語る賢治にについてはかなり信頼性が高いはずだ)。

 そして前掲の序は、
 脳に流れ込んでくる厖大な情報を人は無意識のうちにフィルターにかけて選別しているが、このフィルター機能が弱い人がいる。こうした歯止めのなさによって意識上にあふれてくる厖大な情報を処理できる人が、創造的な活動を生み出すが、これが同時に奇妙は行動につながったりすることも多いらしい。
と続き、そのようなことを論じているのが、S.カーソンの論文〝「天才と変人」 解き放された知性〟であるという。
 さて、ここで私にとって意外だったことが、
    フィルター機能の弱い人が創造的な活動を生み出すらしい。
ということだ。大雑把に言えば、
    なんと、ある「弱点」が想像力の源泉となる蓋然性が高い。
ということで、常識とは逆だと私は思ったからだ。なお、
    創造的な活動を生み出すことと奇妙は行動はつながっている。
ということだが、このようなことは世上しばしばして言われていることなのでほぼ違和感はない。

 そこでこれらのことを知った私は、やはりこの論文〝「天才と変人」 解き放された知性〟は賢治のことを理解するために大いに役立ちそうだと、ますます確信した。なぜならば、澤里武治は、
 先生は、私と向かひ合つて話をしてゐる時、ふと机の中から鏡を出し、ご自分の顔を写して見乍ら、「おお山猫!」と叫ばれるのでした。そして先生の額の上にある小さい瘤らしいものを手で折角撫でるのでした。
            〈同65p〉
ということもまた述べていたからでもある。そこでもしこれが事実であったとすれば、花巻農学校の教諭であった賢治が生徒であった武治の前でこのような端から見ればおかしな言動をしていたということになる。そしてまた、前掲の「ホーホーと声を挙げ云々」のみならず、この「おお山猫!」」のエピソードを知ってしまうと、先の「しばしば奇妙な行動を取る」という指摘にどうやら賢治の場合も当て嵌まりそうだ。
 さらに武治は、
 鏡を出して顔を写し、おお山猫!と言ふ時の先生の顔も声も道化者のやうで見てゐる私もつい大声を上げて笑ひました。然しそれにはどういふ意味があつたのか、私は今だに不明であります。
            〈同65p〉
ということも少し後で述べていたから、賢治のとった「奇妙な行動」は天真爛漫に見えたことも少なからずあったに違いない。

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