みちのくの山野草

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『宮澤賢治素描』(関登久也著、眞日本社、昭和22年3月)

2021-05-21 12:00:00 | 賢治の「稲作と石灰」
【東北砕石工場技師時代の賢治(1930年頃 撮影は稗貫農学校の教え子高橋忠治)】
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>

 さて、では今度は『宮澤賢治素描』(関登久也著、眞日本社、昭和22年3月)からである。

 もちろん、関登久也は既に、昭和18年9月に同じタイトルの『宮澤賢治素描』を協栄出版から出している。そこで、これらの二つを見比べてみた。すると、「巻末記」に「多少の修正」と述べてはあるものの、基本的には目新しい事柄は見つからなかった。
 ただし、あれっと思ったことが一つあった。それは、協栄社版には載っていなかったのに、今度の眞日本社版では、その16pに「雨ニモマケズ」が全篇載っていたことだ。ご承知のように、戦時中に「雨ニモマケズ」が「滅私奉公」や「欲しがりません勝つまでは」のスローガンと結びつけられて戦意昂揚に利用されたわけだから、戦時中に出版された『宮澤賢治素描』には「雨ニモマケズ」が載っていたが、戦後版のそれには載っていなかったということであればさもありなんとなるわけだ。ところが、実はその逆になっていたので私はあれっと驚いたのだった。
 ということは、関登久也は時流におもねることなく、「雨ニモマケズ」を自分の中に位置づけていたとなるのだろうか。もしそうであったとすれば、私が今まで関登久也について調べてみた限りにおいては彼は誠実な人柄だと私は思っていたので、なおのこと嬉しい。言い換えれば、やはり「雨ニモマケズ」には人を惹きつける掛け替えのないものがあるということなのだろう。
 たしかに私も、かつては「雨ニモマケズ」によって賢治に惹かれ、尊敬する人物は誰ですかと問われると、賢治の作品はもとより賢治自身のこともよく知りもせずに、「破滅的で微分的な啄木と違って、積分的で求道的な生き方をして、貧しい農民たちのために献身した賢治です」となどと粋がっていたものだ(とはいえ、今はもう違うのだが)。

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