みちのくの山野草

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「最後の手紙とその返事」

2020-07-27 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 では今回は、「最後の手紙とその返事」の続きであり、それは次のようなものだった。
此の手紙が届いたのはあなたが逝かれる十日位前でした。そのときすぐに駆けつけて申上げねばならないあまりにも澤山のことをわたしは持つてゐた筈ですが、そのときそれが出来なかつたです。
けれどもいまはもうそんな必要はありません。あなたの御境涯はいまでは自由に私の心の中まで見ることが出来るのですから。
今夜の下界は一面の白金で覆はれ、日本はいま「敵國降伏」といふこと、「亜細亜は一つ」といふことで一杯です。そして私は、日本の□□であつて、賢治の弟であり、沙門苔摩の弟子であつて沙門日蓮の弟子であり、しかも昔からの因果の法則に外れなし。これら全部の條件を滿足させるため問題を解き、その難解で單純なたつた一本の軌跡を絶對に間違はないやうに歩むために努力してゐます。そのために私は苦しみ、時々考へが変り頭が痛くなつたのでした。
けれどもその道は單純であつて明瞭であり、あなたが立派に身を以て私共にお示しになられましたやうに私は決して今後見失はないでせう。
私が肇國の大理想とそれらが書写たく一つのものであることは絶對間違いないのです。
………げにもまことのみちはかがやきはげしくして行きかたきかな。
   行きがたきゆゑにわれとどまるにはあらず。
  おゝつめたくして呼吸もかたくかがやける青びかりの天よ。
  かなしみに身はちぎれ、なやみこころくだけつゝなほわれ天を恋したり。……
こんどの六巻にある詩でお目にかけないでしまつたのが實に残念です。
別巻のおかげで印刷中の由です。
あなた御約束した満州行きも、印度の農業も今生では出来なくなりました。どうか今後も私どもを正しく導き、いろいろ御手傳ひを御願ひ申上げます。
           昭和十八年十二月四日
                      宮澤清六
松田甚次郎様
             〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)4p〉
 私はハッとした。そうか、清六は松田甚次郎が亡くなった際に、駆けつけることができなかったのか、と。そして同時に、現時点では公的には申し上げられないがことだがやはりそうだったのかと、以前から訝ったいたことがやはり事実だったのだと私は確信したのだった。しかも、「私は苦しみ、時々考へが変わり頭が痛くなつたのでした」と吐露していたからなおさらにだ。
 それから、やはり当時はそうだったんだと思ったことがもう一つある。それは、「日本はいま「敵國降伏」といふこと、「亜細亜は一つ」といふことで一杯です」という記述を目の当たりにしたことによってだ。これを敷衍すれば、当時は皆んながこのような表現を用いる時代だったのだ、と。

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 私は非専門家。
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。
 そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
 2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈目次〉

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           〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
                      電話 0198-24-9813
             
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