みちのくの山野草

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「最後の手紙」

2020-07-26 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 以前、〝松田甚次郎病に臥す〟という投稿において、「病床の松田が花巻の宮澤清六に宛てた手紙の内容」を取り上げたわけだが、まさにそれが、〝『追悼 義農松田甚次郎先生』の目次〟の中にある、
    「最後の手紙とその返事 宮沢清六」
で引用されていた。
 そこでこの「最後の手紙とその返事」の当該部分をまず転載させてもらうと以下のとおり。
   最後の手紙とその返事 宮沢清六
 あれから熱が三十九度五分を前後して毎日苦しい病床 道場の生活も何も考へず、読まず、見ず、遂に今日で九日を過ごしました。
 もう何も欲しくない。平熱が欲しいだけであると謂ひつづけて参りました。
 けれども昨日の午後二時より夕立があり一時間 此の乾き切つた地上に慈雨が豊かに降り濯いで呉れました。田にも畑にも山にも皆んな四十日ぶりの此の慈雨、音と光とにじつとして感謝を捧げたのでした。
 今朝は少し熱が下り机に向つて熱で疲労した指の環節部の運動をして居ります。
 本日までに出さねばならない時局情報八月号の原稿五枚を此の熱のしづかな時間に書かうと思つて居ります。
 見前の吉田六太郎先生は毎日激励のはがきを下さいますが此の熱では一寸も動けないのです。
 ではこれで失礼します。
                       松田甚次郎
 宮澤清六様 
              <『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)4p>
 そして私はここまで書き写してきて、改めて心を打たれる。それは、甚次郎が清六に宛てた最後の手紙からは、病に倒れてしまった甚次郎の重篤さが目に見えるようだが、一方ではそのような中にあっても、雨乞いの甲斐あって慈雨が降ったことを、雷鳴と稲妻の中で喜んでいる甚次郎の素直な人間性と自然に対する畏敬の念が窺えるからである。そしてまた、吉田六太郎の気遣いと優しさ、それに対する甚次郎の感謝の念も、である。

 さて、この寄稿「最後の手紙とその返事 宮沢清六」はまだ続くのだが、それは次回へ。

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 私は非専門家。
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。
 そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
 2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈目次〉

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           〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
                      電話 0198-24-9813
             
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