みちのくの山野草

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二 イーハトーヴの土地、賢治の土地(定量的)

2018-12-13 10:00:00 | 賢治渉猟
《『宮澤賢治』(國分一太郎著、福村書店)》

 では今回からは「二 イーハトーヴの土地、賢治の土地」という章に入る。
 ここでまずわかったことは、國分は定性的な考察のみならず、定量的な考察にも力を入れているということである。それは例えば、
 (岩手県は)耕すことができるのは、まん中の北上川にそうた細長い平野をふくめて、一四%にすぎません。(北海道・東北六県をのぞいた日本のほかの地方では、昭和八年の年に二四・九%)、八五%をこえる山や森や原のうち、その半分以上が皇室と国家の所有でしたから、土地の人びとには、薪や炭焼く木を切り出す自由もありません。耕す土地のうち田が四割六分、畑が五割四分、そのせまい土地を、十万六千軒の農家が、小さく分けあって耕していたのです。だから一町歩以下しか耕していない小さい百姓屋が、全体の半分以上をしめ…(投稿者略)…地主から土地を借りている百姓が多いので、そのでき高の半分以上は、年貢として、地主のところへおさめなければなりません。
            〈『宮澤賢治』(國分一太郎著、福村書店)20p〉
というように、である。実際このように定量的なことも述べてあれば、定性的な場合よりはるかに私は説得力を感ずる。

 ちなみに、私は当時(昭和8年頃)の岩手県の農家数が「十万六千軒」であることを初めて知った(大正末・昭和初頭の岩手県の農家戸数の割合については、7割弱であることは知っていたのだが)。また、当時の岩手県の自小作農家戸数の割合については『岩手県農業史』(森嘉兵衛監修、岩手県)により以前知ってはいたのだが、
  1町歩以下の農家が全農家の半分を超していた
とか、
  そういう百姓屋の人びと(文脈から言って1町歩以下の農家の人たち)が全県民の半分以上
ということについても私は知らなかった。一体その出典は何だったのだろうか、是非知りたいものだ。それは、大正10年当時の小作料は「普通収穫田 五十四パーセント(『復刻「濁酒に関する調査(第一報)」』(センダート賢治の会、平成10年))だったというから、國分が「そのでき高の半分以上は、年貢」と言うとおりであるので、かなり信憑性の高いものを出典としていたことが窺えるからなおさらにである。

 また一方で、國分は次のようなこと、
 豊作飢饉(ありがすれ)といって、稲があまり出すぎたため、米のねだんがさがって、百姓が苦しむこと)
           〈同18p〉
とか、名子(なご)制度等についても触れており、かなりいろいろなことを調べた上でこの本を書いていることがわかる。
 さらには、当時の百姓の悲惨さを、
 米をつくって、その米を食えない百姓というのが、岩手県だけでなく、東北ぜんたいの百姓の姿でした。
とか、
 お金にかえる米を少しでも多くするには、肥料をうんと入れて、とりいれ高を多くしなければなりませんから、いつも、こやしのことが気になります。そしてこやし代がはらえなくなって、娘を遠い土地に売ってやったり、その借金のかわりに、田畑をとられてしまうということも、めずらしいことではありません。
              〈共に同21p〉
というように、中学生でもわかりやすく教えようとしていた。國分は山形県長瀞村小学校の教師で「生活綴方運動」の活動家であったが、そのことによって免職になったというだけあって、当時の農村の実態をよく知っていたからであろう。この國分の本を読み進めてゆくのがますます楽しみになってきた。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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