みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

このようなことが理屈としてはあり得る

2019-07-15 10:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)

鈴木 結局は、ちゑはどちらかというと〈聖女〉扱いされてきたから露よりは扱われ方が多少マシだとしても、賢治との結婚を拒絶していたというのにちゑは無理矢理「宮沢賢治が結婚したかつた女性」と賢治と結びつけられて活字にされた<*1>のだから、露のみならずちゑも共に非道い扱いを受けてきたと言える。このことについては既に、ブログ『「猫の事務所」調査書』の管理者tsumekusa氏が〝もう一人の"被害者"〟という投稿において早い時点から、
    彼女も高瀬露同様の「ひどい」扱いを受けている気がします
と指摘していることを私は知り、
    高瀬露も被害者だが伊藤ちゑもまた、であった。
のだと、しきりに頷いたものだった。
吉田  したがって、
 賢治との結婚を拒絶していたちゑが「宮沢賢治が結婚したかつた女性」と活字にされたことと、露が〈悪女〉にでっちあげられたこととはどうやら裏表の関係にありそうだ。いや、というよりは、ちゑを〈聖女〉扱いすることによって露をさらに悪者にしたかった。
ということをもはや否定できなくなってきた。
鈴木 それは、「宮沢賢治と結婚したかつた女性、宮沢賢治が結婚したかつた女性」というように、ちゑと露のことを「対句扱い」しているところからも見え見えだ。
荒木 となればなおさらに、露は〈悪女〉でなかったことは既に検証済みなのだから、露が〈悪女〉にされているという現実は、そうされた理由が極めて理不尽で不条理なものであるということと、普通であればあり得ないような理由であったということの可能性が極めて大だということが、それぞれ浮かび上がってくるぞ。
鈴木 ただし、その「理由」そのものについては、私は今まで何一つ明らかにできていなかった。さりながら、例の〈奇矯な言動〉がどの程度のものか判りかけてきた。そこで今回は、それがどの程度のものであったのかを少しく考察してみたい。
 まず一つ確認すれば、露は〈悪女〉にされる客観的な根拠は何一つないのだから〈悪女〉ではない。
吉田 ところがあにはからんや、山下聖美氏は、
 感情をむき出しにし、おせっかいと言えるほど積極的に賢治を求めた高瀬露について、賢治研究者や伝記作者たちは手きびしい言及を多く残している。失恋後は賢治の悪口を言って回ったひどい女、ひとり相撲の恋愛を認識できなかったバカ女、感情をあらわにし過ぎた異常者、勘違いおせっかい女……。
             〈『賢治文学「呪い」の構造』(平成19年、59p)〉
とか、あるいは澤村修治氏は、
 無邪気なまでに熱情が解放されていた。露は賢治がまだ床の中にいる早朝にもやってきた。夜分にも来た。一日に何度も来ることがあった。露の行動は今風にいえば、ややストーカー性を帯びてきたといってもよい。
            〈『宮澤賢治と幻の恋人』(平成22年、145p)〉
とかなり辛辣なことを述べているという現実が昨今でもある。
荒木 一方の賢治はどうかといえば、
    露を拒絶するために賢治は、
   ①(十日位も)「本日不在」の札を門口に貼った。
   ②顔に灰を塗って露と会った。
   ③別な部屋に隠れていた。
   ④私はレプラ(癩病)ですと露に言った。

というこれらの奇矯な行為が実際にあった、ということを否定できない
鈴木 しかも、この件に関して、
ことも否定できない。
吉田 しかし実態は、露は巷間とんでもない〈悪女〉にされていても、賢治はこの件に関して全然〈悪男〉にされていない。一体この不公平さはどこからくるものであろうか。あるいは逆に、このアンフェアは何を物語っているのだろうか。
 そう考えた時に気付くことが、たしかに、さっき荒木が言った、
 露が〈悪女〉にされているという現実は、そうされた理由が極めて理不尽で不条理なものであるということと、普通であればあり得ないような理由であったということの可能性が極めて大だ。
ということだ。もう少し具体的にいえば、その「理由」は①~④のようなことよりもさらに残酷なこと〝⑤〟が露に対してなされたので、それを矮小化するために逆に露をとんでもない〈悪女〉にでっち上げたということが一つ考えられる。
荒木 でその〝⑤〟とは具体的にはどんなことかというと……
鈴木 それは例えば、あくまでも例えばの話だが、
 賢治はそれまで世話になっていた露が下根子桜を訪ねてくることを拒絶するために、下根子桜の子どもたちに、
    露先生がここに来たならば石を投げ付けてくれ
と頼んだ
というようなことが理屈としは考えられる。もちろん、こんなことが実際にあったなどということはあり得ないはずだから、実際にあったことは別のことであるはずだが、程度としてはこのようなとんでもない行為があったということだけは言えるだろう。
吉田 なるほどな、露が客観的な根拠もなしにとんでもない〈悪女〉にされた「理由」は、このような程度の残酷なことが裏にあったのではなかろう考えてみるべきだし、是非はさて措き、このような「理由」であればそのような理不尽が罷り通ってきたのも宜なるかなと思えてしまう。
鈴木 なお、もう一度念を押すが、賢治がそのようなことを子どもたちに頼んだということが実際にあったのだと私は言っているわけでは毛頭ない。
荒木 わがった、わがった。もちろん賢治がそんなことをするはずはない。だがしかし、もしもだぞ、そのような噂が当時地元でささやかれていたとしたらどうだ。ことは重大だぞ。
吉田 荒木鋭いじゃないか。そっか、賢治がそんなことを子どもたちに頼むことはもちろんなかっただろうが、そのような噂話がささやかれたいたとしたならば、その噂話を放っておく訳にはいかなかった、ということだな。
鈴木 私にはそこまでは考えが及びもしなかったが、たしかにあり得るな。そもそも、噂話は自己増殖するのが世の常。そこで、その噂話を相対的に矮小化するために、露をとんでもない〈悪女〉にでっち上げた、ということが。
荒木 いずれにせよ、高瀬露は賢治のためにいろいろと尽くしたのにもかかわらず、理不尽にもとんでもない〈悪女〉にされてきたし、いまでもそうされているわけだから、これは早急に解決すべきだべ、ということだ。
吉田 そもそも、少し調べただけで露は〈悪女〉などではないということは直ぐ判るのだから、この憂うべき実態を賢治学界等がなぜ「等閑視」しているのか、僕には全く理解できない。それこそ賢治を尊敬し愛する人であるならば、「いの一番」にこの理不尽を解消してやるためにそれこそ東奔西走するはずだ。それはもちろん、今の時代は何にもまして看過していてはならない、これは重大な人権問題だからだ。

<*1:註> 『宮澤賢治と三人の女性』の出だしに、 
 宮沢賢治と、もつともちかいかんけいにあつた妹とし子、宮沢賢治と結婚したかつた女性、宮沢賢治が結婚したかつた女性との三人について、傳記的にまとめて、考えて見たものである。
             <『宮澤賢治と三人の女性』(人文書房)3p~より>
とある。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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