みちのくの山野草

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山形 早坂 昇

2020-09-25 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 では今回は、松田甚次郎の地元山形の早坂 昇からの「追悼」である。
   山形 早坂 昇
噫! 松田先生  校服を脱ぎ棄て自ら歸農し小作人の立場に於て黙々として水涸と闘ひ自給肥料の増産に励みて農業経営の本質を物心両面より把握し、共働を唱へて農村の開発を叫ぶ自ら陣頭に立ち農民劇を演じてその人生觀を啓き説く所當らざくなく行う所ならざるなし。笈を負ひて先生の膝下に集る者日々に加はり 先生を聘じて教を乞ふ者年々増せり。東奔西走自ら火の玉となつて玉砕す。痛惜の極天を仰ぎ地に俯して慟哭するのみ
             〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)より〉

 私はこの「追悼」を読んでいたく感心した。それは、賢治から「小作人たれ/農村劇をやれ」と強く「訓へ」られて、その通りに実践して斃れた松田甚次郎についての、ほぼ必要十分な説明だと、簡潔にしてほぼ完璧な説明だと私には思えたからだ。実はこの『追悼 義農松田甚次郎先生』の中で、それに当たるのは小野武夫の「熱と智と行の人」あたりかなと思っていたのだが、文章が長すぎるので、他にないだろうかと思って探していたところだった。そこで、それはこれだと私は安堵した。
 ついては改めて、
 あなたは「校服を脱ぎ棄て自ら歸農し小作人の立場に於て黙々として水涸と闘ひ自給肥料の増産に励みて農業経営の本質を物心両面より把握し、共働を唱へて農村の開発を叫ぶ自ら陣頭に立ち農民劇を演じてその人生觀を啓き説く所當らざくなく行う所ならざるなし」。
と私は声に出して読み直し、続けて、
 笈を負ひて先生の膝下に集る者日々に加はり 先生を聘じて教を乞ふ者年々増せり。
と、
 そしてついに、「東奔西走自ら火の玉となつて玉砕す」だったんですよね。
と、気がついたら最後は私は甚次郎に同意を求めていた。

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Ⅱ「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露―      上田 哲
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―  鈴木 守
の三部作から成る。
            
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