みちのくの山野草

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下根子桜寄寓期間の解釈

2019-03-13 10:00:00 | 賢治と一緒に暮らした男
《千葉恭》(昭和10年(28歳)頃、千葉滿夫氏提供)

8 下根子桜寄寓期間の一つの解釈
 なぜなのだろうかと思っていたことの一つにその期間の長さの違いがある。それは千葉恭の下根子桜寄寓期間、すなわち恭が賢治と一緒に暮らした期間についての、である。
 期間の長さの違い
 千葉恭自身は『イーハトーヴォ復刊5号』(宮澤賢治の会)において
「私が煮炊きをし約半年生活をともにした。一番困ったのは、毎日々々その日食うだけの米を町に買いにやらされたことだった」
と言っているわけで、
    その期間は約半年………①
であると考えられる。一方私としては今までの調査結果から、「下根子桜寄寓期間」については前述のような仮説「○☆」、
 千葉恭が賢治と一緒に暮らし始めたのは大正15年6月22日頃からであり、その後少なくとも昭和2年3月8日までの8ヶ月間余を2人は下根子桜の別宅で一緒に暮らしていた。………○☆
を立てている。というわけで私は、
    その寄寓期間は少なくとも8ヶ月間余………②
と見積もっている。ただし、一方は〝約半年〟で他方は〝少なくとも8ヶ月間余〟という期間の長さの違いをどう考えればいいのかと当然私は悩まざるを得ない。
 寄寓期間の一つの解釈の仕方
 ここで思い出したのが以前紹介した「宮澤先生を追つて(三)」における証言
先生が大櫻にをられた頃には私は二、三日宿つては家に歸り、また家を手傳つてはまた出かけるといつた風に、頻りとこの羅須地人協會を訪ねたものです。
<『四次元7号』(宮澤賢治友の会)>
である。つまり、千葉恭が下根子桜の別宅に寄寓していた期間の寄寓の仕方は、長期間連続して寝食を共にしていたわけではなく、下根子桜の別宅に二、三日泊まっては千葉恭の実家に戻って家の仕事を手伝い、また泊まりに来るという繰り返しであったということになる。
 とすれば、千葉恭が〝約半年〟と言っている意味は延べ寄寓日数が約180日ほど(=約半年)という意味でのそれであり、一方の〝少なくとも8ヶ月間余〟とは寄寓開始から寄寓解消までの時間的な隔たりが〝少なくとも8ヶ月間余〟あるという意味の寄寓期間だから、これらの二つの一見異なる寄寓期間は矛盾をせず、こう解釈すれば整合性がとれることになる。あわせて、これは一つの解釈の仕方であるがこの千葉恭の証言によればそれはそれほど真実から遠い訳でもなさそうだ。
 現時点での認識
 このように下根子桜の寄寓期間については、〝①〟は泊まっていた日数のトータルは180日程度であったということであり、〝②〟はそのような泊まり方をしていた期間は8ヶ月間余であったとそれぞれ解釈すれば、①と②の間には何ら矛盾も生じない。よって私は、前掲の仮説「○☆」はこの期間の長さの違いにも耐え得るものなので、棄却する必要はないと判断した。そしてこの寄寓期間は、私が知り得た関係者の唯一の証言、
    お義父さんは羅須地人協会に7~8ヶ月くらい居たんでしょう。
という、恭の長男の奥さんの証言とも符合する。

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