《『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)の表紙》
前回、次の五つ、
①修行の困難さの強調と釈尊の神格化
②釈尊の位置づけの変化
③覚りを得られる人の範囲
④仏弟子の範囲
⑤釈尊の〝遺言〟
のうちの①~③について触れたので、今回は残りの二つについてである。②釈尊の位置づけの変化
③覚りを得られる人の範囲
④仏弟子の範囲
⑤釈尊の〝遺言〟
テキストの著者植木氏は「④仏弟子の範囲」において、
原始仏教では、出家・在家、男女の区別なく「仏弟子」と呼ばれていました。…(投稿者略)…
ところが部派仏教では、在家者と女性を仏弟子の範疇から除外します。説一切有部では…(投稿者略)…仏弟子を男性出家者に限定して、在家者と女性を排除してしまったのです。
〈『100分de名著『法華経』』16p~〉ところが部派仏教では、在家者と女性を仏弟子の範疇から除外します。説一切有部では…(投稿者略)…仏弟子を男性出家者に限定して、在家者と女性を排除してしまったのです。
という歴史的な経緯を記し、あらためて、
原始仏教では女性の智慧第一や説法第一もいて、女性も在家も平等に代表的仏弟子として教えられていましたが、小乗仏教では男性出家者に限定されてしまいます。
〈『100分de名著『法華経』』17p〉と述べていた。そうか、原始仏教からどんどんずれて行ってしまって、差別がどんどん拡大していったということか。
では最後の項目「⑤釈尊の〝遺言〟」についてである。植木氏は次のようなことをそこで教えてくれている。
原始仏典では…(投稿者略)…釈尊は「今でも」「私の死後にでも」「誰でも」と前置きし、「自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法をよりどころとし、他のものによることなかれ」と語りました(自帰依、法帰依)。それが〝遺言〟でした。覚りを得るというのは、真の自己に目覚めることであり、法に目覚めることです。そこにこそ最高の境地が開けると釈尊は言っていたのです。
ところが部派仏教になると、それがストゥーパ(卒塔婆)信仰に変わります。つまり釈尊の遺骨(仏舎利)を収めた塔への信仰に変質したのです。また、聖地信仰も興ります。…(投稿者略)…そこに行くことが信仰であるかのようになってしまいました。「自己」と「法」を尊重することから逸脱してしまったのです。
〈『100分de名著『法華経』』18p〉ところが部派仏教になると、それがストゥーパ(卒塔婆)信仰に変わります。つまり釈尊の遺骨(仏舎利)を収めた塔への信仰に変質したのです。また、聖地信仰も興ります。…(投稿者略)…そこに行くことが信仰であるかのようになってしまいました。「自己」と「法」を尊重することから逸脱してしまったのです。
と。な~るほど、そういうことだったのか。いくつかのことが次々に見え始めてきた。
そして同氏はこの項を、
彼らは「自分自身だけの解脱」を目指し、民衆のことなど考えてはいなかったのです。
と言って、締め括っていた。もしこれが実態であったとすれば、当然このことに対して異を唱える人たちが出てくることは当然だろう。それは釈尊の〝遺言〟に悖ることであり、「自分自身だけの解脱」を目指し、民衆のことなど考えてはいなかったという有り様は、宗教家としての根源を疑われることだと私は思うからである。続きへ。
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