あることがあって、この度急に気になりだした詩がある。それは〔甲助 今朝まだくらぁに〕であり、『春と修羅第三集』に所収されていて次のようなものであった。
なぜだろう、やはり変だ。そこでこの詩の下書稿を上掲書によって逆に遡ってみたい。
まずは、下書稿㈥は次の通り。
そこでこれらを左右に並べて較べてみると、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/ba/dbdc0f47871647b12c7ab232801ee42e.png)
となっていて、あれれっ下書稿㈥では日付が
一九二八、三、三、
となっているではないか。なぜなんだろう?
また背景色が水色の部分は両者にほぼ共通な部分だから、あまり大きな違いがない中、とりわけ
威張って歩って
と
夜でば小屋の隅こさちょこっと寝せらへで
とが、下書稿㈥を推敲して本稿とする際にわざわざ付け加えられたことになる訳だから、そこに賢治の本心が垣間見られて残念な思いがした。それはもちろん、これらを付け足したことによって詩情が減じたばかりでなく、賢治の甲助に対する冷笑の度合いがさらに増したと私には思えたからだ。
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《鈴木 守著作新刊案内》
この度、お知らせしておりました『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』が出来いたしました。
◇『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』(定価 500円、税込み)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/2a/94c5f086371652478e3092b63dab7306.png)
本書の購入をご希望なさる方がおられましたならば、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければまず本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円(送料込)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
電話 0198-24-9813
なお、本書は拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』
のダイジェスト版です。さらに詳しく知りたい方は拙ブログにてご覧下さい。
また、『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』はブログ上の出版ゆえ、紙媒体のものはございません。
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◇『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)
ご注文の仕方は上と同様です。
なお、こちらは『宮沢賢治イーハトーブ館』においても販売しております。
☆『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』 ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著) ★『「羅須地人協会時代」検証』(電子出版)
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『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』のご注文につきましても上と同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。また、こちらも『宮沢賢治イーハトーブ館』において販売しております。
☆『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』 ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』 ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/e0/38b1e0b595d5833ea538c8cbc942447d.png)
ただし、『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』は在庫がございません。
一〇一二
〔甲助 今朝まだくらぁに〕
一九二七、三、二一、
甲助
今朝まだくらぁに、
たった一人で綱取さ稼ぐさ行ったでぁ
……赤楊にはみんな氷華がついて
野原はうらうら白い偏光……
唐獅子いろの乗馬ずぼんはぃでさ
新らし紺の風呂敷しょってさ
親方みだぃ手ぶらぶらど振って行ったでぁ
……雪に点々けぶるのは
三つ沢山の松のむら……
清水野がら大曲野がら後藤野ど
一人で威張って歩って
大股に行くうぢはいがべぁ
向ふさ着げば撰鉱だがな運搬だがな
夜でば小屋の隅こさちょこっと寝せらへで
たゞの雑役人夫だがらな
……江釣子森が
ぼうぼうと湯気をあげて
氷醋酸の塊りのやう……
あらがだ後藤野さかがったころだ
<『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)47p>〔甲助 今朝まだくらぁに〕
一九二七、三、二一、
甲助
今朝まだくらぁに、
たった一人で綱取さ稼ぐさ行ったでぁ
……赤楊にはみんな氷華がついて
野原はうらうら白い偏光……
唐獅子いろの乗馬ずぼんはぃでさ
新らし紺の風呂敷しょってさ
親方みだぃ手ぶらぶらど振って行ったでぁ
……雪に点々けぶるのは
三つ沢山の松のむら……
清水野がら大曲野がら後藤野ど
一人で威張って歩って
大股に行くうぢはいがべぁ
向ふさ着げば撰鉱だがな運搬だがな
夜でば小屋の隅こさちょこっと寝せらへで
たゞの雑役人夫だがらな
……江釣子森が
ぼうぼうと湯気をあげて
氷醋酸の塊りのやう……
あらがだ後藤野さかがったころだ
なぜだろう、やはり変だ。そこでこの詩の下書稿を上掲書によって逆に遡ってみたい。
まずは、下書稿㈥は次の通り。
【下書稿㈥】
一〇一二、(ママ)
一九二八(ママ)、三、三(ママ)、
甲助なら
今朝くらいうち綱取へ行った
……赤楊にはみんな氷華がついて
すくすく白い偏光に立つ……
紺の風呂敷をしょって
唐獅子いろの乗馬ずぼんをはいて
親方みたいに手を振って行った
……雪に点々けぶるのは
三つ沢山の松のむら……
清水野から後藤野を
一人で大股に行くうちはいゝが
向ふへ着けば撰鉱だか運搬だか
たゞの雑役人夫だからな
……江釣子森が
ぼうぼうと湯気をあげて
氷醋酸の塊りのやう
もう後藤野へかかったころだ
<『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)407p>一〇一二、(ママ)
一九二八(ママ)、三、三(ママ)、
甲助なら
今朝くらいうち綱取へ行った
……赤楊にはみんな氷華がついて
すくすく白い偏光に立つ……
紺の風呂敷をしょって
唐獅子いろの乗馬ずぼんをはいて
親方みたいに手を振って行った
……雪に点々けぶるのは
三つ沢山の松のむら……
清水野から後藤野を
一人で大股に行くうちはいゝが
向ふへ着けば撰鉱だか運搬だか
たゞの雑役人夫だからな
……江釣子森が
ぼうぼうと湯気をあげて
氷醋酸の塊りのやう
もう後藤野へかかったころだ
そこでこれらを左右に並べて較べてみると、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/ba/dbdc0f47871647b12c7ab232801ee42e.png)
となっていて、あれれっ下書稿㈥では日付が
一九二八、三、三、
となっているではないか。なぜなんだろう?
また背景色が水色の部分は両者にほぼ共通な部分だから、あまり大きな違いがない中、とりわけ
威張って歩って
と
夜でば小屋の隅こさちょこっと寝せらへで
とが、下書稿㈥を推敲して本稿とする際にわざわざ付け加えられたことになる訳だから、そこに賢治の本心が垣間見られて残念な思いがした。それはもちろん、これらを付け足したことによって詩情が減じたばかりでなく、賢治の甲助に対する冷笑の度合いがさらに増したと私には思えたからだ。
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
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なお、本書は拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
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また、『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』はブログ上の出版ゆえ、紙媒体のものはございません。
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◇『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)
ご注文の仕方は上と同様です。
なお、こちらは『宮沢賢治イーハトーブ館』においても販売しております。
☆『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』 ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著) ★『「羅須地人協会時代」検証』(電子出版)
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